教育委員が「学校運営協議会委員」を兼ねることの問題点を検証します
市議会9月定例会が閉会しました。
市民として、終わってから議案を見返すと、「あれ?これは何かおかしいのでは?」と気づくことがあります。
9月定例会では、新しい教育委員の人事案が議案となり、全員の賛成で同意されました。
私(当ブログ館主)は、新しい教育委員がどのような方なのか全く知りませんでした。
実は10月から新しく教育委員に就任した方は、市内の学校運営協議会委員であり(しかも会長職です)、現在も委員を続けているということがわかりました。
今記事では、教育委員会も、議会も、(おそらくご本人も)気づかなかった問題(つまり、市行政にとっての「不都合な真実」)についてお伝えします。
No.375
🔸同意された「教育委員人事案」とは?
9月30日に同意された議案は次のとおりです。
議案に記述されている「地方教育行政の組織及び運営に関する法律第4条2項」とは、次の条文です。
つまり、教育委員就任には「教育、学術及び文化に関し識見を有するもの」であることが必須条件ということになりますが、今までの教育委員就任の状況を見ると、市民からはこの条件が満たされているかどうかはわかりません。
ただし、上尾市において教育関連の何らかの役職についていたかなどについては、教育委員会の会議録等を確認することができます。
調べてみると、新しく教育委員に就任した方は、現在も上平北小の「学校運営協議会」の委員(しかも会長)であることがわかりました。
🔸「学校運営協議会」委員も継続している新教育委員
市内の各学校の「学校運営委員」は、定例の教育委員会の議案として審議されます。
以下は、教育委員会令和7年3月定例会の議案です。
このとおり、西倉教育長名で発出された議案が審議されました。
この中に、上平北小の学校運営委員を任命することが記載されています(新しい教育委員に就任した方を除き、今記事とは関係ないので他の委員名は消してあります)。
任期は令和7年4月1日から令和8年3月31日までです。
10月3日時点で教育総務課に確認したところ、上記の新しい教育委員は、学校運営協議会委員を辞任していないことがわかりました。
つまり、現在もなお、教育委員であり、同時に学校運営協議会委員であることが確認されています。しかも、この方は学校運営協議会の会長でもあることが判明しました。
以下は、今年4月1日の上平北小の第1回学校運営協議会の会議録です。
この会議録により、新しい教育委員の方が上平北小の学校運営協議会の会長職にも就任していることがわかります。
🔸教育委員と学校運営協議会委員を兼ねることの問題点
では、[学校運営協議会の委員]と、[教育委員]とを兼ねるのは、何が問題なのかを見ていきます。それには、学校運営協議会委員とは何かを確認する必要があります。
学校運営協議会とは何かについては、法律で定められています。
冒頭でも触れた「地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)」の該当する条文を確認しましょう(関連項目は太字)。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律 第4節 学校運営協議会 |
第47条の5 教育委員会は、教育委員会規則で定めるところにより、その所管に属する学校ごとに、当該学校の運営及び当該運営への必要な支援に関して協議する機関として、学校運営協議会を置くように努めなければならない。 |
2 学校運営協議会の委員は、次に掲げる者について、教育委員会が任命する。 一 対象学校の所在する地域の住民 二 対象学校に在籍する生徒、児童又は幼児の保護者 三 社会教育法第9条の7第1項に規定する地域学校協働活動推進員その他の学校の運営に資する活動を行なう者 四 その他当該教育委員会が必要と認める者 |
3~5(略) ※今記事とは直接関連が無いため省略します。 |
6 学校運営協議会は、対象学校の運営に関する事項について、教育委員会または校長に対して、意見を述べることができる。 |
7 学校運営協議会は、対象学校の職員の採用その他の任用に関して教育委員会規則で定める事項について、当該職員の任命権者に対して意見を述べることができる。この場合において、当該職員が県費負担教職員であるときは、市町村委員会を経由するものとする。 |
8(略) ※今記事とは直接関連が無いため省略します。 |
9 教育委員会は、学校運営協議会の運営が適正を欠くことにより、対象学校の運営に現に支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められる場合においては、当該学校運営協議会の適正な運営を確保するために必要な措置を講じなければならない。 |
10 学校運営協議会の委員の任免の手続及び任期、学校運営協議会の議事の手続その他学校運営協議会の運営に関し必要な事項については、教育委員会規則で定める。 |
いかがでしょうか。
この条文を読めば、学校運営協議会と教育委員会との関係性がわかります。
ここで、「教育委員会とは何か」についても確認しておきます。
(以下、市教委HP「教育委員会のあらまし」より)
上述の学校運営協議会の法的定義を重ね合わせると、次のように説明できます。
上平北小学校運営協議会(会長は湯本華奈子氏)は、上平北小学校の運営に関する事項について、教育委員会に対して、意見を述べることができます。そして、上平北小学校から出された意見等を、教育委員は合議体の教育委員会として審議することになります。
つまり、
10月から教育委員となった湯本華奈子氏は、このままでは、学校運営協議会の会長として出した意見を、合議体としての教育委員会の一員として審議し決定することになります。 |
これは、どう考えてもおかしいですね。
「自分で出した意見等を自分で審議する」ことになるからです。
まさに市行政・教育行政にとっての「不都合な真実」と言えます。
🔸湯本氏の教育委員 or 学校運営協議会委員の辞任は必須
今記事では、新しく教育委員となった湯本華奈子氏が、学校運営協議会委員(しかも会長職)も兼任していることの問題点について、事実関係や法令に基づき検証してきました。
結論としては、どう考えても、学校運営協議会委員が教育委員を兼務するのは、法的にも無理があることがわかりました。
今までの情報公開請求等により、新しく教育委員を任命する場合には、「候補者」について教育長が市長に提案し、その案を議会にかけるというのが通例です。
そうであれば、当然ですが、次の疑問が生じます。
Q.西倉教育長は、学校運営協議会の法的位置づけを知らなかったのでしょうか?
Q.湯本氏は、教育委員を受けるにあたり、学校運営協議会会長と兼務することに疑問を持たなかったのでしょうか?
Q.この人事案に関わった教育委員会事務局職員、市長部局の職員の誰ひとり「これは法的にも制度的にも兼務はおかしい」と気がつかなかったのでしょうか?
Q.現市長である畠山稔氏は、提案者として確認はしなかったのでしょうか?
実態としては、「誰ひとり、おかしいと思わなかった」のです。
当ブログでは、湯本華奈子氏について、教育委員を辞任するか(その場合、地教行法で定められている定数である4名の教育委員となります)、または学校運営協議会委員のどちらかを辞任することを求めるものです。