教員の「時間外在校等時間(実態は超過勤務時間)」を減らすために

「教員の働き方改革」問題が社会的に認知されて、かなりの時間が経過しています。
上尾市でも教員の「時間外在校等時間」の目標の上限が設定されています。
しかしながら、現状を見ると、その目標は達成できそうにありません。
それはなぜなのでしょうか。
今記事では、「上尾市の教員の働き方改革の目標は達成できるのか」を考えていきます。
(少し長めの記事ですが、資料等も含めて、じっくりとお読みください)

No.347

🔸時間外在校等時間の「目標値」とは
『上尾市立小・中学校における働き方改革基本方針』(R4年9月1日~R7年8月31日)では、次のように目標を設定しています。

このとおり、「時間外在校等時間」を月45時間以内年360時間以内の割合を今年度末(=2025年3月末)までに100%にする、という目標になっています。
果たして、これは可能でしょうか。
私(当ブログ館主)は、とりわけ中学校では、ほぼ無理であると考えています。
以下、その根拠を挙げていきます。

🔸6月の「時間外在校等時間」の実態
   【小学校】

小学校では教職員の約1/3が月45時間超えとなっています。
私が注目したのは、時間外の平均時間が最も少ない平方小です。
なぜ平方小は超勤の時間が他校より少ないのでしょうか。
調べてみると、小・中の校長・教頭代表と教委事務局で構成される「上尾市立小・中学校働き方改革推進委員会」の会議録の中に、そのヒントがありました。

「上尾市立小・中学校働き方改革推進委員会 2024.2.19」 会議録(平方小教頭先生の発言より抜粋)
(前略)あと、来年度は今、5時間の日が週1回なんですが、週2時間にして、先生方が休憩をちゃんと取っても教材研究ができるように、時間を確保しようとしています。
今、休憩時間を明記していて、この時間からこの時間は45分休憩ですよっていうふうに、毎日今日の休憩時間って明記してあって、先生方にも「今休憩時間ですからね」って声をかけて休みたい人は休む。
ただ早く帰りたいから、その間も自主的にちょっと自分の仕事をさせてくださいって方もいるので、それは言わないんですけども。
ちゃんと休憩を取るっていうような流れを作っているので、それも来年度、先生方のリフレッシュの時間と、あと、やっぱりその時間にいろんな交流をしたりコミュニケーションを取ったりして、横の繋がりも作っていけるので、そういう時間はちゃんと確保できるようにというふうに伝えているところです。
(後略)

この会議録全部に目を通しましたが、校長・教頭の中で「休憩時間の確保」について言及しているのは、平方小の教頭先生だけでした。会議録の中にある「ちゃんと休憩を取るっていうような流れを作っている」というくだりは、非常に重要な観点です。

【中学校】

時間外勤務の平均が月45時間を超えていないのは1校のみでした。
表の中では、大谷中の時間外勤務が非常に多いのが目につきます。
平均で月60時間超え、最高時間数は129時間となっています。

(✖✖中学校教職員の昨年度の時間外勤務時間)
では、年間360時間以内を目指すという目標はどうでしょうか。
以下はある中学校の昨年度の時間外勤務の状況です。

この中学校では、昨年度の時間外勤務が年間360時間以内であった教職員が、24名中わずかに4名しかいませんでした。
こうしたデータは、当然教育委員会(事務局)は把握していると思われますが、時間外勤務縮減のためにどのようなアドバイスをしているのでしょうか。
ICT化や教員以外の会計年度任用職員の雇用などが強調されますが、本質的な面での改善がされていないように思われます。

🔸「休憩時間」に部活の時間が食い込んでいる実態
上尾市内の中学校の勤務時間は、おおむね次のような状況になっています。
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休憩時間が分割されていますが、これは市内の中学校全校共通です。

では、部活顧問の教員の休憩時間中の部活動の時間は?
次は、ある中学校の昨年9月の部活の活動時間の状況です。
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ごらんのとおり、平日の部活動は、16:00~18:00となっています。
つまり、前述の教職員の休憩時間(分割された後半)とダブっているのです。

では、平日の部活動において、部活顧問の休憩時間について、市内各中学校ではどう扱われいるのでしょうか? これについても情報公開請求しました。
その結果は……?
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このとおり、市内の中学校では、「部活顧問の先生の休憩時間についてどう扱われているのか」についての文書や資料が無いのです。つまり、何らの配慮もしていないことが明らかになりました。
これは、明らかに法令違反の事案と言えます。このことを解決しない限り、「時間外勤務の縮減」は「絵に描いた餅」になってしまうでしょう。

🔸「教員の働き方改革」は、教育長の本気度が問われる事案
西倉教育長は、教員の働き方改革について、昨年9月の市議会答弁で「学校の働き方改革は最重点事項」と述べているものの、「教員の休憩時間の確保」については、全く言及していません。率直に言って、西倉教育長の発言からは、本気度が伝わってこないのです。
本当に先生方の働き方改革を何とかしようと思えば、学校に実際に行き、自分の目で先生方が休憩を取れているか確認すべきでしょう。それとも、西倉氏が教育長になる前に勤務していた太平中でも、同じように先生方の休憩時間は「有名無実」であったので、「言っても無理」とでも思っているのでしょうか。

今記事では、情報公開請求で入手した資料等に基づき、「教員の時間外在校等時間」の目標(月45時間以内・年間360時間以内)が、このままでは達成できない見通しであることをお伝えしました。
「時間外在校等時間=超過勤務の時間」は、45分の休憩がきちんと取れたということを前提に、「正規の勤務時間より何時間多く在校していたか」の時間数としてカウントされるのは自明です。ですから、休憩時間が取れずに仕事(部活動など)をしているとしたら、それ自体が違法ですし、超過勤務時間のカウントも違ってくるはずです。

もし目標が達成できなかった場合、誰がどう責任を取るのか」も含めて、当ブログでは引き続きこの問題について高い関心を寄せていきます。

“教員の「時間外在校等時間(実態は超過勤務時間)」を減らすために” への2件の返信

  1. 平成23年に発生した滋賀県大津市の中学生のいじめ自殺事件をきっかけに,国で教育委員会制度の見直しの議論が行われ,地方教育行政法が改正され平成27年4月から,新たな教育委員会制度がスタートしました。

    改正された地方教育行政法では、批判が大きかった教育委員会の無責任体制を変革するために「地方教育行政の責任者は教育長である」と明確に定めました。

    上尾オンブズマンさんご指摘の通り、「教員の働き方改革」は、教育長の本気度が問われる事案であり、上尾市の教育の行く末にも大きく関わってくる問題です。

    目標が達成できなかった場合に、地方教育行政の責任者である教育長が責任をとるのか、責任の所在をあいまいにするのかを注視していきたいと思います。

    また、新たな『上尾市立小・中学校における働き方改革基本方針』の数値目標設定をどのようにするかも大変気になるところです。

    1. コメント、ありがとうございます。

      西倉教育長は、市議会答弁で「教員の働き方改革は最重要課題である」と言いながら、その実、部活顧問の教員が法令で定められた休憩を取っているかについては、まったく関心が無いようです。
      各学校では、校長により定められた休憩時間が、部活動と重なるなど、まともに取れていません。
      「上尾市における部活動の地域移行に向けた基本方針」の中でも、「学校部活動は、教職員の献身的な支えによって行われる」とだけ記述されているだけです。考えてみれば、これほど無責任で他人事のような言い方も無いでしょう。
      今後は、ご指摘のように、西倉教育長の責任と、目標達成ができなかった時にどうするのか、注意深く見ていきたいと考えています。

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