修学旅行で万博に行く際の安全面や暑さ対策 & 上尾市教委の役割は?
前記事で、来年度の市内中学校の修学旅行の行き先と費用についてお伝えしました。
その中で、目的地が「京都・大阪」という学校が2校ありましたが、当ブログの調べでは、2校とも大阪・関西万博(以下、万博と略記)に行くとの情報を得ました。
言うまでもなく、修学旅行の目的や行き先を決めるのは各学校の裁量です。
そのことは大前提として、心配されるのは生徒の安全面や暑さ対策などです。
今記事では、大阪府吹田市が保護者宛てに出した文書も参考にしながら、上尾市教育委員会の役割とは何なのかも含めて、万博修学旅行に関連してお伝えします。
No.354
🔸来年度の修学旅行で万博に行く予定の学校は市内で2校
前記事で市内中学校の来年度の修学旅行一覧表を掲載しました。
その中で、万博に行く予定の学校は、市内11校中、次の2校です(情報公開請求の結果、学校名は公開されていますが、今記事では学校名を伏せてあります)。
なお、他の9校の目的地は全て「京都・奈良」となっています。
現段階の予定では、修学旅行の日程は
B中 ⇒ 2025年6月26日~6月28日まで
K中 ⇒ 2025年7月2日~7月4日まで
となっています。
どちらの日程も、安全面に加えて、暑さ対策が心配になります。
なお、予定費用が7,000円以上違いますが、前記事でもお伝えしたとおり、JR乗車券・特急券以外の費用は全て黒塗りでした。
🔸「どのような懸念があるか」について情報公開請求の結果
私(当ブログ館主)は、次の点について情報公開請求しました。
大阪・関西万博は「(ガス爆発が起きたことを含めた)安全性の問題」「会場へのアクセスの問題」「会場内での生徒の過ごし方の問題」など、多くの課題や懸念があることは自明です。 そこで、現在B中学校・K中学校それぞれの学校において抱えている大阪・関西万博に行くことへの課題や懸念が何であるかが判別できる文書・資料等。 |
これについて、B中からは『修学旅行に係る仕様書』が開示されました。その中で、情報公開請求に対応すると考えられる記述は、次のとおりでした。
報道等から大阪万国博覧会の開催がやや危ぶまれており、状況によっては教育効果が低くなると考えております。 ※開示されたこの『仕様書』の文言は、2024.11.27現在のものです。 |
なお、K中関係の文書・資料等は開示されませんでした。
🔸万博協会主催のオンライン説明会には2校とも「不参加」
下記のとおり、「修学旅行等に於ける2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の活用に関する説明会」が万博協会の主催で昨年の夏にオンラインで開催されています。
私はこの説明会に関し、上述の2校が「オンライン説明会に参加したか」「説明会で出された質問と回答について学校内で共有されているか」について情報公開請求しました。
その結果、上記2校とも説明会に参加していないこと、また、質問と回答についても共有されていないことがわかりました。
この説明会は、オンラインで夏休み期間中も開催されており、事前の質問も可能であったことから、2校とも参加したほうがよかったのではないでしょうか。
なお、事前の質問や説明会時に出された質問と回答は、webで公開されています(①事前質問と②説明会当日の質問)=質問の数が大変多いのに驚きます。
🔸万博協会の説明は
では、万博協会はどのように説明しているのでしょうか。
公開されている質問と回答の中から、ほんの一部を紹介します
Q.大阪・関西万博の会場へのアクセスはどのようになっていますか。 |
A.(団体バスの場合) 団体バス利用の場合は夢洲第2交通ターミナルで降車後、西ゲートより入場いただきます。 ※夢洲第2交通ターミナルのご利用は予約制となります。また、夢洲第2交通ターミナルは乗降のみとなりますので、バスが待機する場合は、舞洲に設けます舞洲待機場(舞洲万博P&R駐車場)まで移動していただきます。こちらについても予約が必要です。 |
※開示された資料の大半は黒塗りでしたが、地下鉄利用が見当たらないため、2校ともバス利用と思われます。スムーズに乗降できるかどうかという懸念があります。
Q.暑さ対策はどのようになされていますか? |
A.建物には空調を設置するとともに、屋外の暑熱対策についても、遮熱性舗装やパーゴラ(日陰棚)の設置などを検討しています。また、冷風扇など暑さ対策備品での対応や、場内放送・デジタルサイネージなどで熱中症注意喚起を行うなど、ソフト対策を行うことも検討しています。 |
「屋外の暑熱対策についても、遮熱性舗装やパーゴラ(日陰棚)の設置などを検討」と説明されていますが、最近も話題になった、万博会場に設置されるという「石が吊るされているパーゴラ(石の数は750個)」、大丈夫でしょうか?
