市の「交際費」に関しての市民的視座からの疑問や問題点の検証(1)
市のHP[市長のページ]の片隅でひっそりと公表されている、上尾市の「交際費」。
この「交際費」は、いったいどんなことに使われているのでしょうか?
調べてみると、その内訳は「弔慰」と「会費」とに大別されることがわかりました。
当ブログでは、市の「交際費」の問題に焦点を当て、今記事と次回の記事の2回に分けて検証していきます。
まず、今記事では「市交際費」の支出区分が変更されたことについて、また、「交際費」の中の「弔慰」についてお伝えします。
少し長めの記事ですが、私(当ブログ館主)は現市政を検証する上でも重要な問題であると考えていますので、じっくりとお読みください。
No.377
🔸「市長のページ」の中でひっそりと公表
市のHPの「市長のページ」の中に「市交際費の公開」(←青字クリックでHPに飛びます)として記載されています。「市長のページ」の中で市の交際費として公表されているということは、「市長交際費」と言っても差し支えないでしょう。
なお、R7年度の一般会計予算として、交際費は 1,200,000円 計上されています。

この支出に関しては、「上尾市交際費支出基準」として定められていますが、「どのような名目で」「いくら」支出するのでしょうか?
🔸「市交際費」の対象となるのは?
上記で生じた疑問=「どんな時に・いくら支出するのか」については、「市交際費支出基準」の中に表が掲載されています。

このとおり、「会費」・「弔慰」・「見舞い」・「協賛」・「その他」となっており、それぞれに説明が付けられていますが、「どんな時」にしても、「いくら支出するのか」についても、わかりにくいですね。
上記の表の内、情報公開請求した結果、「見舞い」「協賛」「その他」については、少なくとも直近の5年間支出されていないことが判明しました。
つまり、必要が無いにもかかわらず、「誰も何も言わない」項目であると考えられますので、この点については、「市長への政策提言」で「廃止してもいいのではないか」と提言しました(どんな中身で提言したかについては後述します)。
表の上のほうに「この基準は、令和5年10月1日から施行する」と記載されていますので、2年前の10月から市交際費の支出区分が変更されたということになります。
🔸2年前の10月から「慶祝」が消えた?
では、2年前、市交際費の何が変わったのでしょうか?
簡潔に言えば、「慶祝」が消え、「会費」とされたのです。
[R5年9月(変更前)の市交際費]


[R5年10月(変更後)の市交際費]
では、なぜ「慶祝」という文言が消えたのでしょうか?
市HPには、次のような説明があります。

PC画面をごらんの方は、文字が小さくて見にくいかもしれませんが、「市民の皆さまからの誤解を招く行為の防止を図る観点から、慶祝費を廃止する」と書いてあります。
※このことについて、2024(R6)年2月の予算特別委員会で、秘書政策課長は「慶祝費につきましては、金額等の規制のないものになります。例えばお祭りですとかイベント、運動会等に出席させていただいたときに、お祝金という形でお渡ししているようなものになります」と説明しています。
では、「慶祝」を廃止して、新しく設けた「会費」については、「市民からの誤解」を招かないのか?との疑問が生じますが、次回の記事で実例に基づき検証します。
🔸「弔慰」についての疑問
今年度(R7)について、今年の8月分を見てみましょう。

