傾聴に値する、図書館協議会・若松副委員長の発言

 1/10(金)に第4回「上尾市図書館協議会」を傍聴しました。そこでは、「答申」に何とか自分たちの都合の良い文言を入れようとする図書館の事務局側と、法的根拠に基づき、それをやんわりと拒否する副委員長の発言があり、大変興味深いものでした。

記事No.53

■「図書館協議会」とは?
 図書館法に(図書館協議会)として次の規定があります。

第十四条 公立図書館に図書館協議会を置くことができる。
2 図書館協議会は、図書館の運営に関し館長の諮問に応ずるとともに、図書館の行う図書館奉仕につき、館長に対して意見を述べる機関とする。

 つまり、図書館長の諮問に対して、答申の役目を負うのが図書館協議会ということになります。条文に「置くことができる」とありますが、2016年の調査では、図書館協議会(類似の協議会を含む)を設置している自治体は、約70%となっています(出典:図書館流通センター「公立図書館の実態に関する調査研究報告書」)。

 また、次のような指摘もされています。
「図書館協議会では、約7割が指定管理者制度導入に反対している。この点にかんがみても、図書館協議会と指定管理者との親和性は良好とはいえないようである」(鑓水三千男『図書館と法』2018年)

 例えば、桶川市図書館は指定管理者制度を導入しており、図書館協議会は設置されていません根拠:桶川市図書館管理規則

■傍聴していて気づいたこと
 当日の資料は、すべてクリアホルダーに入っており、表に「会議終了後、資料は回収します」とメモ書きされていましたが、ブログ筆者は、これは適切なやり方ではないと考えます。なぜならば、当日の資料は、会議次第・座席表・委員名簿が各1枚ずつ、それにホッチキス留めした『上尾市図書館の在り方検討資料』という内訳になっており、<持ち帰られては困る>のは『検討資料』のみだからです。
傍聴者には説明されていませんが、資料を回収する根拠は、情報公開条例の以下の部分によるものだと考えられます。

(参考)上尾市情報公開条例第7条(公開除外規定)
(6)市及び国等の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に市民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当な利益を与え、もしくは不利益を及ぼすおそれがあるもの

 おそらく、『検討資料』は、条例に謳う「意思決定の中立性」に抵触する、との判断(ブログ筆者はそうは考えませんが)から「持ち帰り不可」とされたと思われますが、会議次第から委員名簿までは、意思決定とは関係ない事項(委員名はすでに公開済み)なので、『検討資料』のみ回収すれば良い話であり、事務局のやり方は<丁寧さに欠ける>と指摘されても仕方ないと思われます。
また、図書館HPには、協議会の傍聴者は「5人」と記述されていますが、実際には、筆者の見た範囲では7~8人の傍聴者がおり、椅子は少なくとも2つ空きがありました。事前の会議予告の傍聴者については、「〇人程度」(〇には7or8が入る)とすべきですし、資料についても、持ち帰りができるものと、そうでないものとに分けることと合わせての次回からの改善が求められます。

■若松副委員長の発言の重み
 ブログ筆者が最も興味深く聞いたのは、事務局側が検討資料の中に次の文言を入れようとしたときの、若松副委員長の発言です。
※ブログ筆者のメモによるもので、検討資料を持ち帰ったものではありません。
(朱書きは筆者によります)

『上尾市図書館の在り方検討資料』
6.留意すべき点

(3)運営体制の柔軟な検討と計画的な職員の育成を
 昨今、指定管理者制度を導入した公共図書館が増えています、平成28年度本協議会では、各計画で掲げられた目標を達成するためには現行の体制を継続することが望ましいとの答申をしています。しかしながら、社会情勢と市民ニーズが刻々と変化する中では、過去の答申に縛られることなく、常に利便性と効率性が高まる体制を模索していくことが求められます
また、どのような運営体制になった場合でも、図書館業務に精通する職員の育成や司書有資格者の配置は適切に行われることを期待します。

 まず最初に、「昨今、指定管理者制度を導入した公共図書館が増えています」という文言については、実証的データを示したうえで記述すべき内容です。ブログ筆者の調べでは、「政令市以外の市(上尾市など)」で指定管理者制度を導入している自治体は、159市であり、全国が772市なので、比率は20.6%となっています(出典:桑原芳哉「公立図書館の指定管理者制度導入状況:近年の動向」,2018年)。
データの本文への挿入が難しければ、「別表」として示すべきです。

 また、「過去の答申に縛られることなく、常に利便性と効率性が高まる体制を模索していくことが求められます」という文言にいたっては、3年前の答申を否定したうえで、あたかも指定管理者制度の導入を是とするような内容となっています。

 事務局側が「滑り込ませようとした」文言について、若松昭子副委員長は、次のような趣旨で発言しています。

 …指定管理者制度については、利点や問題点が両方あり、議論が分かれている状況であるので、「過去の答申に縛られることなく」という表現は考え直したほうがよいのではないか。
(全国で)指定管理者制度が増えていようがいまいが、その良し悪しを(本質的な意味で)判断する必要があると考える。

 ブログ筆者はこれらの発言を傍聴していて、事務局側が「特に何か指摘されなければ、以前の答申の方向性を変更してしまおう」との意図もはっきり見えたことと、それを穏やかに、しかし明確に否定した若松氏の見識に強い共感を覚えました。確かに、指定管理者制度導入に関しては、様々な問題が指摘されています。このブログでも、後日ひとつの記事として掲載しようと考えています。

■言葉の「すり替え」にも要注意
このほか、図書館の事務局側が意識的に言葉のすり替えをおこなっている節が見られます。例えば、第3回図書館協議会での質疑では、次のようなやり取りがされています(公開済議事録によります)。

議長   司書は。
事務局  本館では、正規職員2名、非常勤職員4名である。

 この事務局答弁は、明らかに「すり替え」がおこなわれています。
正確には、「図書館法4条の規定による《司書》という職名は、上尾では一人もおりません。図書館司書の有資格者は正規職員が2名、非常勤職員4名おります」と答弁すべきであったのです。
前記事でも取り上げましたが、図書館法第13条で「図書館には、専門的職員を置く」とされ、同第4条で、その専門的職員を《司書》または《司書補》とする、と規定されていることから、〈図書館司書の有資格者〉とは根本的に違うものであるという確認が必要なのです。

◎専門的職員の職名「司書」「司書補」(以上は残念ながら上尾市には職名そのものがありません)と、〈司書有資格者〉とを混同しないでほしいものです。

■もし、副委員長の発言が無かったら…
 若松副委員長は、司書の問題についても、図書館法に依拠しながら発言しています。前記のことと合わせて、もしも若松氏の発言が無かったら、事務局が滑り込ませようとした文言がそのまま生かされてしまったのではないかと思われます。
 他の委員の発言は、どなたか名前はわかりませんが、たとえば、「分館に孫と行って過ごせるようなスペースが欲しい」など、極めて情緒的なものが目立ちました。せっかくの図書館協議会の場なのですから、根拠法令等をきちっと示したうえで、内容の濃い協議会であることを望むものです。