多くの市民が上尾市教委の「危うさ」に気づき始めた(2)

前々記事では、3月教育委員会定例会の傍聴者が増えたことや、「上尾市学校施設更新計画基本計画(案)」(以下、「更新計画案」と略記)に係る意見が420件も寄せられたことを含めて、多くの市民が上尾市教委の「危うさ」に気づき始めたことをお伝えしました。今記事はその続きです。

記事No.151

🔷通学距離・通学路の安全性について
少人数学級を望む市民の声に続いて多かったのは、「通学距離・通学路の安全性」についてのものでした。51件の意見が寄せられましたが、上尾市教委の「更新計画案」に賛成する意見はゼロでした。次に挙げた意見は、「更新計画案」に対する代表的と思われるものです。

通学距離が長くなることは、交通安全上も、防犯上も、保護者にとっては不安だろうと思います。
子どものことを考えずに予算削減のみを前提にしているこの計画には反対です。統合によって通学時間が増えるのは低学年の子にとっては大変なことであり、父母にとっても行事への参加や病気のときの迎えなどに負担になります。ぜひ考え直してください。
まず子どものことを考えた案なのか疑問。学校統合で教育環境がどう変わるか、本当に考えているのか。例えば、通学距離が遠くなってしまう子に対応するためにスクールバスを検討しているというような答弁もあったようだが、そんなことを深い検討もせずに言ってしまうことに子ども第一に考えていないことが表れている。

これらの意見にもあるように、市教委が示した「更新計画案」は、子どもたちがどのような状況で通学しているのかには言及せず、とにかく「経費の35%を削減する」ことが強調されています。また、「更新計画案」では、急に「適正規模」とか言い出していますが、ずっと大規模校は放置しておいたのは市教委の責任ではないでしょうか。

🔷「市民の声を聞くこと」は市教委の最低限の責務
「市民参画」として区分された意見も34件と多くなっています。そのうちのいくつかを例に挙げてみます。

市民の意見をよく聞くべく、時間をとり説明会を開くなり、しっかり時間をかけて議論してください。
参考資料に「皆様のご意見をお待ちしております」とありますが、市民から意見を求めるような資料配布や告知の体制を市として取っていない。
「小中学校の統廃合ありき」は困ります。上尾市の未来を担う児童・生徒のために予算をいかに確保していくか、市民の立場に立った方策を考え、市民の声を吸い上げて提示してほしいです。
「エリア内に組織を立ち上げ検討する」としているが、具体的にどうすすめるのか。地域の保護者はもちろん、住民の声、教職員の声を充分に聴取し、その内容を公表してほしい。

34件の意見のほとんど(全部と言ってもよい)が、「更新計画案」について、「住民への説明会を開いてほしい」「市民や保護者、教職員の声を聞いてほしい」というものでした。すなわち、上尾市教委は、市民の財産である学校の今後のあり方を充分に時間をかけて市民とともに考えていく姿勢が求められている、ということなのです。

🔷「その他」へ区分された意見から
73件の意見が「その他」に区分されました。その中には様々な意見がありますが、いくつか挙げてみます。

今回の案は白紙に戻し、将来の学校のあり方を市民参加で議論する場をつくってほしい。

この意見を「市民参画」に入れなかったのはなぜなのかわかりません。私は「市民とともに上尾市の教育を考える場の設定が必要」という意見は現在の上尾市教委に最も欠けている点を突いていると考えます。

計画案には「アクティブラーニング等の新たな学校環境(以下略、下記参照)」としている。しかし、その「アクティブラーニング」なるものが如何なるものか、そのために、学校の統廃合がなぜ必要なのかが一般市民には全く示されていない。

私はこの意見に全く同感です。「更新計画案」の<大概要版>なる資料には、市教委による次の記述があります。

<学校施設に関する主な背景>
小中一貫教育やアクティブラーニング等の新たな学校環境を必要とする取組みに対応する施設整備と、地域活動に有効的な公共財産活用等も視野に入れた、学校施設マネジメントを実現することが求められます。

上の意見にある「アクティブラーニングと学校の統廃合との関連」ばかりでなく、今までの上尾市教育委員会の定例会等で、「小中一貫教育」についての論議があったとは言えません。
すなわち、「唐突感」は否めず、いきなりこれが出されたと言わざるを得ません。

このほかにも、「その他」として様々な意見が出されていますが、上述のように、市民の意見をよく聞く場の設定が求められます。

🔷意見の多さは市教委の「危うさ」の反映
「更新計画案」に対して、多くの市民から意見が出され、その大半は見直しを求めるものであり、住民への説明会などを求めるものです。
420件もの意見が集まったということ自体、上尾市教委の「危うさ」の反映であることを、市教委は自覚すべきです。
そもそも、「経費の35%削減」を求めるという案が乱暴すぎると言えます。支出の見直しをするのであれば、ほかにもあるのではないかと考えるのは当然です。
私が従前から指摘しているように、市教委に17名いる「指導主事」を減らす(もともと給与等は埼玉県が負担すべき職員です)ことなどを含めて、発想の転換をすべきです。

これらの多数の市民の意見を受け、どのくらい「更新計画案」が「修正」されるのか、引き続き高い関心を持って見ていきたいと思います。