今年の8月分の「交際費」は、「弔慰」が1件のみでした。
ここで気になるのは、「ご主人」という言葉の使い方です。市の公式のHPで使用する言葉として相応しいのか非常に疑問が生じます。
この疑問を含めて、私は3点にわたって「市長への政策提言」をおこないました。
🔸「市長への政策提言」をおこなった結果、一部が変更されました
私がおこなった「市長への政策提言」は次のとおりです。
| 現行の上尾市交際費(以下、交際費)の支出については、社会経済情勢の変化などを踏まえて見直しをすること、およびジェンダー平等の観点からも、市民感覚に合致したものとなるように弔慰支出の公表の際の表記を改めることなど、以下の3点について提言します。 |
| (1)「上尾市交際費支出基準」の別表に掲げられている支出区分の内、「見舞い」「協賛」「その他」についてはできるだけ早い時期に削除します。 (理由)「見舞い」「協賛」「その他」については、支出対象や支出額が不明確であり、少なくとも令和2年度以降現在まで支出がありません。探せば対象となる事例があるかもしれませんが、担当する職員が職務としてそうした状況を把握することは困難であり、手間がかかると思われます。むしろ、そのような時間を別の業務に充てたほうが合理的であると思われます。また、市民感覚に合致したものになるようにするためにも、交際費の中から上記の支出区分を削除することを提言いたします。 |
| (2)支出区分の「弔慰」については、令和2年7月制定の「弔慰に関する対応表」を根拠にしていると思われますが、交際費の支出にあたり、「配偶者」「父母・子」についてはできるだけ早い時期を目途に支出しないこととします。 (理由)「配偶者」「父母・子」の弔慰のために交際費を支出する場合、弔慰の対象者が亡くなった事実について把握する必要があり、その実務は市の職員が担うものと思われます。しかしながら、とりわけコロナ禍以降、葬儀については家族葬が増加しているなどの社会情勢の変化が認められること、あるいは配偶者や父母・子の死亡についてご本人が周囲に知らせないという場合も多いのではないかと思われます。 |
| (3)弔慰のための交際費をHPで公開する際、「ご主人」「ご母堂」などの表記を「ご家族」に改めます。 (理由)ご家族が亡くなった場合に支出した弔意のための交際費をHPで公開する際に、現行では対象者の「ご主人」「ご令室」「ご尊父」「ご母堂」などと表記されていますが、社会情勢の変化やジェンダー平等の観点から、当面「ご家族」と表記することを提言します。ここで「当面」としたのは、前記(2)により、「配偶者・父母・子については弔慰としての交際費を支出しない」ということに改められるまでは経過措置として「ご家族」と表記するという意味からです。 以上を政策提言いたします。 |
[市長への政策提言についての補足]
「市長への政策提言」の中の文言については、なるべく「市交際費基準」で使われている語句を引用しました。冒頭で紹介した「市交際費基準」には次の文言があるからです。

市の交際費は、支出内容や金額が常に市民感覚に合致したものとなるよう、社会経済情勢の変化等に十分配慮して執行されなければなりません。
つまり、市交際費支出の基準はあくまでも市民感覚に沿っているかどうかなのです。
ですから、私の提出した「市長への政策提言」では、あえて「市民感覚に合致したもの」という文言を使っています。
また、上記提言の(2)で「弔慰に関する対応表(令和2年7月制定)」について言及していますが、これは情報公開請求によって入手した資料に基づいています。



情報公開請求で入手した上記「弔慰に関する対応表」は、公開された資料がやや不鮮明であり、とりわけ当ブログをPC画面でごらんの方は見にくいかと思われます。本来であれば市のHPに掲載すべき資料です。
私は、「市長への政策提言」で、この表の中の「配偶者」「父母・子」については削除するように提言しました。理由は提言の中に記載したとおりです。
対応する職員は、「事実関係の確認」を含めて、大変な労力が必要だと思われますので、もっと簡素化すれば職員は他の業務に携わることができるのではないでしょうか。
この提言については、市長からは次の「回答」が寄せられました。
🔸「市長への政策提言」への市長からの「回答」とは
私の提言への市長からの「回答」は次のとおりです。
「回答」では、提言の(1)・(2)については「社会情勢の変化や近隣市町村の状況を注視しつつ、必要に応じて適宜見直しを行ってまいります」とあります。
ところが、すでに触れた「上尾市交際費支出基準」には、「近隣市町村の状況を注視」などとは、ひと言も書いていません。これでは、市長による回答では「苦しい言い訳をしている」と指摘されてもしかたないでしょう(さらに細かいことを言えば、埼玉県内の「村」は東秩父村のみであり、「近隣市町村」という表現自体が矛盾しています)。
一方で、(3)については「提言者の言うとおり」と考えたのでしょうか、9月分の「市交際費」については、以下のように文言が修正されたうえで公表されました。

私は、「ご家族」としたらどうかと提言しましたが、回答では「親族」としています。
市民からの提案を素直に受け入れればいいのに…という感想はありますが、とにかく市民の提言により、市交際費の公表の表現が変更されたことは事実です。
ですがー
市のHPで公表している「ご主人」という表現について、現市長は、ジェンダー平等の観点も含めて、市民が指摘するまでは何とも思わなかったのか? という疑問は依然として残ったままです。
当ブログでは、次回の記事で、「会費」という名目の「市交際費」についての疑問について、実例に基づいてお伝えします。