上尾市図書館まつり[書評合戦]&美術館[常設展示室]のことなど

10月29日、〖上尾市図書館まつり〗の[書評合戦]に参加しました。
昨年に続き2回目のイベントですが、出場することで、とても楽しい時間を過ごすことができました。
今記事では、図書館の企画に参加した感想と、私(当ブログ館主)が取り上げた本に関連して、美術館のことなどを<日々の所感>としてお伝えします。

No.296

🔸昨年に引き続き[書評合戦]に参加
上尾市図書館の[書評合戦]は、持ち時間(5分)の中で、出場者が「おすすめの本」についてプレゼンした後、出場者と観覧者が「最も読みたい本」を投票し、チャンプ本を決める、という企画です。本のジャンルは問いません。
「ビブリオバトル」というのが一般的な呼称ですが、「書評合戦]は、少しルールをゆるくしており、誰でも参加ができるようになっています。

私は昨年秋のイベントに続いて2回目の参加です。

今回の出場者は9名。昨年の参加者が半数以上だったことから、ちょっとした「同窓会」的雰囲気。事前の打ち合わせでも昨年よりは緊張は無かったようでした。
今年の[書評合戦]のテーマは「思い出」。参加者はそれぞれにおすすめ本と「思い出」を重ね合わせていたように思います。
結果はいずれ市図書館のHPで発表されると思いますが、今回のチャンプ本は2冊。
児童書や中学生向けの本が選ばれたのは、若い世代の読書活動が盛んになるという意味でも良かったと思います。

🔸今回の私の「おすすめ本」は原田マハ著『常設展示室』
原田マハは、絵画作品や画家に造詣が深い作家です(名前の「マハ」は、ゴヤの絵画作品《裸のマハ》・《着衣のマハ》由来)。

原田マハの代表作は、『楽園のカンヴァス』『ジヴェルニーの食卓』『リボルバー』『暗幕のゲルニカ』『旅屋おかえり』『本日はお日柄もよく』など多数。
絵画作品が登場する小説では、アンリ・ルソーやモネ、ゴッホ、ピカソなど、多くの人が知っている絵や画家を取り上げていることも、この作家が人気があるゆえんでしょう。

今回私が選んだ『常設展示室』は、6つの作品が入っている短編集です。
メインの登場人物は、すべての話とも女性。
共通するテーマは
「仕事を通じての自分のまわりの人とのふれあい」そして
「家族や大事な人との思い出」ではないかと思います。
そして、各話ともに、1枚の絵画作品が登場してきます。

中でも、私が好きなのは、『道』という話です。

小さいときに両親を亡くした兄と妹。 二人は別の場所で育てられることになり、引き離されてしまいます。妹の翠(みどり)にとって、断片的な兄との思い出は、家の前に新しく出来た道に兄と一緒に絵を描いたり落書きをすることでした。
その後、妹の翠(みどり)は、20年後に兄と偶然出会うことになりますが、お互いの関係については知る由もありません。
あるきっかけで、二人は東京近代美術館の常設展に行くことになり、東山魁夷の作品《道》の前で語り合う場面があります。
「この作品を描くことで、画家は多くのものを得たんでしょうね」

「多くのものを捨てたんだと、僕は思います」
「全部捨てた。そうしたら、道が見えてきた。この絵を見ていると、そんなふうに感じます」

この絵は、〖東山魁夷記念一般財団法人〗のHPで公開されています。

《道》1950(昭和25)年制作・東山魁夷歳 紙本・彩色 134.4cm×102.2cm   東京国立近代美術館蔵

この話の続きは-
二人は互いに兄と妹であることに気づくのか、
それともわからないままなのか。
二人にとって「道」とはどういう意味を持つのか。
みどりの大切な思い出は、今、どうなったのか。

短い話ですが、読んでいてハラハラすることは間違いないと思います。
日を空けて読めば、そのたびに新しい発見があるかもしれません。

こんな感じで[書評合戦]は今年も無事終わりましたが、私としては、毎年開催されることを希望しています。できれば、参加者がもう少し増えるといいですね。
市民の中には、図書館問題に関心を寄せ、SNSやブログ等で発信している方も散見されるので、そうした方も次回は参加してみたらいかがでしょうか。

🔸美術館のことなど
「常設展示室」と聞くと、私は、たとえば埼玉県立近代美術館の1階に展示してある、モネの積みわらの絵を思い出します(現在はMOMASコレクション展として出品中)。

