「時間外勤務が月に169時間」という「学校の働き方改革」の実像
情報公開請求の過程で、市行政や教育行政・学校現場などの現状に驚くことがあります。
今記事でお伝えする「学校の働き方改革」の「実像」もそのひとつです。
西倉教育長が市議会答弁で「学校の働き方改革は最重要課題」と明言したにもかかわらず、実際には、教育委員会が掲げた目標を達成した学校は1校もありませんでした。
今記事では、市内のある中学校での実態を含め、「働き方改革」の実像をお伝えします。
(長めの記事ですが、リンク先も含めて、じっくりとお読みください)
No.368
🔸市教育委員会の目標は明確でした
教育委員会の『上尾市立小中学校における働き方改革基本方針(R4.9.1~R7.8.31)』には、次の目標が掲げられています。
このとおり、大変わかりやすい目標となっています。
では、「学校の働き方改革」について、西倉教育長は何と言っているでしょうか。
🔸「学校の働き方改革」についての教育長の市議会答弁は?
「学校の働き方改革」に関する市議会一般質問(令和5年9月定例会)において、西倉教育長は次のように答弁しています。
(平田通子議員)教育長に伺います。教員の負担軽減は、子どもたちの教育の保障につながることです。市が立てた目標を達成するために、どのように責任を持って多忙化解消に力を注いでいくのか、見解を伺います。 |
(西倉教育長)学校における働き方改革につきましては、教職員が毎日健康で子どもたちの前に立ち、未来を生き抜くために必要な力を育むために解決しなければならない最重要課題であると捉えております。現在、本市では、上尾市立小・中学校における働き方改革基本方針に基づきまして、教職員の多忙化解消、負担軽減に取り組んでおります。その結果、時間外在校等時間の縮減や年次休暇取得状況の改善など、少しずつではありますが、着実に成果を上げているものと認識しております。今後も引き続き、学校における働き方改革に全力で取り組み、教職員の負担軽減に努め、「夢を育み 未来を創る 上尾の教育」の具現化を目指してまいります。 |
このとおり、西倉教育長は「学校における働き方改革は、解決しなければならない最重要課題である」と答弁していますが、実態はどうなっているのでしょうか。
🔸目標を達成した学校は小中学校とも「1校も無し」
次の表は、私(当ブログ館主)が情報公開請求で入手した令和6年度の資料を整理し、見やすくしたものです。
(ひと月の時間外在校等時間が45時間以内になっているか ⇓ )
(1年間の時間外在校等時間が360時間以内になっているか ⇓ )
教育委員会が掲げた目標を達成した市内の小・中学校は1校もありませんでした。
驚いたのは、ある中学校(仮にO中学校とします)では、ひと月の「時間外在校等時間=時間外勤務」が169時間12分という教職員がいるという事実です。
🔸169時間超えの「時間外勤務」は、まさに「異常事態」
公開された資料から、この中学校の勤務実態をあらためて見てみました。
すると、驚くべき事実が明らかになったのです。
(O中学校の昨年度の時間外勤務の実態)
*ひと月の時間外勤務が80時間を超えている教職員=対象者25人中11人
*上記11人が100時間を超えている月数=述べ24月
*時間外勤務の最高時間は、ある教員の 169時間12分(令和6年10月)
まず驚くのは、「過労死」の要因となる「ひと月に80時間超えの時間外勤務」をしている教職員の多さです。
最も時間外勤務が多かった教員(仮にA教諭とします)の「時間外 169時間」の内訳を知りたいと考え、情報公開請求で入手したのが次の資料です。
A教諭の時間外勤務は、平日が109時間、休日が59時間となっています。
ちょっと計算してみましょう。
昨年10月の平日は22日。
つまり平日は勤務時間終了後に約5時間も校内にいることになります。
また、休日は部活動(A教諭は卓球部顧問)に従事したと考えられますが、週1日は部活休養日なので、昨年10月は祝日を入れても部活ができるのは5日。
すなわち、休日は12時間時間外勤務をしている計算になります。
あるいは、休日にもかかわらず校内にいることも考えられます。
🔸O中学校の校長の「指導」とは?
では、この学校の校長は、「学校における働き方改革」に関し、教職員に対してどのような「指導」をしているのでしょうか。
以下はO中学校の昨年7月の『学校日誌』です(個人名や印影は伏せてあります)。
少し字が小さいですが、「校長指示伝達」の欄に要注目です。
ポイントを挙げれば、次のように整理できます。
*勤務実態調査により、自らの超過勤務の要因を把握すること。
*職務は計画的に行うこと。
と指摘し、「超過勤務が多いこと」に警鐘を鳴らす一方で、
*7月中の「指導課訪問」と、11月の「委嘱研究発表会」を意識すること。
と言っています。
校長の「指導」は7月1日に「指示伝達」という形でおこなわれています。
しかしながら、その後、
A教諭の10月の169時間12分の超過勤務へとつながっていくことになります。
これらの事実関係から、「指導課訪問」や「委嘱研究発表」が教員の時間外勤務のひとつの要因となっていると言えるのではないでしょうか。
🔸何も言わない教育長
教育委員会として「時間外在校等時間 月45時間以内、年360時間以内の教員数の割合を令和6年度末までに100%に」という目標を掲げたのですから、その結果について西倉教育長が何らかの発信をしたと考えるのは当然です。
ところが、情報公開請求の結果は次のとおりでした。
いかがでしょうか。あれほど「学校における働き方改革は最重要課題」と明言した西倉教育長ですが、実際には目標に対する結果を達成した学校は1校も無かったという事実について、何も発信をしていないのです。
残念ながら、これが今の上尾市の教育行政の実態なのです。
ですが、こうした実態は変えていかなければならないと私は考えています。
そこで、今記事でお伝えしたことを含め、私は市長に対し「学校の働き方改革」の具体策としてひとつの「政策提言」をしました。
その内容と市長からの「回答」については、後日、当ブログでお伝えしていきます。