これだけある、学校給食の問題点

 上尾市が実施している学校給食については、給食費だけでなく、食育の充実としての時間確保やスタッフの問題などもあります。今記事では、あまり表面に出てこない事実も含めてお伝えします。

記事No.54

■学校給食は教育の一環
 上尾市教委がwebで公表している『上尾の教育』に、「学校における食育の充実」という項目があります(第2章 P75-P78)。そこには、最初に次のような記述があります(原文のまま引用)。

 健康教育の一環としての学校給食は、かつては食糧不足の時代に栄養補給を目的として実施されたが、現在は飽食の時代といわれるくらい物質的には豊かな社会となった反面、欠食や偏食による栄養のアンバランス、肥満傾向児童・生徒の増加、家庭における食生活の変化、食料生産の体験不足による食に対する理解度の低下などのため、健康や食習慣上の課題が指摘されている。そうした中で「生涯にわたる健康づくりの基礎を培う学校給食」としての役割が求められている。

 つまり、学校給食は「健康教育の一環」であるので、各小中学校では「食育」を充実させるということが述べられているのです。このことを前提として、学校給食についての問題点を見ていきます。

■短い給食時間で「食育」は充実できますか?
 各学校の「給食時間」については、おおむね
小学校=45分  中学校=35分 となっています。
 「給食時間」には、給食の準備・配膳・手洗い・片付けを含み、小学校では歯磨きの時間が入っている場合もあります。
中学校では、25分(西中の月曜日)という学校や、南中のように清掃を終えてすぐに給食30分という学校もあります(曜日によって日課が異なる場合も多いので、各「学校要覧」で確認しました)。

 このタイトな時間配分の中で、食育を充実させるとしたら、担任の教師や「食育」の担当者は相当な努力が必要でしょう。「日々の給食指導、本当にお疲れ様です」というほかありません。

■「給食関係従事者」の職種は?
 市内の小学校には、給食物資の発注等や「食育」を担当する「栄養職員」と、給食室で調理業務をおこなう「給食調理員」がいます。
「栄養職員」は、以前は全体の食数で配置されていましたが、現在は学校によって「栄養教諭」「栄養技師」「学校栄養士」のいずれかの職員が配置されています。また、「給食調理員」には、本採用者(退職後の再任用を含む)、嘱託、臨時の各調理員がいますが、賃金や勤務状況等に差が生じているため
2020年4月から導入予定の「同一労働・同一賃金」を待つまでもなく、早期に本採用者の賃金に近づける努力が求められます
中学校については、次に述べる「給食の方式(形態)」とも関係するので、そこで説明したいと思います。

■給食の「方式(形態)」について
 上尾では、小学校は各学校の給食室で調理する「自校方式」です。主食は米飯が月に11回程度(内、自校炊飯が2~3回、残りは委託炊飯)、めんが月2回、あとはパンとなっています。また、「食物アレルギーを有する児童の把握に組織的に努める」とされています。
 中学校給食は〈共同調理場(セントラルキッチン)+自校調理場(サテライトキッチン)〉=「上尾方式」として、全国的にも珍しい方式である、とされています。ただし、各中学校の給食室で勤務する調理員の方は、民間会社(T食品)の雇用となっているため、各学校で把握するのは困難な現状です。衛生上の問題もあり、学校の職員が給食室に入ることはできませんし、もし配膳の際に遭遇したとしても、大きなマスクをしているので、顔も名前もわかりません。また、O(オー)157の関係で、生野菜が献立に出ることはありません。

■給食費について
 学校給食の調理場の形態(直営・委託)状況や給食費等についてのデータは、「埼玉の学校給食」に詳しく出ています。それによれば、上尾市の給食1食当り平均単価を見ると、次のようになっています。
※ 2018.05.01 時点での保護者負担額のみの額。「埼玉の学校給食」P15
 小学校 …… 254.22 円(県内高額順の5位)
 中学校 …… 312.53 円 (県内高額順の1位

 また、市議会の質問でよく出される「県内で給食費が公会計化されている自治体の数」については、最新のデータでは、
 全ての学校が公会計  28市町

 共同調理場のみ公会計    4市
 全ての学校が私会計  31市町
となっています。 ※「埼玉の学校給食」P14

 もし、給食費を公会計とした場合、税金の徴収と同様の扱いとなるため、未納についての督促業務は、上尾市(教委)に移行します。
学校の負担は減りますが、その代わりとして市教委が二つ返事で引き受けるかどうかは、かなり難しいと考えられます。おそらく、実務を担当すると思われる学校保健課が、「人手不足や新しいシステムの構築化に時間がかかるので困難」、とでも言いそうです。

 最も可能性のあるのは、細かい額になりますが、保護者が給食費の自動引き落としのために金融機関に払う手数料の無料化です。金融機関によっては、手数料が1回につき何十円という場合もあるので、それが無料になれば保護者負担は軽減されます。

 あとは、給食費そのものの無償化ですが、「ビジネスゲームの館」記事へのコメントにも同趣旨で書きましたが、上尾では、給食費無償化を自らの政策に掲げているか、または賛成するだろうと思われる議員(会派)の合計人員が12人、あと4人賛成すれば、給食費無償化を含んだ修正案が通ることもあり得ます。財源については、当然どこからかひねりださなければなりませんが、それは市民・議員・市の行政当局が考えれば良いことであり、みんなで知恵を出し合うことも必要だと思います。ただし、第3子以降無償とか、そんな中途半端なことはやめたほうがいいと思います。
もし給食費が無償ということになれば、市教委は督促業務が回ってこないこともあるので、学校教育部長の答弁とは裏腹に、本音では歓迎するでしょう。
12月の糟谷質問でも出されましたが、人口約30万人の兵庫県明石市は、「市長のパワハラ発言」で有名になりましたが、今年の4月から「保護者の所得に関係なく給食費の完全無償化」を実施する見込みです。また、群馬県渋川市では、すでに無償化が実施されています。
要は、「本気でやるかやらないか」ということではないでしょうか。
 W逮捕やブロック塀で地の底まで落ちた上尾市行政。これを打開する策としては、「子育てなら上尾」「給食費は無償です」という「シティセールスのための謳い文句」は有効かもしれません。その場合には、学校給食法よりもずっと上位にある憲法第26条「義務教育はこれを無償とする」をその根拠とすることになると思われます。