(埼玉県立近代美術館のHPより転載)

クロード・モネ《ジヴェルニーの積みわら、夕日》カンヴァス・油彩

他にも紹介したい作品はありますが、「その絵は、いつでもあなたを待っている(『常設展示室』帯の言葉より)」というのは、何か安心感のようなものがあるように思います。

🔸美術館「学芸員」とキュレーターは似て非なるもの
日本の美術館は、法的には博物館として存在します。

博物館法(定義)
第二条  この法律において「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、併せてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関(公民館及び図書館を除く)のうち、次章の規定による登録を受けたものをいう。

つまり、美術館の学芸員とは、「博物館学芸員」ということになります。
美術館に勤務する学芸員を「キュレーター」ということもありますが、「学芸員とキュレーターは似て非なるものなり」との考え方もあります。分業が進むアメリカと比べると、日本の学芸員は「何でもやらなければならない職」と言えるのではないでしょうか。

🔸美術館勤務の学芸員のブログから
美術館に行き、作品を鑑賞する場合には、観客のマナーが問われます。
上記青字の記事が掲載されている「ちいさな美術館の学芸員」というブログを読んでいたら、「美術館での撮影の是非を考える場合、いくつかの解決しなければいけない課題があります」との記事が目に留まりました。その課題とは、
①他の来館者の鑑賞の妨げになる。
②作者の著作権の侵害になり得る。 以上に集約できるようです。
このブログ記事を書いた学芸員の方は、次のように投げかけています。

落ち着いて鑑賞したいという人と、鑑賞の記録を写真でも残したい人が半々、もしくは写真撮影派が少数の場合は、静かに鑑賞したい派にストレスがたまる恐れがありますよね。
ストレスを感じて展覧会の満足度が下がると、下手すれば「もう二度と来ない」という気持ちにもなり、集客という観点からも逆効果になってしまいます。
学芸員としてはせっかく開催した展覧会は、なるべく多くの人に観てもらいたいものですが、今の時代、撮影を認めるかどうかの議論は避けては通れないのです。
みなさんはどう思いますか?

私は美術館に行くと、自分の荷物はスマホも含めてロッカーに入れる習慣がありますが、中には写真を撮ることが目的の観客もいるということなのでしょう。
それでも、最近は「写真撮影OK(ただし特定の展示作品に限る)」という美術館(特別展)も増えてきたようですので、ルールの範囲で作品鑑賞を愉しみたいものです。

🔸[市民とともにつくる上尾市図書館]
[書評合戦]の少し前(10/8)におこなわれた「図書館本館についての懇談会」に出席したところ、ていねいなお礼状とともに、当日のまとめの資料が郵送されてきました。
従来、上尾では「図書館をどこに建てるか」の議論がおこなわれてきました。
それはそれで重要だとは思いますが、本来は、図書館法(とりわけ第3条)に基づき、「上尾市図書館でどのような利用者サービスに取り組むのか」「利用者(市民)は図書館にどうかかわるのか」という議論がされるべきである、と私は考えます。
その意味で、読書週間に向けた「図書館まつり」の取り組みや、利用者(市民)との懇談会などでは、上尾市図書館の「やる気」が感じられます。
今後、上尾市図書館が「老朽化による本館の建て替え」に着手するとしても、「利用者サービスはどうあるべきか」を第一に考え、市民とともに図書館をつくっていくという姿勢が求められるのではないか、と考えています。

“上尾市図書館まつり[書評合戦]&美術館[常設展示室]のことなど” への2件の返信

  1. 「着衣のマハ」、聞いたことがあるような。

    絵とか画家を調べるサイト、ありますか❓

    1. コメント(ご質問)、ありがとうございます。

      《着衣のマハ》は、スペインの画家・ゴヤが描いた絵画作品で、マドリッドのプラド美術館に展示されています。
      私はさほど海外の美術館を訪れているわけではありませんが、この絵はプラドで観ました。
      ゴヤは人物の顔の表現が独特ですね。

      絵画作品や画家を調べるサイトとしては、インターネット美術館があります。
      The Art museum https://artmuseum.jpn.org/
      「世界各国の有名美術館に所蔵されている名画をネット上で楽しめるよう工夫したもので、誰にでも西洋絵画芸術をゆっくり鑑賞できます」との説明があり、実際に見やすいと思います。

      付加情報:作品名には 《 》二重ヤマガッコ
           本の書名には『 』二重カギカッコ   を使います。

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