「部活動の地域移行」に隠された「不都合な真実」とは
『上尾市における部活動の地域移行に向けた基本方針』(以下、今記事では『基本方針』と表記します)が教育委員会5月定例会で「全員一致・異議なし」で採択されました。
ところが、この『基本方針』には「教員の働き方改革に関する非常に重要な点」に関する記述がありません。これは、「部活動の地域移行」に隠された「不都合な真実」とも言えるものです。今記事では、このことに関してお伝えします。
No.327
🔸教育委員「全員一致」で決定の『基本方針』ですが…
この『基本方針』は、教育委員会指導課の頁に掲載されています。
また、この『基本方針』に関連して、「上尾市立中学校部活動地域移行推進協議会」(以下、今記事では「推進協議会」と表記)が昨年度3回開催されています。
当ブログが着目しているのは、次の点です。
*部活動顧問はどのように決められたのか=「校長の職務命令」なのか。
*校長が命じたのであれば、退勤時刻が過ぎた場合はどう扱われるのか。
(勤務時間・休憩時間・超過勤務との関係)
この点に関して、『基本方針』と「推進協議会」の会議録を見ていきます。
『基本方針』P2 「はじめに」より
このように、『基本方針』では、「部活動の地域移行」を考える際の前提として、「学校部活動は、教職員の献身的な支えによって行われる」とされ、「これまでの指導体制を継続することは、学校の働き方改革が進む中で、より一層厳しいものとになっている」との指摘がされています。
では、「教職員の献身的な支えによって行われる部活動」について、「推進協議会」の委員はどう言っているのでしょうか。
🔸「推進協議会」委員(市内中学校の校長)の発言
以下は、「第3回 上尾市中学校部活動地域移行推進協議会」席上での、市内の中学校長の委員の発言です。
推進委員の校長は、「教職員の中には、部活動が地域クラブに移行することで、モチベーションが下がってしまう教員もいると思います。そうなると、普段の子供たちへの指導にも影響が出るのではないかと心配しています」と発言しています。
しかしながら、これは、本末転倒とも言える発言ではないでしょうか。
『『基本方針』を見てみましょう。
(『基本方針』P8・P9より)
このように、部活顧問の教員の約8割が部活動を負担に感じる・やや負担に感じると回答し、その8割以上が「校務と部活動の両立が困難」であると回答しています。
また、市内のすべての中学校で部活終了時刻を勤務時間終了後に設定しており、放課後に授業準備をする時間は確保しづらいという現状があります。
推進委員の校長は、『基本方針』で述べられているこうした現状を理解したうえで上記の発言をしているのでしょうか? 甚だ疑問です。
🔸市内中学校の闇=不都合な真実
当ブログでは、今記事の最初に述べた視点、すなわち、
*部活動顧問は「校長の職務命令」なのか。
*退勤時刻が過ぎた場合はどう扱われるのか。
以上についての実態を調べるため、市内全ての中学校(11校)を対象に、情報公開請求しました。その結果を簡潔にお伝えします。
①各中学校の教職員の勤務時間
(例:市内A中学校)PC閲覧の方は、最下部にズーム機能があります。
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②部活顧問の決め方(職員会議資料)
=すべての中学校で、年度当初の職員会議で部活顧問が示されることがわかりました。
校長は職員会議を「指示・伝達機関」であると主張しています。その論を借りれば、部活顧問は校長の職務命令ということになります。
③部活の活動時間(昨年9月の例)
市内B中学校(『推進協議会』委員である校長の学校)
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この中学校の教員の勤務時間の割り振りは、上記①の中学校と同じなので、
9/1 を見てみると、
16:00~18:00 = 部活動の指導ですが、
正規の勤務は
16:05~16:30 = 休憩時間のはず
16:45=退勤時刻
では、この先生にとっての、16:05~16:30の25分と、
16:45~18:00 までの1時間15分、合計1時間40分は、何なのでしょうか?
