「隠れ教育費」問題-保護者負担の実態を見ようとしない上尾市教委

昨夜(4月22日)のNHK「首都圏情報  ネタドリ!」は、「家計を圧迫?どうする コロナ禍の”教育費”負担」というテーマでした。
番組をご覧になって、「子どもの通う学校でも、いろいろな名目で集金がされています」との感想や、あるいは
「公立小中学校でそんなにお金がかかるのか」と思った方も多いのではないかと思います。

しかしながら、「小・中学校でいったい幾らお金がかかるのか」について、上尾市教育委員会に情報公開してみたら…驚くほど無関心な市教委の姿勢が明らかになったのです。
今記事では、このことに関連してお伝えします。

No.218

🔶番組で扱ったのは「隠れ教育費」の実態
コロナ禍で、家計が苦しくなった世帯は増えていると思われます。
中でも、学校にかかる費用は多額であり、家計を圧迫しています。
昨夜の「首都圏情報  ネタドリ!(左記番組名をクリックするとNHKサイトに飛びますが、見逃し配信を視聴するには、NHKプラスに登録する必要があります)では、まず、ユニクロで販売されている制服について許可をした、さいたま市立大宮北高校(従来の3分の1の価格)や、制服のリユース販売をしているお店の紹介がされました。

※このテーマでの NHK首都圏ナビwebリポート(番組内のQRコードでの紹介)はこちら→「公立中学で入学時13万円出費も! 教育費見直す学校や家庭の最前線

また、番組では、少しでも保護者の負担を減らすために川口市立小谷場中学校が取り組んでいる実践の紹介もされました。
同校では、生徒の室内履きと体育館履きを同じものにしたり、「費用対効果」の観点から見直しをした結果、英語の副教材を減らしたりしています。
これらの取組を主導したのは、同校の事務職員である栁澤靖明氏ですが、柳澤氏の著作に『隠れ教育費』(福嶋尚子氏との共著)があります。

この本は「義務教育は無償、ではない!?」という問いかけのもと、次のようなテーマで書かれています。
*こんなものまで学校指定品/*増えつづける補助教材/*だれが消耗品を用意するのか/*部活動のつみかさなる負担/*学校給食は福祉か教育か/*有無をいわさぬ旅行と行事/*「受益者負担」は正当か など

こうした「隠れ教育費=保護者負担の実態」がメディアで取り上げられるようになったのは、コロナ禍で家計が苦しくなったことが背景にあることは間違いないでしょう。

🔶驚くべき「無関心さ」の上尾市教育委員会事務局
では、上尾市の実態はどうなっているのでしょうか。
「隠れ教育費=保護者負担の集金」の問題については、以前から関心を寄せていたこともあり、昨年の10月に以下のような情報公開請求をしました(開示にあたっては、対象外費目等についての細かい条件を付しましたが、ここでは請求の趣旨を掲載)。

上尾市内の小中学校において、2021(令和3)年度の入学時・在学時に当該小中学校の児童・生徒(保護者)が支払わなければならないとされる諸費用とその項目が判別できる文書・資料等
当該小中学校全員の児童・生徒(保護者)に購入または用意が義務づけられている用品名、およびその用品を購入する業者または店舗が学校指定となっているかが判別できる文書・資料等

 つまり、児童・生徒が小中学校に入学したら、保護者はいったい幾ら支払わなければならないのか」についての情報の開示を求めたのです。

驚くのは、この情報公開請求に対する上尾市教育委員会事務局の対応です。
通常、情報公開請求では、条例にしたがい、請求日を含め15日以内に「公開・非公開」どちらかの「処分」が請求人に示されます。
しかし、上記の請求に対し、2週間後に示されたのは「期間延長通知書」でした。
すなわち、「調べるのに日数を要するため」さらに1か月開示を延長するというのです。
なお、通知書には担当が「指導課」である旨も示されていました。

