新聞別刷り「教員異動特報」を別の角度から見ると

例年、3月31日配布の新聞には、別刷りの「教員異動特報」が折り込みで入っています(少なくとも、朝日新聞はそうなっています)。
前記事の続きについては次回以降書くことにして、今記事では、「異動特報を別の角度から見る」ということでお伝えします。

No.150

🔷「教員異動特報」のネーミングは間違い?
例年同様ですが、掲載順序は、高校→さいたま市→県内各教育事務所→教育局→事務職(県)となっています。職員としては、小中学校の事務職員や栄養職員、県教育局事務局職員が入っているので、正確に表現するとすれば、「教員異動」ではありません(ただし、栄養職員の場合、「栄養教諭」は教員異動の欄に掲載されます)。すなわち、「教育局および県内教職員異動特報」が正確な言い方でしょう。
今記事では、この別刷りを「異動特報」と呼ぶことにします。
ただ、朝日新聞の「異動特報」では、高校の校長の一部は顔写真入りで、小中学校や県教育局の職員は名前だけ、というのも例年同じ扱いですが、かなり違和感を覚えます。

🔷「さいたま市」と「各教育事務所」
上尾市や県内の他の自治体にとって、さいたま市は、言わば「別世界」となっていると言えるでしょう。ここで言う「別世界」とは、人事異動を含めて、交流がほとんどない、という意味です。

「異動特報」では、さいたま市の次に、南部教育事務所が掲載され、そのあとに西部→北部→東部の各教育事務所が続きます。
では、「教育事務所」とはいったい何でしょう?
簡単に言えば、市町村と県教育局との間にある機関のことですが、ここで使われている「事務所」の「事務」の意味は、机上での書類作成だけを指す言葉ではありません。上尾市教育委員会でも、法律により、毎年「教育委員会の事務に関する点検評価報告書」を作成することになっていますが、「教育に関する事務」の中には、子どもへの「指導」も当然入ってきます。

上尾市は現在「南部教育事務所」に属していますが、1998(平成10)年度までは、当時の大宮市、上尾市、桶川市、北本市、鴻巣市、吹上町、伊奈町が「北足立北部教育事務所」管内となっていました。
一時期、同事務所は大宮の産業道路沿い(現在NACK5スタジアム隣の駐車場)にあり、その後大宮合同庁舎(現在はさいたま市大宮区役所)に移りました。現在は北浦和の国道17号沿いにあり、
川口市、鴻巣市、上尾市、草加市、蕨市、戸田市、朝霞市、志木市、和光市、新座市、桶川市、北本市、伊奈町が「南部教育事務所」に含まれています。

🔷「再任用」について
今記事のタイトルにもある「別の角度」からのひとつの見方としては、「再任用」がキーワードとなります。
上尾市立小中学校を退職する教職員は、埼玉県で採用された「県費教職員」が大半です(当ブログ記事No.18参照)。
そして、たとえば、1959.4.2 ~1961.4.1生まれの方の場合は、「特別支給の老齢厚生年金」の支給開始が64歳からとなるので、60歳で退職した後は、収入が途絶えることになります。それを避けるためにも「再任用」を希望する職員は多いと思われます。

一方、「異動特報」は、校長・教頭の再任用のみ掲載しています。
しかも、新年度の再任用教頭は、全県の小中学校でわずか1名です。
それに対して、再任用校長は、全県の小中学校合わせて32名います(内、南部教育事務所は12名)。
教頭で退職する者が校長退職者より少ないというのもあるでしょうが、「校長は再任用でもさほど給与が減額されない」というのが再任用校長が多い理由でしょう。それに加えて、「校長ならやってもよいが、教頭の再任用はゴメン」と考える職員もいると思われます。

そのことの証左として、昨年11月に情報公開請求した資料があります。「A中学校の校長の退勤時刻が判別できる資料」を求めたところ、ほとんどの日の退勤時刻(2020年10月)は、17:00~18:00であることが分かりました。もちろん、働き方改革を自ら実践しているという見方もできますが、「私は先に帰りますが、教頭さん、おあとはよろしく」という姿勢であることは目に見えています。校長が退勤したあと、毎日毎夜職員は時間外勤務をせざるを得ないというのが実態です。
ちなみに、このA中学校、以前は何の根拠も無く「地域No1校」とHPに書いていましたが、当ブログでそのことを指摘し、その根拠を示すように情報公開請求したところ、そうした根拠があるはずもなく、現在はHPから「地域No.1校」という表現は消えています。

🔷「指導教員」という再任用
「異動特報」には掲載されないため、見えない実態はまだあります。
退職後に新任教員を学校内で指導する役割の「教諭」となる職員がおり、ほとんどが校長・教頭の再任用者となっています(職名はあくまでも「教諭」であり、「指導教諭」とかではないため、外部からは分かりにくくなっています)。

「異動特報」によれば、上尾市では、新年度、小中学校合わせて37人の新採用教員がいます。新採用者は現行の法律で「初任者研修」を受ける義務が生じることから、その新採用者に「指導」するのが再任用の「教諭」ということになります。指導する「教諭」は、どこかの学校を拠点として、数校掛け持ちとなりますが、拠点校においては、「指導」以外にはこれといった「校務分掌」があるわけではありません。

肝心の「指導」の中身ですが、私の知り得た話では、埼玉県教育委員会が発行している冊子『教師となって第一歩』を新採用者に音読させるだけ、という実態もあるとのことです。果たして、学級の子どもたちから離れて、こうした「研修」を受ける必要があるのでしょうか。
現在、教員免許更新制の見直しについて文科省が重い腰を上げるという話が出ていますが、新採用教員の「初任者研修」についても、実態を洗い出し、早急に見直しをしたほうが良いと思います。

🔷普通の先生方の「再任用」は新聞には載らない
上述のように、校長・教頭以外の退職者は、定年後に再任用となった場合、新聞の「異動特報」には掲載されません。県の人事情報をそのまま掲載していると思わますが、改善する余地があるように思います。

「子どもたちのために引き続き良い授業をしたい」ということで、新年度から再任用として継続して働く先生方に、心から敬意を表したいと思います。