「男女共同参画」はどこへ行った? 上尾市教育委員会に漂う「後退感」

年度初めの4月1日、上尾市教育委員会の臨時会を傍聴しました。傍聴者は2名でした。
臨時会の結果概要」によれば、会議の所要時間はわずか7分間。
しかしながら、今年度の上尾市教育委員会の雰囲気を感じるのには十分な時間でした。

その中でも、私が最も違和感を覚えたのは、臨時会会場での「女性の少なさ」です。
上尾市教育委員会は(昨年度よりも)さらに後退したな」という印象は拭えません。
「女性の少なさ」は、法律(地教行法)にも抵触しているばかりか、上尾市がすすめている「男女共同参画」の方針にも明らかに逆行しています。

今記事では、これらのことについてお伝えします。

No.215

🔶男性ばかり目立つ教育委員会と事務局
昨年度から変更になった教育委員会のメンバーは、西倉剛教育長と矢野誠二教育委員。
この結果、教育委員の構成は男性4名、女性1名となりました。

教育長職務代理者には大塚教育委員が指名されました(傍聴者が入室した時点で、すでに西倉新教育長の隣には大塚崇行氏が座っていました)。

また、事務局職員(教育委員会事務局の課長・次長・部長・図書館長・中学校給食共同調理場所長)の紹介では、12名中女性は教育総務部次長1名のみでした。
つまり、教育委員会と事務局職員を合わせた18名中、女性はわずか2名であり、正直、「男性ばっかりだな」という印象を受けました。

🔶「男女共同参画」を謳う上尾市の明らかな「後退」
上尾市HP人権男女共同参画課の頁には、次の記述が見られます(色替えは強調)。

上尾市の審議会等における女性の登用状況
男女共同参画社会の実現には女性の参画拡大が重要であることから、当市では、第3次上尾市男女共同参画計画 ~デュエットプラン21~ および第6次上尾市総合計画において、令和7年度までに審議会等における女性の割合を40%とする推進目標を掲げております。

 昨年10月1日現在の状況として、最初に掲げられているのが教育委員の男女比です。

5人のうち女性は1人になったので、この表は訂正しなければならないでしょう。
女性比率は20%で、目標の40%の半分。達成状況は「×になってしまいました。

全国的に見るとどうでしょうか。文科省の教育行政調査では、2019(令和元)年度の全国市町村教育委員会における教育委員の女性の割合は、約40%となっています。
また、保護者の割合は約33%となっています。

これらのデータから明らかですが、上尾市は、この4月から、教育委員の女性の割合が下がってしまいました。これは「後退」以外の何物でもありません

🔶「教育委員の年齢・性別の偏り」は法律上からも問題
こうした状況を避けるために、地方教育行政の組織及び運営に関する法律=「地教行法」では、次の規定があります(教育委員に関する部分を引用)。

地方教育行政の組織及び運営に関する法律 ※強調のため色替えと下線あり
第4条第2項 委員は、当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者で、人格が高潔で、教育、学術及び文化に関し識見を有するもののうちから、地方公共団体の長が議会の同意を得て、任命する。
第5項 地方公共団体の長は、第2項の規定による委員の任命に当たっては、委員の年齢、性別、職業等に著しい偏りが生じないように配慮するとともに、委員のうちに保護者(親権を行う者及び未成年後見人をいう)である者が含まれるようにしなければならない。

このように、「地教行法」では、地方公共団体の長(すなわち、上尾市長)は、委員の任命にあたって、「委員の年齢、性別、職業等に著しい偏りが生じないように配慮する」とされています。

では、上尾ではこの法律の規定どおりに配慮されているでしょうか。
性別はおろか、男性の教育委員の年齢は似通っているように見えますので、答は「NO」と言わざるを得ません。
したがって、たとえ市議会で全員が同意したとしても、まさに「大所高所から」見ても、現在の教育委員の人選については、「地教行法」の趣旨からも問題であると言えます。

さらに言えば、地教行法に抵触しているか否かを市民が検証できるようにするために、年齢」「職業」「保護者であるかどうか」については、公表されるべきだと考えます。

🔶新教育長と新教育委員の「資質」は?
西倉氏に教育長としての資質があるかどうか、今後どのような発言をしていくかについては、当ブログでも注意深く見ていくつもりです。
ところが、上尾市教育委員会のHP(トップページ)には、「教育長あいさつ」というメニューがあるのですが、この記事を書いている時点(4月3日午後6時)では、日曜ということもあり(つまり、職員がHPを更新していない)
、「お探しのページを見つけることができませんでした」と表示されてしまいます。つまり、現時点で市民(HPの閲覧者)に向けての教育長就任のあいさつは無し、ということになっています。
【追記】4月4日になって、「あいさつ」が掲載されました。