この状況は次のように整理できます。

*市内小中学校の保護者からの集金については、情報公開請求の時点で市教委事務局(担当はなぜか指導課)は把握していなかったことが露見した。

市内小中学校における保護者負担の実態(どんな名目の費用を幾ら集めているか)については、当然市教委として把握しているのが当然であると私は考えていました。
なぜならば、「経済的な理由から就学が困難と認められる児童生徒の保護者の方へお子さんの就学に必要な経費の一部を援助」するための「就学援助制度」があり(担当=学務課)、援助費目の中に「教材費」が含まれているからです。
つまり、各学校で「教材費」名目で集金をしていることから、それに対して援助をするというのが就学援助制度の趣旨であり、そのためには、「学校ではどういう費目で幾ら集金をしているのか」を把握している必要があるのは当然です。
しかしながら、別途就学援助の基礎資料の関係で情報公開請求した際に、学務課の職員は耳を疑うような発言をしています。
各学校で幾ら保護者から集金しているかは、学務課では把握していません
これは全くおかしな話です。
憲法26条「義務教育は、これを無償とする」の定めのとおり、無償のはずの義務教育において、「教材費」を保護者が学校に払っているという実態があり、その援助のために就学援助制度があるのです。
その意味で、「教材費」を含む保護者が負担する集金額の把握については、学務課が担当すると考えるのが自然です。結局、担当課をどうするかの「たらい回し」の末に、指導課が担当となったと考えられます。こうしたことも合わせ、
上尾市教育委員会事務局の「無関心さ」には、市民として呆れるほかはありません

🔶小学校での集金の問題点は
情報公開請求で入手した文書・資料を見ると、数々の問題点が浮上してきます。
ここでは、
「通学用帽子」を例に見てみましょう。

A小学校 通学帽子 男子用 1,650円  女子用 1,760円
B小学校 黄色の安全帽子 男子用・女子用とも 900円
C小学校 通学帽 フリーサイズ    780円
D小学校 通学帽子(男女別) サイズ S・M・L         1,350円

このように、通学用の帽子ひとつ取ってみても、学校によって集める額が違うのです。
何かおかしな話ですね。

🔶「記名地獄」算数セットも購入品目となっています
何かと話題の「算数セット」については、上述の『隠れ教育費』から引用します。

伝統的かつ有名な補助教材の算数セット。時計、かぞえ棒、数カード、おはじき、ブロック(くり上がり・くり下がりの理解を助ける)、計算カードなどが詰まったセットのこと。多くは1年生でしか使わないため、きょうだいで使いまわすことは可能。
パーツすべてに名前を書かせる慣例が、保護者に試練を与えていることでも有名なセットだ。
(栁澤靖明・福嶋尚子『隠れ教育費』p65より引用)

この「算数セット」については、大半の小学校で入学前の購入を求めています。
ただし、学校によって「セット」なのか、それとも必要な物を単品とするのか、対応が分かれています。

算数セット2,400円(10校)、1,500円~1,900円(6校)、単品の組み合わせ(6校)最低920円

また、鍵盤ハーモニカ「メロディオン」は、小学校22校中、税込5,800円が20校。
1校は5,600円。1校は購入品目の中にメロディオンは入っていません。

このように、学校によって差があることについても、市教委事務局は「無関心」です。

🔶中学校の制服や体育着などの費用は
以下は、市内のある中学校の制服・ジャージ・上履き・バッグについて、学校から示された価格(税込)です(この学校は、女子のスラックス着用について、配布されたプリントには何の記述もありません)。
※制服は、販売業者によっては申し込み時期により、早期割引等があるようです。

制服(男子) 上着 26,280円 スラックス 12,500円
制服(女子) 上着 19,360円 ベスト 8,150円    スカート 14,780円
ジャージ(上) 4,400円+ゼッケン110円= 4,510円
ジャージ(下) 3,740円+ゼッケン110円= 3,850円
半袖Tシャツ 1,760円+ゼッケン110円= 1,870円
ハーフパンツ 2,640円+ゼッケン110円= 2,750円
上履き(体育館兼用?) 3,300円
通学用スポーツバッグ(ボストン) 6,620円
通学用バッグ(リュック型) 8,800円

このように、かなり高額であり、家計の負担を圧迫していると思われます。

なお、「学校生活のきまり」等で「女子の制服は、スカート及びスラックスのどちらも可」としている中学校は、昨年度の時点で5校となっています。

🔶学校集金(徴収金)の問題点は共有されるべき
以上見てきたとおり、児童・生徒の保護者は、給食費以外にも学校集金(徴収金)が多額になっています。コロナ禍ということもあり、これら「学校に納めるお金」は、家計を圧迫していることは明らかです。
しかしながら、上尾市教育委員会事務局は、保護者の学校集金に関心を寄せているとは思えない実態があります。また、例月の教育委員会の会議でも、この問題(保護者負担の実態)が話題になったことはありません。
市教委事務局は、学校での集金の実態を把握し、どうしたら保護者負担を減らすことができるかについて、今こそ真剣に考えるべきではないでしょうか。

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