上尾市に設置されている「いじめ問題調査委員会」の役割と人選とは
当ブログの No.253 記事では、上尾市には学校での「いじめ問題対策」として3つの機関があること、さらに、市教委が公開すべき情報(個人にかかわる情報以外についての会議録)を非公開にするなどの「隠ぺい体質」があることについて言及しました。
今記事では、3つの機関のうち、上尾市に設置されている「いじめ調査委員会」について、その役割と、調査委員の人選についてお伝えします。
No.260
🔶「いじめに関する状況」の報告について
上尾市教育委員会の定例会(例月)を毎回傍聴するとわかりますが、毎回配布される資料のひとつが「いじめに関する状況」の報告です。
これは、今年度の学校における「いじめ」の「認知」「解消」の件数が月別に示されている資料であり、当然ですが個人名が記載されているわけではありません。
※上尾市教育委員会1月定例会配布の「報告事項」(P12~P14)(市教委HP掲載済)
これを見ると、小学校での認知件数に比較して、中学校での認知件数が少ないことがわかります。(例)2022年9月 いじめ認知件数 小学校=116件 中学校=3件
また、「解消」については、市教委のHPで公表されている「上尾市いじめの防止等のための基本的な方針」(P13)には、「いじめの解消」として、「① いじめに係る行為が止んでいること」「② 被害児童生徒が心身の苦痛を感じていないこと」が挙げられています。
🔶「いじめ問題調査委員会」の役割とは
「上尾市いじめ問題対策連絡協議会等の設置に関する条例」では「いじめ問題調査委員会」の役割として、「重大事態について上尾市立の小学校又は中学校における調査が困難な場合に、当該重大事態について調査を行うものとする」と定められています。
では、ここでいう「重大事態」とは何を指すのでしょうか。
「上尾市いじめの防止等のための基本的な方針」の記述、あるいは「第1回上尾市いじめ問題対策連絡協議会」および「第1回いじめ問題調査委員会」での市教委事務局の説明は次のとおりです。
いじめ問題での「重大事態」とは |
1.いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身、又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。 |
「重大な被害」とは ⇒ *児童生徒が自殺を企図した場合 *身体に重大な損傷を負った場合 *金品等に重大な被害を被った場合 *精神性の疾患を発症した場合 (児童生徒や保護者から重大な被害が生じたという申立てがあったときを含む) |
2.いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。 |
「相当な期間」とは ⇒ 年間30日を目安とする。ただし、児童生徒が一定期間連続して欠席している場合には、迅速に調査に着手する。 |
(市教委事務局の説明) 「いじめ調査委員会」では、1つの重大事態に対して、およそ10回の調査をおこなう。 |
このように、「上尾市いじめ問題調査委員会」は、非常に重要な役割を担っています。
🔶「上尾市いじめ問題調査委員会」の現委員は?
「いじめ問題調査委員」の位置づけは、上尾市の特別非常勤職員となっており、現在の委員は次の方々です。
いじめ調査委員
表の下部に簡単な説明を付しましたが、調査委員のうち4人は2014(H26)年度から継続して委員となっています(すなわち、調査委員となって10年目を迎えます)。
また、井川・柿崎・森田各氏に共通するのは「退職時に上尾市内中学校の校長であった」という点です。
🔶どこに推薦を依頼したのか
当ブログでは、「2020(R2)年度に、どのように調査委員を選んだのか」について情報公開請求しました。その結果、次のような状況が判明しました(委員名の敬称は略)。
委員選出区分 | 推薦依頼先 | 委員名(2020年度推薦時) |
1号委員(弁護士) | 埼玉弁護士会 会長 | 大澤一司(※2014~現在) |
2号委員(医師) | 埼玉県小児医療センター 病院長 | 平山優美(※2014~現在) |
3号委員(心理、福祉等に専門知識を有する者) | 聖学院大学 学長 | 相川章子(※2014~現在) |
4号委員(識見を有する者) | 上尾市人権擁護委員会 会長 | 和氣昭祐(※2014~現在) |
4号委員(識見を有する者) | 国際学院中学校高等学校 校長 | 柿崎 登(2022年3月退任) |
この中で、疑問が生じるのが、柿崎氏(再任)にあたっての推薦依頼先です。
「4号委員=識見を有する者」を推薦してもらうのに、なぜ国際学院中学校高等学校に依頼するのか、その理由は全くわかりません。