『推進協議会』委員である校長先生に聞いてみたい気がします。
この実態は、決して「学校部活動は教職員の献身的な支えによって行われる」ということで片付けられるような問題ではありません。
🔸「不都合な真実」に迫る
以上の実態があることの裏付けとして、以下の情報公開請求をおこないました。
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「平日の部活動の間の休憩時間がどう扱われているのか」
「部活指導中に退勤時刻になった場合の扱い」
これらについては、「文書不存在」とされてしまいました。
すなわち、市内のすべての中学校の校長は、所属教員を
部活動顧問に命じるが、休憩時間も退勤時刻も無視している
ということになります。
これらの実態については、当ブログでは、引き続き深掘りしていく予定です。
🔸市内の中学校でよく見る光景
以下は、市内のある中学校のフェンスにかかっている看板を、公道から撮った写真です。
撮影者は私(当ブログ館主)で、撮影日は先月です。
掲載した写真の「学校名」等は加工して隠しましたが、実際は公道のほうに向けて、部活の大会等で活躍した個人名が堂々と出されています。しかも、令和4年度の実績の看板が目につきます。
ちなみに、この中学校のHPに掲載されている『学校だより』では、部活の大会の結果についての個人名は伏せられています。明らかに矛盾する対応ですが、個人情報保護の観点からも、こうした看板をいつまでも掲示しておくことには疑問符がつきます。
〇部活の活動時間について
「上尾市立中学校に係る 部活動の方針」の5ページで、活動時間について下記のように規定しています。
平日の活動時間は、2時間を限度とする。また、朝練習は実施しないこととする。なお、下校時刻の限度を以下の通り設定する。
【 4月から新人体育大会まで 】午後6時00分
【 新人体育大会後から1月まで 】午後5時00分
【 2月から3月まで 】午後5時30分
見逃してしまうかもしれませんが、ここに書かれている午後6時というのは「下校時刻」の限度で「活動時刻」の限度ではありません。
つまり午後6時までに下校しようとすれば、校庭から部室に戻り着替えをして下校する時間を考えると20分程度前の5時40分ぐらいには活動を終えていなければなりません。
*このことは教育委員会指導課に確認済みです。
ですので、B中学校の活動終了時間18時の記載が、活動時刻ではなく、下校時刻を指しているのかを確認する必要があると思います。
*一般的には、終了時間を17時40分と記載するのではないかと思うのですが・・・
「上尾市立中学校に係る 部活動の方針」の3ページに書かれていますが、
教育委員会は、教師の学校部活動への関与について、業務改善及び勤務時間管理等を行うとなっています。
教育委員会は学校の報告を確認するだけではなく、本当に6時に下校しているかを全校を回り自分の目で確認すべきだと思います。
コメント、ありがとうございます。
なるほど、ご指摘の点について、さっそく情報公開請求してみましょう。
なお、今記事に掲載した画像(写真)の学校には、この看板設置の経緯等についての情報公開請求をしました。
〇「部活動地域移行推進協議会」委員である中学校校長の発言について
令和5年9月の議会において、教育長は働き方改革について
「学校における働き方改革につきましては、教職員が毎日健康で子供たちの前に立ち、未来
を生き抜くために必要な力を育むために、解決しなければならない最重要課題であると捉えております」と答弁しています。
つまり、教育長は働き方改革は「教員の健康のためでもあるし、子どもたちのためでもある」
としています。
しかし校長の「部活動に伴う教員の長時間労働は子どもたちのためにやむを得ない」という
発言は、この教育長の答弁とは明らかに異なるものです。
この校長の発言はもちろん問題ではあるのですが、それよりも大きな問題は「子どもたちのためには教員の長時間労働はやむを得ない」と考えている複数の校長、教頭への教育委員会の対応です。
市の全校で一丸となって取組むべき働き方改革について、本気で取り組もうとしない校長、教頭に対し、教育委員会は何ら指導をおこなっていません。
教育委員会は、子どもたちのために、働き方改革に対する誤った理解をしている校長、教頭に対し、全力で働き方改革に取組むよう早急に指導しなければならないと考えます。
コメント、ありがとうございます。
おっしゃる通りだと思います。「部活動の地域移行推進協議会」委員である現職の校長は「部活動をやりたがっている教員の要望もある」などと発言しています。
つまり、「やりたい教員は時間外など関係ない」とでも言わんばかりです。また、「働き方改革は子どもの目線で」といった、わけのわからないことも言っています。
「子どもの目線」=「勤務時間を超えてもいいではないか」という考えになるということが分かっていないようです。