<男女共同参画推進>は表向き? 実際は「言行不一致」の上尾市長

前々記事【「男女共同参画」はどこに行った?上尾市教育委員会に漂う「後退感」】に書いたとおり、市議会の同意を得たとはいえ、畠山市長は矢野誠二氏を新しい教育委員に任命しました。このことは、「男女共同参画推進の観点からは明らかに後退である」と言えます。

今記事では、さらに深掘りして、こうした畠山市長の姿勢は、公表されている市の条例や基本方針とは異なること、つまり、上尾市の<男女共同参画推進>という方針は表向きのものに過ぎないのではないかという懸念についてお伝えします。

No.217

🔶上尾市の条例には何と書かれているのか
上尾市男女共同参画推進条例」の前文では、男女共同参画について、次のような考え方が示されています(以下、強調のため色替えしています)。

我が国においては、個人の尊重を法の下の平等が日本国憲法にうたわれており、男女共同参画社会の実現を重要課題と位置付け、様々な取組が国際社会の動向と連動して進められてきました。
上尾市では人権尊重都市の宣言を行い、男女共同参画計画を策定し様々な施策を推進してきました。
しかしながら、性別による固定的な役割分担意識に基づく社会の制度や慣行は根強く存在しており、子育てと仕事の両立が依然として困難な状況のもとで出産・子育て期における女性の労働力率が低下するなど、社会の様々な分野で男女間の格差が見受けられます。さらには、ドメスティック・バイオレンスなど人権を侵害する社会問題も生じてきています。
私たちのまちを豊かで活力のあるまちとするためには、男女が互いに尊重し、喜びも責任も分かち合い、性別にかかわりなく個性と能力を十分に発揮することのできる男女共同参画社会を実現していくことが重要です。
ここに、上尾市は、男女平等を前提とする男女共同参画社会の実現に向けて、市、市民及び事業者が協働し、男女共同参画をより一層推進するために、この条例を制定します。

見方によれば、「崇高な考え方」とも言えるこの前文は、上尾市の実態を把握した上で「男女共同参画をより一層推進する」ために条例を制定する、としています。

この条例では「用語の定義」がされていますが、今記事関連の定義を確認しておきます。

第2条 (定義)
(1)男女共同参画  男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うことをいう。
(2)積極的格差是正措置  前号に規定する機会に係る男女間の格差を是正するため必要な範囲において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供することをいう。

これらに基づき、第3条では「基本理念」が示されています。その中で、今記事に関連する条項を見てみましょう。

第3条 男女共同参画は、次に掲げる事項を基本理念として推進されなければならない。
(3)男女が、社会の対等な構成員として、市における施策又は事業者における方針の立案及び決定に共同して参画する機会が確保されること

さらに、市長には、男女共同参画の状況等を公表する義務があります。

第12条 市長は、毎年、男女共同参画の状況、男女共同参画の推進に関する施策の実施状況等を明らかにする報告書を作成し、及び公表するものとする。

これらのことから、市長は、基本的な理念に基づき、男女共同参画の推進に努めなければならず、その状況を公表しなければならないのです。

🔶「デュエットプラン21」との整合性を検証する
上尾市では、2021年度からの5年計画で【第3次上尾市男女共同参画計画~デュエットプラン21~】を策定したということです。
上尾市のHP(人権男女共同参画課)には、この「デュエットプラン21」の「計画書」と「ダイジェスト版」が掲載されています。

「計画書」の冒頭で、畠山市長は次のように述べています。

『デュエットプラン21 計画書 2021.03』「はじめに(畠山市長)」より引用(原文まま)
市では、計画の理念である「みとめ合い 思いやり  ともに輝く!」をスロ ーガンに、「みんなが輝く街、上尾」の実現に向け、市民の皆様や事業者等関係者の皆様と連携、協力しながら、男女共同参画の一層の推進を図ってまいりますので、ご理解、ご協力をお願いいたします。

この市長の巻頭文も踏まえ、「計画書」には、次の記述があります。

こうした施策(事業)があるために、前々記事で紹介した「審議会等における女性の登用状況」に繋がることになります。

この4月からの教育委員の男女比(男性3名・女性2名 → 男性4名・女性1名に後退)から見て、「デュエットプラン21」で市長が述べていることと、実際に市長がおこなったこととは、明らかに整合性に欠けると言わざるを得ません。