※著作権の関係があり、当ブログでは画像を掲載することができませんが、実際の画像等をごらんになりたい方は、「石が吊るされているパーゴラ」で検索すると、画像やイメージ図が出てきます。
Q.安全対策について、ガス検知器を設置されるようですが、来場中に基準値を超えるガスが検知された場合は、どのような対応を実施されるのでしょうか。(説明会Q&Aより) |
A.開場前に基準値を超えた場合、その建物には入れないようにします。開場中に基準値を超えた場合、速やかにその建物から避難いただき、換気対応を行います。 |
万博協会の回答「開場中に基準値を超えた場合、速やかにその建物から避難いただき、換気対応を行います」は、正直、「それで大丈夫ですか?」と思ってしまいます。
Q.万博会場への下見は可能ですか? |
A.可能ですが、下見ができるのは、万博がはじまってから(=2025.4.13以降)になります。 |
少しだけ補足すると、各学校がおこなう修学旅行の下見は、たとえば京都・奈良の場合、「1校1名・日帰り」が原則になる、という信じられないような対応がまかり通っていることです。その理由は、あくまでも「県から支給される旅費予算が極めて少ない」ことによります。日帰りでは、京都と万博会場をともに見て回ることは無理でしょう。しかも、万博の下見が出来るようになるのは、4月13日以降という制限があります。
年度当初の忙しい時期に、日帰りでの下見はかなり難しいでしょう。この点も心配です。
これらのことを含め、万博については懸念する点も多いですが、B中・K中ともに懸念材料や心配な面は旅行業者に任せているのではないかと思われます。
また、2校が修学旅行で万博に行くことが明らかになったあとで、上尾市教育委員会として安全性や暑さ対策などについて関係機関等に確認していないことにも疑問が生じます。
🔸大阪府吹田市は「学校行事で万博には行かない」ことを通知
大阪府吹田(すいた)市は、つい先日の1月29日付けで、教育委員会と各学校の校長との連名で「保護者の皆様へ」宛てた文書を発出しています。
上の文書の文面は見づらいかもしれませんので、この文書発出の理由を再掲します。
(当ブログの判断で、色替え・太字としている箇所があります)
本市小・中学校が学校行事として訪れるにあたり最も配慮すべき事項として、児童生徒の健康維持や安全確保の具体的な方策を、昨年7月以降、本市教育委員会から大阪府教育庁に対して確認してまいりましたが、特に、留意すべき児童生徒の昼食場所及び待機場所での熱中症対策や、安全に団体行動するための導線及び点呼・待機場所の確保が不十分であるという見解に至りました。 |
保護者に宛てて出されたこの文書には、「学校行事として訪れることについては、誠に残念ながら見合わせることといたしました」とあり、まさに「英断」と言えます。
さらに、「本市(吹田市)教育委員会から大阪府教育庁に対して確認」してきた、という点も見逃せません。
🔸上尾市教委の役割とは? 強制的な委嘱研究には熱心ですが…
行き先がどこであろうと、一生の思い出になるような修学旅行にするために、各学校では、かなり前から準備をすると思われます。2年生の時に修学旅行に関連した校外学習などの学年の取り組みをおこなって、修学旅行につなげる学校もあるでしょう。
今記事の冒頭でも述べたとおり、そうした取り組みを含めて、修学旅行の目的や行き先は学校の裁量です。
そのうえで、「生徒にとって、万博会場は本当に安全なのか」「どのような暑さ対策をしているのか」など、万博修学旅行について、生徒の安全にかかわる事項について、上尾市教育委員会として「知らぬ存ぜぬ」のままでよいのか、という問題があります。
情報公開請求などで明らかになった範囲では、上述の吹田市教育委員会とは全く異なる対応であると言わざるを得ません。
修学旅行は、安全で快適な条件が整ってこそ、一生の思い出にもなる学校行事です。
各学校の「委嘱研究」発表については、強制的に3年に1度(「プレ発表」があるので、実質的には3年間のうち2年間は委嘱研究漬け)という頻度で実施させる一方で、万博修学旅行での生徒の安全面については学校まかせ、また、市内中学校の修学旅行の費用(保護者負担)の上限額も定めない、という事実があります。まさに上尾市教育委員会の役割が問われています。
上尾市教育委員会として、生徒の安全面や保護者負担の軽減に配慮したうえで、修学旅行の目的や行き先は各学校の裁量に任せる、という考え方に変える必要があるのではないでしょうか。