「上尾市独自の学力テスト」に反対する請願をめぐっての動き(その2)

前記事の冒頭に、宇都宮けんじさんの記者会見の動画を貼り付けました。これぞ記者会見という内容ですので、ぜひご覧ください。

(ここから今記事が始まります)
No.157の続編です。
「上尾市独自の学力テスト」の廃止を求める請願が、本会議で1票差で否決されるまでの経緯、とりわけ3月8日の市議会文教経済常任委員会での質疑と採択(4対3で請願採択)などを振り返ると、市教委事務局(指導課)が何に固執しているか、あるいは、議員の建前と本音が見え隠れしてきます。今記事は、このことについてお伝えします。

No.160

🔷全くの的外れな、指導課の<説明>なるもの
3月8日の上尾市議会 文教経済常任委員会の録画については、すでに公開されています。(該当部分= 01:10 ~ 34:35)

この委員会の冒頭で、田中指導課長(昨年度の役職)から、「上尾市独自の学力テスト」の廃止を求める請願についての「説明」がされていますが、ほとんど言い訳にしか聞こえません。
請願と市教委説明を対比すると、以下のようになります。

請願での主張 市教委の「説明」
このテストは、ほとんどの県内市町村で実施されていない。 言及無し。
コロナ禍で教職員の負担が増えているので、負担軽減をすすめてほしい。 言及無し。
答案用紙が児童・生徒に返却されず、見直しが出来ない。 言及無し。
テスト後の学習意欲に結びつかない。 言及無し。
全国学力テスト・全県学力テストで代用できるのではないか。 実施時期が異なるので、非常に効果的な調査である。
「上尾市独自の学力テスト」を廃止し、その費用をコロナ対策に回す。 言及無し。

🔷議員の賛否と質疑
次に、各文教経済委員の、この請願についての賛否の態度と質疑の状況を見ていきます(議員は五十音順)。

議員名(所属会派) 請願への賛否 質疑・意見等
秋山かほる(無会派) 賛成 質問・意見
大室尚(彩の会) 反対 質問・意見なし
尾花瑛仁(上尾同志会) 反対 質問のみ
鈴木茂(政策フォーラム・市民の声あげお) 賛成 採択のみ参加(委員長)
平田通子(日本共産党) 賛成 質問・意見
前島るり(公明党) 反対 意見のみ
矢口豊人(政策フォーラム・市民の声あげお) 賛成 質問・意見

秋山議員は、県内他市町村が実施していないことを指摘したうえで、費用対効果を疑問視。実証的に学力向上の検証が行われているかと質問。
これに対し、市教委事務局は「検証は委託業者に任せている」とし、委託業者に丸投げであると自ら明らかにしています。

尾花議員は、①県内市町村で学力テスト(国・県以外)を実施しているのはどこか。②外部委託なのか、その費用は。との質問をしています。
これに対し、市教委事務局は①3市町で実施している。②外部委託しており、800万円の費用がかかっている。と答弁しましたが、指導課長は「今、手元に資料がありません」などという始末でした。
(3市町は、市教委が後で南部教育事務所管内であると訂正)
不可解なのは、尾花議員の質問の様子から、現在行われている「上尾市独自の学力テスト」には反対であると思われるのですが、採択のときは
請願に反対している点です。所属会派の縛りがあるのでしょうか。疑問に思っても採択に結びつかないあたりが、尾花議員の限界でしょう。

平田委員は、請願に賛成の立場からの発言でした。塾に行っている子が多い学校は点数が上がる実態があること、また、学校ごとの点数が出されるのは、学校の競争主義につながるという指摘をしていました。
さらに、新型コロナ対応で学校現場は疲弊していること、その中でクラスごとの点数が表示されるのは逆効果になること、予算は学力テストではなく、別のことで学校教育のために使うべきであるとの発言でした。

