退勤時刻の平均が23時26分?! 市内中学校で起きている異常事態

前記事に引き続き、上尾市内の教職員の「時間外在校時間」についてお伝えします。
情報公開請求により、市内の中学校(原市中)で、6月の最高時間数が何と200時間を超えている教職員がいることが判明しました。これは明らかに異常事態です。
今記事では、こうした過酷な現実と、市教委が定めている「働き方改革基本方針」との関係について考えていきます。

No.285

🔶時間外在校時間が月に200時間超え?!
以下は、開示された資料「出退勤時刻及び休日勤務状況一覧表」の中から、原市中のある教職員の分を抜き出したものです。

このとおり、平日の「平均退勤時刻」が23時26分となっています。この職員の「平均出勤時刻」は朝の7時23分ですから、1日16時間勤務ということになります。
さらに、休日の「時間外勤務時間合計」は43時間以上。
結局、6月は平日・休日総計で200時間を超えています
この時間外勤務時間の長さは、過労死のボーダーラインと言われている80時間をはるかに超えており、まさに「異常事態」と言えます。

🔶市内の中学校の時間外勤務の実態は
以下は、前記事でも取り上げた「時間外在校時間(2023年6月)」一覧表の内、上尾市内の各中学校の合計の分です。時間外在校時間」が45時間を超えている中学校の教職員は238人います。
勤務実績のある教職員は355人ですから、実に67%(3人に2人)は、月に45時間を超える時間外勤務をおこなっているのです。

🔶市教委が定めた「働き方改革基本方針」では
上尾市教育委員会は、2022(令和4)年9月1日から向こう3年間を対象に『上尾市立小・中学校における働き方改革基本方針』(以下、『基本方針』)を定めています。
この中で、市教委は次の「目標」を設定しています。
つまり、「教職員全員の時間外勤務を月45時間以内にする」ということであり、しかも「令和6年度末までに」と区切っています。
はたして、現在「3人に2人は月45時間以上の時間外勤務をしている」実態にもかかわらず、この目標は達成できるのでしょうか。
市教委は、目標達成のために、次の[4つの視点]を挙げています。
私(当ブログ館主)は、この中で最も重要なのは(2)の「教職員の専門性を踏まえた総業務量の削減」であると考えています。
では、市教委はそのためにどんな対応をするというのでしょうか。
『基本方針』では次のように示されています。

市教委が言う「教職員の専門性を踏まえた総業務量の削減」のための対応
(1)教育委員会が主催する研修及び会議の見直し
①市主催の研修に関して、県主催の研修と内容の重複がある場合、内容の見直しや縮小、実施方法の工夫を行います。(市教委)
②校長会議等において会議の効率化や会議の回数の縮減について検討します。(市教委)

このように市教委は述べていますが、実際に何を見直したのかについては明らかにされていません。また、②については、あくまでも「検討」の範囲にとどまっています。

(2)学校への調査等の削減
①学校へアンケートを実施する際には、既に実施されている調査や公表数値等の活用を検討し、削減に努めます。(市教委)
②学校に対し、市教育委員会の学校訪問について、過度な応対は必要ない旨を働きかけます。また、訪問の際の資料等の簡略化等について検討します。(市教委)
③上尾市立小・中学校働き方改革懇談会を実施し、教員の意見を聴取し、働き方改革を推進します。(市教委)

これについても、①「どんな調査を削減したのか」については明らかにされていません。
また、②の「学校訪問=いわゆる指導課訪問や委嘱研究の発表会」については、決して「学校訪問は原則としておこないません」とは言わないのです。前記事で鴨川小の時間外勤務の多さと委嘱研究の相関性について当ブログで指摘しましたが、委嘱研究は時間外勤務の主要因となっていることは明白です。
③については、そのこと自体、上記(1)教育委員会が主催する研修及び会議の見直し と矛盾します。

(3)関係団体等が主催する大会への参加、コンクール等への出品の縮減の要請
①上尾市が実施している体育的行事について、学校の負担軽減のために担当部署に対し、実施運営を見直すよう求めます。(市教委)
②各団体からの児童生徒への出品依頼については精査し、教員の負担軽減を図ります。(学校)

これらの問題については、①で市教委は「実施運営を見直すよう求めます」と明言しているのですから、どのように求めたのかについては、当ブログでは情報公開請求をおこなっていきます。また、②については、学校任せになっていますが、市教委自体が「学校施設更新計画基本計画」にあたって「絵画作品を募集」したのは矛盾そのものです。

(「上尾市学校施設更新計画基本計画」表紙の絵の説明より)
「未来の学校を描こう!!」絵画作品を募集し、497人から応募された作品のうち、表彰された優秀作品を表紙等に掲載しています。

