図書館まつりの企画:「書評合戦」(ビブリオバトル)に参加しました

10月27日~11月9日は「読書週間」。
そんな先週末、
上尾市図書館の企画「図書館まつり」に行ってきました。
土曜日(10/29)は「書評合戦」に参加。
日曜日(10/30)は「県立近代美術館コラボ企画」で学芸員の話を聞きました。
今記事は、上尾市図書館の「図書館まつり」、とりわけ「書評合戦(ビブリオバトル)」に参加した感想などをお伝えします。

No.246

🔷上尾市図書館としての初企画が出来るまで
「司書有資格者」の山内館長になってから、かなり柔軟性が見られる上尾市図書館。
今回の「書評合戦(ビブリオバトル)」は、私が提案した企画が通った形になりました。

まず、今回の企画実現までの経緯について、簡単にお話します。

当ブログでお伝えしているとおり、私は上尾市図書館に関して、何度か情報開示請求をおこなっています。今年だけを振り返ってみても、次のような情報の開示を求めました。

*上尾市図書館が㈱ナカバヤシと交わした、カウンター業務等の委託契約書。
*レファレンスサービスの周知に関する文書等。
*「資料収集方針」に関する文書・選書会議の記録。
*図書館における会計年度職員の配置状況。
*同じ資料にもかかわらず本館・分館で貸出の扱いが異なる理由。

*上尾市図書館の「禁帯出」の基準。 etc.

こうした情報の「開示(または 不開示)の処分」の際は、日程を調整したうえで図書館職員と面談して通知文書が渡されます。

今年の春頃、情報開示の通知文書が渡された際に、私のほうから「ビブリオバトルをやりませんか?」と図書館職員に提案してみました。
ですが、この時は「もし実現したら参観してみたい」くらいの気持ちでした。

その後、8月に通知文書が渡された際、上尾市図書館の職員から「まだゲラ原稿の段階ですが、書評合戦をやることにしましたので、ぜひ参加してください」と言われ、『広報あげお』に出す予定の原稿の下書きを見せてもらいました。
もちろん、図書館側でも独自に「ビブリオバトル」についての企画があったかもしれませんが、以上のような経緯もあり、私は今回の企画に参加することになったのです。

🔷「書評合戦」というネーミングについて
一般的には「ビブリオバトル」と呼ばれています。おそらく、上尾市図書館は宣伝チラシに《鳥獣戯画》のカットを入れたので、「合戦」という言葉を使ったのでしょう。

今回の上尾市図書館の「書評合戦」のルールは次のとおりでした。

*発表者の属性(年齢等)の制限なし。
*「おすすめ本」を、順番に1人5分間で紹介する。
*発表後に、参加者と参観者でその発表に関する質問(意見)を3分程度おこなう。
*最後に「どの本が一番読みたくなったか?」についての投票を参加者と参観者が1人1票で行い、最多票を集めた本をチャンプ本とする。
*参加者は自分の本に投票してはいけない。

今回の参加者は全部で11名でした。
ビブリオバトルとしては比較的参加者数が多いほうだと思います。

🔷今回の「おすすめ本」はどんな本だった?
発刊されている本の数から考えれば当然かもしれませんが、参加者の「おすすめ本」は、1冊もダブっていませんでした。
当日、上尾市図書館から配られたプリントがこれです(下部にズーム機能あり)。
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知らない本もあると思いますので、それぞれの本について、上尾市図書館の書誌情報(解説)を見てみましょう(書名の五十音順)。なお、参考のために上尾市図書館の蔵書冊数と11/4現在の貸出状況も掲載してあります。

