<あげお未来創造市民会議>の提言とは

「コロナ感染防止」をあたかも〈錦の御旗〉にして、市民が参加するイベントや会合の大半が中止を余儀なくされています。<あげお未来創造市民会議>も例外ではありません。今記事では、もはや「忘れられた感」もある同市民会議のその後についてお伝えします。

記事No.106

■資料や会議録はHPどこにある?
上尾市のHPから、あげお未来創造市民会議>の資料や会議録を見つけるには、トップページ → 組織でさがす → 行政経営部(行政経営課)→ 総合計画(第6次上尾市総合計画の策定経過)→ あげお未来創造市民会議、と辿って、やっと資料を見ることができます。
むしろ、トップページのキーワード検索であげお未来創造市民会議と入力したほうが早いかもしれません。ただしこの会議が上尾市にとってどのような施策に位置づいているかは分かりにくいですが。

■「書面会議」となった中身とは
コロナの影響で、会合を開かず「書面会議」となった市民会議の結論ともいうべき中身は、こちら⇒【別冊】分野別施策に対する提言
これは、第12・13回の「書面会議」を経ているものということですが、資料では「分野別施策に対する提言」として、「理想の状態」と「必要な取組み」を含む次の10分野についての記述があります。

1.健康・医療
2.協働・コミュニティ
3.行財政運営
4.防災・防犯・交通安全
5.福祉
6.都市基盤・公共交通・環境・緑地・公園
7.子育て
8.文化・スポーツ
9.教育
10.産業

この中から、ブログ筆者が関心を寄せている【教育】についての「理想の状態」と、「必要な取組み」のいくつかを見てみましょう。

分野別施策 【教育】 ※朱書きはブログ筆者によります。
理想の状態
自由な雰囲気の教育環境があり、発想が豊かな子どもが育つ
教育環境
誰もが学びやすい環境をつくるために、少人数学級の実現に向けた取り組みや、……教員の負担軽減に努めることが、子どもたちの教育の質の向上につながると考えます。
必要な取り組み)〈抜粋〉
🔶給食費の無料化を実現する
🔶教員の質の向上のため教員の増員を図り、研修のための期間を設けて、教育内容の向上をはかる(原文ママ)
🔶教員がなりたい職業になるような取組み
🔶研修内容の見直し(いつでも、どこでも、だれでもできる)
🔶少人数学級を作る    etc.

これを見ると、「理想の状態」と「必要な取り組み」で〈給食費の無償化〉や〈少人数学級の実現〉が挙げられています。理想の状態を想定するのは良いことですが、そのためには、現状や経緯がどうなっているのかを把握したうえで「どうするか」の議論が必要です。

では、これらの問題について、市当局はどのような姿勢なのか、昨年6月の市議会一般質問と答弁を確認してみます。

◆(戸口佐一議員)この間、市民から給食費の無償化を含む減額の要望が出されていると思いますが、市民要望を実施できなかった理由は何か伺います。

◎学校教育部長(伊藤潔) 本市におきましては、これまで学校給食法の規定に基づき、学校給食に係る全体経費の中で食材費のみを保護者負担と考えているからでございます。なお、経済的な支援が必要となるご家庭につきましては、就学支援制度等の施策を講じてきております。

◆15番(戸口佐一議員) 今の答弁ですと、学校給食法の規定に基づき、経費の中で食材費のみを保護者負担と考えているから、こういうことだと思います。学校給食法の食材費のみを保護者負担について文科省は、学校給食法の規定はあくまでも負担のあり方を示したものであり、補助金を出すことによって実質無償化を禁止するものではないという見解が示されています。上尾市においてはどうしたら無償化の方向が出せるのか、さまざまな文科省の通達などを研究し、給食費の無償化をしていただくことを強く要望します。

給食費無償化については、今年の6月議会においても取り上げられ、この問題の関心の高さが伺えます。

◆(矢口豊人議員) 改めて畠山市長にお伺いいたします。給食費を無償化することは、保護者や児童生徒の生活不安払拭、教員が教育へ集中できる環境を整える上でも大変有効と考えます。市長のご見解はいかがでしょうか。

◎市長(畠山稔)生活に影響を受けている子育て家庭を支援していくことは大変重要なことであると考えており、本市では給食費の無償化ではなく、ひとり親家庭等への新たな支援を講ずることとしたところです。給食費につきましては、本市では学校給食法の規定や受益者負担の観点から、食材費は保護者負担としており、支援が必要な世帯に対しましては、生活保護家庭はもちろん、準要保護家庭に対しても給食費を含めた負担軽減の支援を行っております。

また、少人数学級(30人程度学級)の実現についても、今までも何度か市議会で質問が出されています。

◆(池田達生議員) 上尾市は、以前全国に先駆けて小学校1、2年生と中学1年生は30人学級が実施されていました。一人一人の子どもたちに行き届いた教育を進める上で、30人程度学級は非常に有効であると、学校現場や保護者からも大歓迎されていました。30人程度学級の復活は、現場の先生方からも強く要望が出されています。また、ほとんどの校長先生訪問のときに、校長先生の方からも教員の増員を求める声がありました。教職員の過密労働の解消にもつながりますが、実現への見解を伺います。

◎学校教育部長(伊藤潔) 30人程度学級を実施する予定はございません。

◆(池田達生議員) あっさり言われてしまいました。これはぜひ検討してほしいと思います。 かつて上尾市は30人程度学級で非常に有名でした。全国から見学に来るほどでした。しかし、2012年4月、当時の島村前市長時代に突然廃止してしまいました。一人一人の子どもたちに目が行き届く教育のために、ぜひこれは復活を要望いたします。

伊藤潔/学校教育部長(現・上尾中校長)の発言は、冷たいばかりでなく、過去の実績も無視した答弁であると言えます。
上尾市は、2011(平成23)年度までは、小学1・2年生と中学1年生について30人程度学級を実施していました。その時の上尾市教委による<点検評価報告書>には、次のような自己評価(つまり、市教委による自らの評価)がされています。

本事業は、幼稚園・保育所から小学校へ校種が移る際の「円滑な移行」と、学級担任制の小学校から教科担任制の中学校へ移る際の変化を少しずつ解消することを狙いとしたもので、平成14年度から本市が全国に先駆けて実施している事業である。 昨今の教育現場においては、いわゆる小1プロブレムや中1ギャップ、学力低下の問題が顕在化しており、また、生徒指導面の課題等も複雑多様化している。これらの解決策の一環として、少人数学級によるクラス編制を行うことにより、きめ細やかな指導を行うとともに個別の発表学習の機会を多く与えることによって、児童生徒の表現力、個性発揮などの効果が表れるとともに、不登校の出現率も低位で推移してきた

このように「高い自己評価」しているにもかかわらず、少人数学級を投げ出した市教委であることをまず確認し、「では、どうするか」の議論を巻き起こしていく必要があると言えます。
<あげお未来創造市民会議>で「理想の状態」や「必要な取り組み」を提言するのも良いのですが、まずは、現在、上尾市教育委員会や市長がどのような姿勢であるのか、あるいは、以前はどうだったのかについて、市議会での会議録や市教委が発出している資料等を検証してから、それらを踏まえて「どうするか」を考えるのが筋ではないでしょうか

そうした客観的な視点から上述の<分野別施策に対する提言>を見ていくと、残念ながら<あげお未来創造市民会議>の提言では、現状把握の議論無しに「理想の状態」や「必要な取り組み」が語られていると言わざるを得ません。