多くの市民が上尾市教委の「危うさ」に気づき始めた(1)

3月24日、上尾市教育委員会3月定例会が開かれました。この会議を傍聴した市民は9人いました。前記事でお伝えしたように、上尾市HP(トップページ)に教育委員会の会議開催通知が掲載されるようになったことや、何よりも3月定例会で示される「上尾市学校施設更新計画基本計画(案)」への市民コメントの中身や、それらがどう扱われるのかについての関心の高さがうかがえます。
言い換えれば、多くの市民が、上尾市教委の「危うさ」に気づき始めた証左でもあると言えるのではないでしょうか。

この計画案について市民から寄せられた意見は420件(137人)となっており、豊富な内容となっています。今記事では、計画案作成の背景も含め、「少人数学級」に関する意見についてお伝えします。

No.149

🔷職員を2名増員して作成された「計画案」
ほとんど知られていないことですが、この「上尾市学校施設更新計画基本計画(案)」なるものは、わざわざ職員を内部で異動させ、教育総務課職員を2名増員して作成されたものです。
その証拠がこちら⇒上尾市教育委員会11月定例会会議録(10-11頁)
同会議録掲載の池田教育総務課長の発言は次のとおりです。
(原文に文字の色替えはありません)

(池田直道 教育総務課長)
 令和2年11月10日付けで、主査級、主任級の計2名の職員を教育総務課へ兼職発令いたしましたのでご報告するものでございます。今般の人事異動を実施した理由につきまして、 現在 、 教育総務課で学校施設更新計画の策定の事務 を進めているところでございますが、当該計画は、35年間の長期的な視点を持って施設更新にあたってのコスト縮減を図り、学校更新についての計画を策定しているところでございますが、 来年1月のパブリックコメントの 実施に向けて、全小・中学校33校の施設更新に係るコスト計算や更新のスケジュールの組立 が大詰めを迎えている一方で、各校の修繕工事や業務委託等の通常業務も重なっておりまして、非常に業務繁忙となっておりますことから、体制強化を図るため に 発令したものでございます。説明は以上でございます。

つまり、「体制強化」のために、主査級・主任級の「バリバリ」の職員を、わざわざ2名異動させて作成した「計画案」なのです。ゆえに、他の計画案(たとえば現在いる職員だけで作成されている図書館サービス計画など)と単純に比べることはできないことは明らかです。
それにしては、この「計画案」は、後述する市民コメントにもあるように、現在の「少人数学級」の状況を見誤ったり、何の脈絡もなく「小中一貫校」を持ち出したりして、お粗末なことこのうえありません

🔷1か月弱で寄せられた意見は420件 !!
「計画案」についての意見募集は、2021.01.25~02.22(1か月弱)でしたが、あまりにも市民コメントの件数が多いため、教育委員会事務局(教育総務課)は、意見を19項目に分け、後日回答としています。
その内訳は以下のとおりです。

No. 項目 意見数
1 上尾市公共施設等総合管理計画 36
2 教育のあり方(上尾市教育振興基本計画) 3
3 児童推計 2
4 学区編成 4
5 適正規模 19
6 少人数学級(35人学級) 62
7 通学距離・通学路の安全性 51
8 学童 8
9 統廃合 10
10 プール 5
11 学校給食 2
12 小中一貫一体校(注:市教委原文ママ) 10
13 跡地利用 3
14 地域拠点 15
15 防災拠点 32
16 市民参画 34
17 学校ごとの再編(案) 34
18 市の政策 17
19 その他 73
合計 420

中身を区分できない「その他」以外で意見数の多いのは、「少人数学級」「通学距離・通学路の安全性」「上尾市公共施設等総合管理計画」「市民参画」「学校ごとの再編(案)」であることがわかります。

今記事では、この中から「少人数学級(35人学級)」についての意見を見ていきます。

🔷「少人数学級」関連で寄せられた意見
ほぼ全ての意見が「市教委の計画案には反対」というものでした。
その中で代表的と思えるのは次の意見です。

コロナ禍のなかで、国が5年間かけて小学校の35人程度学級への実施を決めたことや、上尾市でもかつて実施されていた30人程度学級への移行を検討するならば、教室を確保することが必要です。統廃合をして学校を減らせば、この動きに逆行することは明らかです。