エントリー本の著者・書名等 エントリー本についての解説(上尾市図書館書誌情報より)
ドリアン助川
『あん』
(一般書)
※蔵書2冊とも貸出可
太郎のどら焼き店のバイト求人をみてやってきたのは、70歳を過ぎた手の不自由な女性・吉井徳江だった。徳江のつくる「あん」のうまさに舌をまく千太郎は彼女を雇い、店は繁盛しはじめるのだが…。限りなく優しい魂の物語。
鈴木るりか
『さよなら、田中さん』
(一般書)
※蔵書5冊中1冊貸出中
田中花実は小学6年生。ビンボーな母子家庭だけれど、底抜けに明るいたくましいお母さんと、毎日大笑い、大食らいで生きている…。母娘を中心とした日常の事件を、鮮やかな筆致で描いた連作短編集。全5編を収録。
末永幸歩
『13歳からのアート思考』
(青少年)
※蔵書1冊貸出中
6つの作品をめぐる知的冒険が「ものの見方」を一変させる! アートを通して「ものの見方を広げる」ことに力点を置いた授業を展開する中学校美術教師が、「アーティストのように考える方法」「自分のものの見方」を伝える。
喜多川泰
『スタートライン』
(一般書)
※蔵書1冊貸出中
今の自分にできることで、自分の価値を判断しちゃいかん。5年後の自分の可能性を舐めるなよ-。「18歳のぼく」と「18歳のわたし」が5年後に見つけた将来とは? 瑞々しい恋物語とともにおくる、勇気と希望のメッセージ。
ルイーズ・ボーデン
『戦争をくぐりぬけたおさるのジョージ』
(児童図書)
※蔵書1冊貸出可
1940年6月、「おさるのジョージ」の原画を携え、自転車に乗って戦火のパリを脱出したレイ夫妻。2台の自転車でいったい何キロ走ったのか? 置いていった荷物はその後どうなったのか? 奇跡の逃避行をたどる。
川口雅幸
『虹色ほたる』
(児童図書)
※蔵書2冊中1冊貸出中
1年前に父をなくしたユウタは、夏休みに思い出のダムを訪れた。突然の雷雨に足をすべらせ気を失ったユウタが目覚めると、目の前にはひとりの小さな女の子とダムに沈んだはずの村が…。永遠の夏休みを描いた感動ファンタジー。
前野ウルド浩太郎
『バッタを倒しにアフリカへ』
(一般書)
※蔵書4冊中1冊貸出中
人類を救うため、そして「バッタに食べられたい」という自身の夢を叶えるために-。昆虫学者である著者が、バッタ被害を食い止めるため単身サハラ砂漠に乗り込み、バッタと大人の事情を相手に繰り広げた死闘の日々を綴る。
青木和雄・吉富多美
『ハッピーバースデー』
(一般書)
※蔵書1冊貸出中
「ああ、あすかなんて、本当に生まなきゃよかったなあ」 できの悪い娘あすかに容赦ない言葉を浴びせる母静代。愛に餓え、愛を求めて彷徨う母娘の再生の物語。97年刊の児童書を加筆修正し、幅広い年代向けにまとめた改訂版。
ニコラス・ネグロポンテ
『ビーイング・デジタル』
(一般書)
※蔵書1冊貸出可
インターネットとマルチメディア。社会構造を根本から変えてしまうこの第4の革命に既存のメディアはどう対応すべきか。人々のライフスタイルはどう変化するのか。明日のデジタルライフを語る。95年刊の新装版。
村田喜代子
『屋根屋』
(一般書)
※蔵書2冊中1冊貸出中
雨漏りのする屋根の修理にやってきた屋根屋。自在に夢を見られると語る彼の誘いに乗って、「私」は夢のなかの旅へ一緒に出かける。屋根職人と平凡な主婦の奇想天外な空の旅。
落合務
『「ラ・ベットラ」落合務のパーフェクトレシピ』
(一般書)
※蔵書1冊貸出中
人気レストラン「ラ・ベットラ」のシェフ落合務がわかりやすく丁寧に教える、家でもおいしく作れるイタリアンレシピ集。ひとつひとつの料理のなりたちや、「なぜそうするか」という「理屈」がわかる。

各発表者の「おすすめ本」はジャンルも違い、対象とする読者層も異なっています。
にもかかわらず、「読んでみようかな?」という気にさせてくれる本が並びました。
今回のお題である「はじまり」についての説明もよくわかりました。

この中のどれが《チャンプ本》に選ばれたのかは伏せておきますが、最後まで読んで「元気が出る」本が選ばれたのではないかと思います。

🔷参加しての感想
今回の参加者は、属性も年齢も様々でした。学生時代に何度もビブリオバトルを経験されている方、点字で読んだ本から勇気をもらった方、子どもたちに読み聞かせの活動をしている方など…。特筆されるのは、館長自ら「一般参加者」として「おすすめ本」を紹介していたことです。大変好感のもてる姿勢だと思います。

私の「おすすめ本」はチャンプ本にはなりませんでしたが、個人的にはプレゼンが5分ピッタリに終わったので、その点では満足しています。
やはりこうした企画には「参加することに意義がある」と言えるのではないでしょうか。
私はひとりの「市民ブロガー」ですが、公立図書館をめぐる問題についても、「評論家」的と思われるコメントやメッセージを発信するだけでなく、実際にこうした企画に参加することは大切だと思います。

今回、図書館まつりのアンケートを通じて「こんな企画も良いのでは?」との「ある提案」をしていますので、そちらの企画も実現すればと考えています。

🔷図書館をめぐる新たな問題
現在、公立図書館に対して発出された、「拉致問題」に名を借りた文科省からの通知が問題となっています。これは、上尾市図書館を含めた公立図書館の基本姿勢である「図書館の自由に関する宣言」をも脅かすものとなっています。
当ブログでは、この問題について、次回以降の記事にしていきたいと考えています。