前島議員の発言は、正直なところ、何が言いたいのかわかりません
そのまま引用すると、「公明党上尾市議団を代表してこの請願に反対します。この請願については私どもも内容について理解できないわけではありません。市の学力も各学校の学力も大切ですが、やはり一番大切なのは、そこからこぼれ落ちてしまっているかもしれない子どもたち一人一人にどう学力をつけていくか、これが最も大切であると思います
今後は、この請願を出された方の思いも深く受け止めて、これからの調査を、子どもたちの学びのためにしっかりと生かしていただきますことを要望申し上げ、この請願に反対いたします」というものです。

前島議員は、一度も質問をせずに、請願に反対する旨発言しています。
下線部が反対理由だと思われますが、やはり何を言っているのか理解できません。機会があれば、公明党関係者に聞いてみたい気もします。

矢口議員は、保護者や教職員から話を聞いたうえで、請願に賛成する立場で次のように発言しています。
①「上尾市学力テスト」は、問題・回答用紙が返却されない。そのため児童生徒は見直しをすることができず、保護者や教職員も、子どもたちがどこでつまずいているのか把握することができない。児童生徒の学習意欲の向上や教職員の指導方針策定に結びついておらず、十分に機能していないと考える。
②教育委員会が各学校の状況を客観的に把握することは大変重要であるが、おおむね内容が重複する国と県の学力テストの結果で把握することが可能。近隣自治体でもほとんど実施されていない。今後継続するには、具体的な必要性・必然性を示すべきである。現場教職員や保護者・児童生徒の声に耳を傾けるべきであり、一から見直しが求められる。

🔷現場の声を聞かない上尾市教委
矢口議員の「現場教職員の声に耳を傾けるべき」という指摘は全くそのとおりです。上尾市教育委員会の致命的な欠陥のひとつは、校長以外の現場の教職員から話を聴かないことです。従来の市議会(委員会)での質疑でも、「こうした現場の声を把握しているか」との質問に、学校教育部長は「そういう声は届いていません」などと答弁しています。
つまり、上尾市教委は、教職員の意見は校長を通してのみ把握していると言っているので、授業等で子どもたちと日々向き合っている教職員の生の声を聞こうとはしないのです。
これは、市教委事務局と各学校の校長との間で親和性が極めて強いことに起因しますが、このことに気づかない限り(あるいは、気づいていても放置している)、上尾の教育行政は正常化できないでしょう。

残念ながら、この請願は文教経済常任委員会で採択されたものの、市議会本会議で1票差で否決されてしまいました。とりわけ否決にまわった議員には、今一度、この請願の持つ意味を考えてもらいたいものです。

“「上尾市独自の学力テスト」に反対する請願をめぐっての動き(その2)” への2件の返信

  1. 上尾の教育レベルはどんどん低くなっている気がします。
    市議のレベルもです。
    某党所属の議員、試験で昇格する某教は指導して欲しい。
    発言内容を文章にして主述確認してから発言したほうがいい
    勤務先で新人に教える指導のひとつです。
    訳のわからない意見を言う若手が多すぎと嘆いています。
    それはともかくとして、テストで学力レベル調べてどうすんの?
    昔ながらの熱血指導ができる教諭が応募してくれるように、
    教諭の管理しかできないまやかしの(言い過ぎですか?)学校の在り方を見直す方が先だろう。
    自分らの頃は問題があったが、まだまともだったと思う。
    現在の現場を見てはいないけれども。
    以上、40年前、中学受験経験者の戯言です。

    1. 40年前のことは資料やデータが無く、わかりません。
      ですので、「昔ながらの熱血指導」が、いつの頃なのか、何を指すのかもよくわかりません。

      私の関心事は、現在の上尾市教委の「不都合な真実」を、いかにわかりやすく市民の方々に伝えるかということです。
      それに加えて、今記事では、公明党の不可解な「意見(果たして意見と言えるのかも疑問ですが)」や、尾花議員の質問と賛否の態度に整合性が無いことをお伝えしました。

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