🔶上尾小・鴨川小・原市中の実態解明が必要
前記事で指摘した小学校の時間外勤務の問題も含めて、当ブログでは次のとおり情報公開請求しました。

(1)一部開示された資料によれば,上尾小学校に[平均出勤時刻]が448分という職員がいます。この時刻に出勤することが常態化しているということは,防犯上の問題はもちろん,「上尾小の校舎に朝早くから明かりが点いているが,何かあったのか」といったように,地域住民等から疑義が生じることも考えられます。そこで,

(1)-1 この職員について,上述の[平均出勤時刻]となった経緯や理由,およびこの職員に対して校長がどのような指導をおこなったのかが判別できる文書・資料等。

(1)-2 このような異常ともいえる出勤時刻は,6月のみにとどまらず,今までの他の月も同様であったと考えられます。そこで,上尾市教育委員会としてこのような状況に対してどのような対応をしたのかが判別できる文書・資料等。

(2)一部開示された資料によれば,小学校の教職員で[平均退勤時刻]が20時台の職員は9名いますが,その内6名は鴨川小学校の教職員です。
 そこで,なぜ鴨川小学校では退勤時刻が遅い教職員が多いのか,その理由が判別できる文書・資料等。
 なお,請求人は,鴨川小学校で退勤時刻が遅い教職員が多い要因のひとつは,市教委による「委嘱研究」の影響であるとの仮説を立てています。ゆえに,「委嘱研究の影響ではない」とするのであれば,請求人の仮説を覆す文書・資料であること。
(3)一部開示された資料によれば,原市中学校に[平均退勤時刻]が2326分という職員がいます。この時刻に退勤することが常態化しているということは,防犯上の問題はもちろん,「原市中は深夜になっても消灯がされないが,何かあったのか」といったように,地域住民等から疑義が生じることも考えられます。そこで,

(3)-1 この職員について,上述の[平均退勤時刻]となった経緯や理由,およびこの職員に対して校長がどのような指導をおこなったのかが判別できる文書・資料等。

(3)-2 このような異常ともいえる退勤時刻は,6月のみにとどまらず,今までの他の月も同様であったと考えられます。そこで,上尾市教育委員会としてこのような状況に対してどのような対応をしたのかが判別できる文書・資料等。

 これらについての情報公開請求の結果は、約2週間後に示されると思われますので、結果が出ましたら、当ブログでお伝えしていきます。

🔶「定時出勤・定時退勤」が当たり前のことになるように
今記事では、上尾市内中学校における過酷な「時間外勤務」の実態について、情報公開請求で入手した資料等に基づいてお伝えしました。
本気で「教職員の働き方改革」をおこなうには、「業務削減」以外に方法はありません。
そのためには、まず、教育委員会の学校への関与(「学校訪問」「委嘱研究」等を含めて)を極力減らすことです。また、「学校の外で起きたことは全てが学校の責任ではない」ことを明確にすることも必要です。
さらに、小学校での英語教育も非常に問題だと考えています。
「教職員が定時に出勤し、定時に退勤するのが当たり前」の状況にしていくために、「教職員の働き方改革」の問題については当ブログでも引き続き取り上げていきます。

“退勤時刻の平均が23時26分?! 市内中学校で起きている異常事態” への2件の返信

  1. 詳細なデータをお示し頂きありがとうございます。

    働き方改革について上尾市教育委員会では目標設定をするだけでなく、以下のような上尾市教育委員会規則を定めています。

    教育委員会は、時間外在校等時間が上限月45時間、年間360時間となるよう適切に管理する(令和2年4月1日施行)

    この規則は、文科省が法的しばりをかけることによって働き方改革を進めようと全国の教育委員会に作らせたものです。

    つまり、現状は法令違反になっているということです。

    この場ではお話し出来ませんが、市議会議員の方々にご協力を頂き9月議会でこの問題につきましていろいろと対策を講じてもらう予定です。

    詳細はメールでお伝えさせて頂きたいと思いますので、ご連絡よろしくお願い致します。

    1. K.K 様

      ご連絡と情報のご提供、ありがとうございます。
      ご指摘のとおり、「上尾市立学校教育職員の業務量の適切な管理等に関する規則」第3条で、(業務量の適切な管理等)が定められています。
      拙ブログでは、この規則を守る(守らせる)という観点で言及をしていませんでした。
      今後、同様のテーマで記事を投稿する際には、この規則が守られているかどうかの視点を重要視したいと考えています。
      引き続き情報をご教示いただける由、どうぞよろしくお願いいたします。

現在コメントは受け付けていません。