市教委HPでは新教育長のあいさつが無いので、西倉氏が3月まで再任用校長をしていた太平中での彼の主張や意見を見てみましょう。

以下は私が「あれ?」と思った「太平中学校だより」からの引用です(なぜか9月号が同校のHPでは見当たりません)。もちろん、全体の文脈も大事ですので、引用した部分以外で興味のある方は、同校のHPで全文をお読みいただければと思います。

(太平中学校だより 2021年 6月号) 自衛隊の「ブルーインパルス」が、医療従事者の皆さんを励ますために東京上空を飛んだのが昨年の5月29日でした。あれから1年。様々な努力がなされていますが、感染はなかなか収まりません。

西倉氏が『学校だより』であえて「自衛隊のブルーインパルス」を持ち出す意味が私にはよくわかりません(手を振っていたのは自衛隊病院の職員だったという話もあります)。
ブルーインパルスの話でしたら
、私には次の報道に関心があります。

(読売新聞オンライン 2021.9.9) 東京パラリンピックの開幕に合わせて飛行した航空自衛隊の曲技飛行隊「ブルーインパルス」が噴出したとみられるカラースモークの染料が、基地周辺の民間車両に付着する問題が起き、空自が対応に追われている。

もう一つだけ見てみましょう。2022年3月の「学校だより」です。

(太平中学校だより 2022年 3月号) …我が国は火山の噴火や地震などの自然災害が多く、これまでにも阪神淡路大震災や東日本大震災などの大きな災害を経験してきました。そんな災害を目の当たりにしたとき、多くの私たちはそれほどパニックになることもなく、比較的冷静に行動したり避難したりすることができているように思います。

この記述には「?」がつきます。津波に襲われたとき、被害者の方たちは本当に「さほどパニックになることもなく」冷静に避難したのでしょうか? 私にはそうは思えません。
むしろ、そんなことを考えている暇もなく、津波の犠牲になってしまった方が多かったのではないでしょうか。
あるいは、福島第一原子力発電所の事故から逃れるために、どんな思いで人々は避難をしたのでしょうか。本当に「比較的冷静に行動したり避難したり」できたのでしょうか。私はそうは思いません。東電や政府の原子力政策に対する怒りや理不尽さに対する諦め、様々な思いがそこにはあったはずです。

また、この3月号は3月1日付発行(HP更新日は3月3日)です。この時はすでにロシアによるウクライナへの軍事攻撃が開始されていました。
生徒たちへの平和教育という観点からすれば、いかなる戦争にも反対する、という記述があって然るべきだと私は思います。

さらに、西倉氏は以前学校教育部長でしたので、その時の答弁の内容がどうであったのかについても、今後当ブログでは検証していきたいと考えています。

🔶事務局のメンバーの注目点
小田川史明・前行政経営部長が新しく教育総務部長となりました。
当ブログでは、以下の点について注意をしながら見ていきたいと考えています。

「学校更新計画基本計画」について、今年度、どのような動きをしていくつもりなのか、市議会でどのような発言をするのか、など、「これからのこと」。
また、小田川氏は行政経営部長として市議会等でどのような発言をしてきたのか、すなわち「今までのこと」

今回の市教委事務局の人事異動で私が注目したのは、山内正博新上尾市図書館長です。
なぜ私が注目しているのかと言えば、山内氏は「司書有資格者」だからです。
(このことについては、日本図書館協会『日本の図書館 2022』に掲載されるはずです)

おそらく、上尾市としては10数年ぶりの司書有資格者の図書館長でしょう。
なお、前記事で言及した私の卒業論文については、上尾市図書館には調査の協力をお願いした経緯もあり、山内氏経由で謹呈したので、今後も上尾市図書館に関する問題点は共有できると私は考えています。
今回の人事で、当ブログのNo.103記事「上尾市図書館に望むこと」にも書いた「司書有資格者が図書館長になるべきである」という私の主張(日本図書館協会『図書館の設置及び運営上の望ましい基準』でも同様の主張がされています)はひとまず解決したことになります。

今後は、公表されたばかりの2021(令和3)年度 第2回上尾市図書館協議会会議録でも言及されている、「利用者モニタリング調査」に注目していきたいと考えています。

 

◎今記事では、男女共同参画を標榜する上尾市が、実際には教育委員の人事において真逆の対応をしていること、しかも地教行法に抵触していると考えられることについてお伝えしてきました。
今後とも、市民として上尾市教育委員会の動きに注目していきたいと考えています。
なお、次回の教育委員会4月定例会は4月20日(水)午前9時30分からです(傍聴受付は会議開始15分前から)。傍聴定員は15名の予定であると思われます。