市民から寄せられたほとんどの意見は、国(文科省)が35人学級の必要性をあらためて認識し、舵を切った現在、さらに30人、25人と少なくしていく流れなのに、なぜ上尾市教委はそうした流れに逆行するのか、というものです。私もまさにその通りだと思います。

🔷以前は上尾でも実施されていた「30人程度学級」
この市民コメントにあるように、以前は上尾でも「30人程度学級」が実施されており、教育委員会自ら高い評価を与えていました。
その証拠がこちら ⇒ 平成24(2012)年度点検評価報告書
正式には、「平成24年度(平成23年度実施事業対象)上尾市教育委員会の事務に関する点検評価報告書」と称し、上尾市教委のHPの左側のメニューに「点検評価報告書」の欄があります。
同報告書の 111頁 には、次のような記述があります。

事業番号1 30人程度学級「あげおっ子アッピープラン」事業
(担当 学務課)
事業の概要 学級集団の少人数化を図ることにより、きめ細やかな個に応じた指導を徹底し、基礎学力の向上に効果を発揮する。
事業の対象数 小学校1年 2,003人 小学校2年 2,052人
中学校1年 2,077人
事業の内容 子どもの個性を伸ばし、豊かな人間性を育むために、小学校1年生、小学校2年生、及び中学校1年生を対象に1クラス30人程度学級を編制するため、市独自に臨時教員を配置する。

注目すべきは、以下の内容です(原文に文字の色替えはありません)。

教育委員会の評価 本事業は、幼稚園・保育所から小学校へ校種が移る際の「円滑な移行」と、学級担任制の小学校から教科担任制の中学校へ移る際の変化を少しずつ解消することを狙いとしたもので、平成14年度から本市が全国に先駆けて実施している事業である。 昨今の教育現場においては、いわゆる小1プロブレムや中1ギャップ、学力低下の問題が顕在化しており、また、生徒指導面の課題等も複雑多様化している。これらの解決策の一環として、少人数学級によるクラス編制を行うことにより、きめ細やかな指導を行うとともに個別の発表学習の機会を多く与えることによって、児童生徒の表現力、個性発揮などの効果が表れるとともに、不登校の出現率も低位で推移してきた
特記事項(今後の方向性等) 平成23年度から、国の基準及び県の特例編制により、小学校1、2年生は35人学級、中学校1年生は38人学級として編制しており、本市が実施してきた30人程度学級との差異が小さくなってきている。このような現状の下、平成24年度から、各校からの要望の多い個々の児童生徒への支援をさらに充実していくために、本事業を「さわやかスクールサポート事業」として発展的に事業改正し、発達障害児(疑いを含む)及び肢体不自由児等が在籍する通常学級に対し、学級担任を補佐するための支援員(アッピースマイルサポーター)を配置する。ただし、中学校1年生のクラス編制に当たっては、配置基準とまだ差異があることから、中1ギャップの解消を主な目的として、35人学級を編制するために市独自にアッピースマイル教員を配置する。

以上のように、上尾市教委は、かつては30人学級の教育的効果に高い評価を与えていたにもかかわらず、平成24(2012)年度から事業内容を変えてしまったのです。
特記事項の「各校からの要望の多い」というのは、情報公開請求での市教委の説明で明らかになったことによれば、「校長からそういう要望が出ている」という話ですが
、そのことを示す文書は不存在です。
このことについて市教委の事務局職員からの説明を受ける中で、実は、「アッピースマイル教員」の待遇があまりにも劣悪であるため、「なり手がいない」ことから、担当課である学務課が音を上げ、人が集まりそうな「アッピースマイルサポーター」に移行していったというのが実態だと考えられます。

こうした背景を知らないであろう教育総務課の職員が、いくら気合を入れて作成しても、「少人数学級」や、全く説明が無いまま突如記載されている「小中一貫校」(教育委総務課は「小中一貫一体校」と表示)など、肝心なことの説明がが欠落してしまうのもうなずけます。

次回以降の記事では、もう少しこの「計画案」についての市民コメントを見ていきたいと思います。