推測するに、「調査委員一覧表」を見れば明らかなように、柿崎氏の前任者である井川氏も国際学院中高副校長であったことが影響しているのでしょう。
つまり、調査委員の個人名は内々で決まっていて、その人の所属先に市教委が依頼文書を発出しているという構図が見えてきます。
その際、池野教育長(当時)が発出した推薦依頼の文書は以下のとおりです。
IMG_20230209_0001
「3 活動内容」には、「重大事態に該当するいじめが発生し、各上尾市立小・中学校での調査が困難な場合に、当該重大事態について他の4人とともに調査を行う」とあります。
また、「4 報酬額」が会議1回 15,000円というのも、果たして妥当な金額であるのかの検証も必要かもしれません。
🔶今年度の「上尾市いじめ問題調査委員会」開催状況
今年度は、以下のとおりの日程で「上尾市いじめ問題調査委員会」が開催されています。
開催日程 | 会議録の公開 | 欠席した委員名(敬称略) |
第1回 2022.06.09 | 全面公開 (HP掲載) |
大澤一司 平山優美 |
第2回 2022.11.07 | 1頁目のみ (情報公開請求) |
大澤一司 平山優美 |
第3回 2022.11.30 | 1頁目のみ (情報公開請求) |
平山優美 和氣昭祐 |
第4回 2023.01.11 | 現在は非公開 (情報公開未請求) |
現在は不明 |
第5回 2023.02.02 | 現在は非公開 (情報公開未請求) |
現在は不明 |
当ブログの No.253 記事でお伝えしたとおり、第2回&3回の調査委員会の会議録は、当初は非公開とされましたが、納得できなかったため、審査請求書を提出した結果、1頁目が開示されたものです。
現在、市のHPで開催結果が掲載されているのは、第1回の調査委員会のみです。
少なくとも、当事者の個人名が載っていない部分については、情報公開請求するまでもなく、HP等で公表すべきではないでしょうか。
🔶「いじめ問題調査委員会」そのものの課題
今記事では、上尾市に設置されている「いじめ調査委員会」について、その役割と、調査委員の人選についてお伝えしてきました。
一つの重大事態について、およそ10回の調査が基本ということなので、まだ何回か調査がされると思います。
第1回・第2回・第3回すべて欠席という委員もいますが、自身が抱えている仕事が多忙であれば、他の専門家に依頼する等の対応があって然るべきだと思います。
また、「推薦依頼の文書があるか否か」については情報公開請求するつもりですが、4号委員として「退職した校長」の名前が続いています。森田直樹氏については、国際学院中学校高等学校勤務ではないことから、どこに推薦依頼をしたのかも確認していきます。
さらに、[小中学生の時に「いじめの加害者または被害者」となったが、現在、自らの経験に基づき、いじめ防止について発言や発信をしている]方を5号委員(教育委員会が必要と認める者)とすることについても市教委は早急に検討すべきではないでしょうか。
今記事では、上尾市に設置されている「いじめ調査委員会」について、その役割と、調査委員の人選についてお伝えしてきました。今後予定している情報公開請求の結果も含め、当ブログでは、引き続きこの問題に高い関心を寄せていきます。
情報公開ありがとうございました。いじめ問題については、論議が見えないと何を問題としているのか分かりませんね。井川氏も柿崎氏も校長の時に勤務しましたが、(特に柿崎氏は私が結婚する時は組合員の中でも親しい間柄だったので実行委員会の委員長をお願いしました。そして最後の勤務校の西中の時には校長で会いました(笑))。パブリックコメントにも書きましたが、教育委員会の中でいじめの数が報告されても殆ど議論にならない。子どもたちが何でこんなに苦しんでいるのかが分からない。そういう教育委員会に失望しています。もっと、市教委を詰めて、子どもによりそった教育ができる様に、要求し続けていきましょう!次回のブログも楽しみにしています。
E.Y 様
コメント、ありがとうございます。
そうでしたか、そのような実体験があったのですね。
調査委員の「元校長」の中には、「え? なんでこの人がいじめの調査委員をやっているの?」と言われる人が含まれていますね。
教育長=市教委事務局=元校長 という「ムラ社会」の構図が見え隠れするひとつの例です。
ご指摘のとおり、現在の教育委員は、基本的に市教委事務局の提案に当たり障りの無いことを言うだけで、「全員一致・異議無し」を繰り返しています。
先日、教育委員の資質にからんで情報公開請求をしていますので、その結果については、また当ブログでお伝えします。