🔶「上尾市男女共同参画推進本部員」の男女比は?
上述の【第3次上尾市男女共同参画計画~デュエットプラン21~】の計画書(75頁)には、「上尾市男女共同参画推進本部員名簿」が掲載されています。
この男女比を見ると、男性13名に対して女性は1名となっています(計画策定時)。
女性1名は瀧沢学校教育部長であり、今年度は同職に男性が就いたことから、今年度の男女共同参画推進本部員は全員男性(?)ということになるのでしょうか。とても笑えないブラックユーモアと言えそうです。

◎今記事では、該当する条例や「デュエットプラン21」に掲げられた文言等と、市長による3月議会での新教育委員任命についての整合性は全く無いことを、事実に基づいて検証してきました。

畠山市長は、「デュエットプラン21」の冒頭で「男女共同参画の一層の推進を図ってまいります」と言いながら、実際には女性の教育委員が辞めたあと、男性の教育委員を任命しています。
つまり、実際の人物の名前は、畠山市長の知り合いか、前教育長やその周辺から聞いたと推測できますが、そこで男性の名前が出たということは、その時点で「市長本人、あるいは周囲の誰ひとりとして男女共同参画推進について配慮しなかった」ということになります。
もしも「男女共同参画」ということが頭の片隅にでもあれば、「女性の教育委員」を基本として人選をするでしょう。

この事実ひとつ取ってみても、今記事のタイトル【<男女共同参画推進>は表向き? 実際は「言行不一致」の上尾市長】はまさにそのとおりであり、これからも畠山市長の言動には「表向きと実態に齟齬は無いか」を注意していく必要があります。

“<男女共同参画推進>は表向き? 実際は「言行不一致」の上尾市長” への2件の返信

  1. 私は長い間、市の「教育委員会」なるものに無関心、ないし興味を示してこなかったという反省があります。
     この度学校統廃合問題の浮上により、またオンブズマンさんの指摘により、実はかなりいい加減な行政の見本のように思えてなりません。統廃合の様に市の行政の在り方をも変えてしまうような問題を、何故「きょういく」行政がこれほど権限んをもつものでしょうか?しかも人事が市長の独断とでもいう状況にある今、教育委員会に対する市民の広範囲の包囲の必要を強く感じます。
     いま「市民センター」なる団体が教育のあり方を問い、子供たちのあるべき教育指針を問うていることは、誠に貴重なことだとは思いますが、教育委員会のあり様について市民的立場で改革・改善を求める運動こそ必要に思います。
    大意的に教育委員会の透明性や委員の公選制の運動に後陸む必要こそ、喫緊の課題と思いますが如何ですか?オンブズマンさんの見識をお願い申しあげます。

    1. コメント、ありがとうございます。

      おっしゃる通り、市の教育委員会自体、多くの市民にとっては遠い存在であり、通常は関心を寄せることはないと思われます。
      市民の方で「教育委員会(教育長+5人の教育委員会の合議体)」と「教育委員会事務局(実務を担当する)」との差異がわかるという方はそう多くはないでしょう。

      自分たちの子どもの時のことを考えれば、小・中学校時代にはそれぞれの記憶や経験があることでしょう。
      それだけに、子どもにの成長に関わると言う意味で、学校には大きな責任があります。

      その小・中学校に多大な影響を及ぼしているのが、「教育委員会」と「教育委員会事務局(以下、事務局)」です。
      当ブログで再三指摘しているように、現実には、「教育委員会」は「事務局」からの案を丸ごと受け入れています。
      現在大きな問題になっている「学校統廃合問題」も、市当局の財政削減を強調する「事務局」と、それに対して差し障りのない質問だけする「教育委員会」という構図になっています。
      ですから、「学校統廃合問題」に正面から向き合い、市民と共に考えていく「上尾学校統廃合を考える市民の会」の取組は大変重要です。

      同時に、ご指摘のように、上尾市教育委員会と事務局の問題点を多くの市民の方たちと共有することを目指して、当ブログで様々な角度から指摘したり、警鐘を鳴らしたりしています。
      引き続き、こうした問題に強い関心を寄せていただければと思います。

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