「市条例より自分たちのマニュアルを優先した」市教委の恣意的判断
市教育委員会による「いじめ重大事態への拙い対応」が、また新聞報道等で明らかになりました。その主な要因は、市教委が「市ではまだ決まっていない段階のマニュアル」を市の条例よりも優先したこと、つまり市教委による恣意的判断の結果であると言えます。
今記事では、情報公開請求により「一部開示」された資料等を含め、事実関係に基づいてお伝えします。長めの記事ですが、極めて重要な問題ですので、リンク先や資料等に目を通して読んでいただければと思います。
No.385
🔸どのような報道がされたのでしょうか?
今回の「いじめ重大事態」に関しては、1月23日付けの埼玉新聞で大きく報道されました。著作権の関係があり、記事そのものを掲載できないため、ほぼ同一の内容で埼玉新聞web版が出されていますので、リンク先を下に示します。
[埼玉新聞ヤフーニュース版](⇐青字クリックで記事に飛びます)
この記事のタイトルは《小6男児、殴られる…学校で同級生が首を絞め、保護者が動いて警察が介入 以前に他の保護者らがいじめを報告か ”いじめ重大事態”に認定、調査するも…保護者「内容が事実と異なる」》となっています。
🔸市教委の恣意的判断による「拙い対応」
記事の中から、市教委の恣意的判断による「拙い対応」が見えてきます。
それをピックアップします。
| 2024年に埼玉県上尾市立小学校で、当時6年生の男子児童が同級生から首を絞められたり、腹などを殴られたりする暴力行為で警察が介入する「傷害触法事案」が発生し、市教育委員会が「いじめ重大事態」と認定していたことが22日までに、関係者への取材で分かった。市教委は認定後、調査委員会を設置し、児童らに聞き取り調査などをしていたが現在まで、報告書は市長に提出されていない。被害児童の保護者が調査内容を不服として、第三者委員会での再調査を希望している。 |
| …保護者によると、担任教諭が同席していた時間帯もあり、他の児童や保護者がいじめを報告したこともあったが、校長、教頭らの初期対応では十分な聞き取りがされなかったという。 24年7月、首を絞められて頭を机に押さえつけられるといった暴力行為を受けたため、被害児童の保護者が警察に相談。現場検証などの捜査が行われ、触法事案として児童相談所に通告された。その後、市教委がいじめ重大事態と認定して、調査委員会を設置し、聞き取り調査を行った。 |
| 市教委によると、報告書案を作成し、被害児童の保護者に提出した。 保護者は「いじめの内容が事実と異なる」「被害児童の聴取内容が記載されていない」と修正を要求。 「いじめ重大事態の対応は、弁護士、医師など第三者による組織と上尾市の条例にある。市教委の調査は中立性、公平性に欠ける」と抗議している。 |
| 市教委は取材に対し「ガイドラインに従って調査は行った。保護者の所見をつけて市長に報告したい」と話した。被害児童は現在、加害児童と同じ中学校に通っており、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状に悩まされているという。 |
埼玉新聞web版(ヤフーニュース)の内容はおおむね以上ですが、被害者の保護者の主張と、市教委の「弁明」とには明らかに違いがあります。
報道の中の最も重要な点は、被害者の保護者が
「いじめの内容が事実と異なる」
「被害児童の聴取内容が記載されていない」
と報告書の修正を要求し、
「いじめ重大事態の対応は、弁護士、医師など第三者による組織と上尾市の条例にある。
市教委の調査は中立性、公平性に欠ける」
と抗議しているにもかかわらず、市教委が強引に幕引きを図るということは決して許されるものではないということです。
私(当ブログ館主)が入手した情報では、この「いじめ重大事態」は、R6年11月に認定されています。後述するように、「いじめ重大事態に認定された時期」と、「事実関係を調査する主体はどこなのか」は極めて重要となります。
🔸「法律」・「条例」・「方針」・「対応マニュアル」の関係性
「いじめ重大事態」が起きた場合、事実関係の正確な調査が必要になります。
その「調査主体」の法的根拠を整理します。
「法律」…「いじめ防止対策推進法」
※第28条=「いじめ重大事態」と認められる場合、「学校の設置者(=市)」または学校のもとに組織を設ける。
「条例」…「上尾市いじめ問題対策連絡協議会等の設置に関する条例」(第12条)
| 第3章 上尾市いじめ問題調査委員会 |
| 第12条 調査委員会は、法第28条第1項に規定する重大事態について上尾市立の小学校又は中学校における調査が困難な場合に、当該重大事態について調査を行うものとする。 |
「方針」…「上尾市いじめの防止等のための基本的な方針」
( ↑ 青字クリックで全文閲覧可。令和5年11月改訂=最新の方針。以下の文言参照)

※このとおり、学校ではなく(=学校の調査が困難な場合)、上尾市教育委員会が主体になり調査を行う際には、問題調査委員会(=上記条例第12条による「調査委員会」のこと)が調査にあたる、と明記されています。
「対応マニュアル」…いじめ重大事態認定がR6年11月なので、『R6年2月改訂版』適用
※「いじめ重大事態対応マニュアル」の策定・改訂経緯
R5年8月策定/R6年2月改訂/R7年1月改訂
※市教委は「対応マニュアル」を「ガイドライン」の範疇としています。
※報道の「いじめ重大事態」はR6年11月認定=R6年2月改訂版が当然適用されます。
🔸市教委の「言い分」と「拙い対応」とは
以上、「法律」・「条例」・「方針」・「対応マニュアル」の関係を整理しました。
ここで明確になったのは、次の点です。
◎学校での調査が困難な場合は、市の条例および「いじめ防止等のための基本的方針」により、「いじめ問題調査委員会」が「いじめ重大事態」の調査主体になる。
では、再度埼玉新聞web版掲載の「市教委の言い分」を見てみましょう。
| 市教委は取材に対し「ガイドラインに従って調査は行った。保護者の所見をつけて市長に報告したい」と話した。 |
上の市教委のコメントは非常に曖昧です。
上述のとおり、この事案が「いじめ重大事態」に認定されたのはR6年11月です。
また、市教委は自らが作成した「いじめ重大事態対応マニュアル」を「ガイドライン」の範疇に入れています(HP参照)。一方で、文科省は「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン 」(R6年8月改訂版)を公表しています。
普通に考えれば、市教委が言う「ガイドライン」とは、重大事態認定時点での「いじめ重大対応マニュアル」であると考えられます(R7年1月改訂版はまだ発行されていません)。
次に、文科省の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」の中身を見てみます。
| 文科省「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」R6年8月改訂版 |
| (調査を行うにあたっての基本姿勢)P9 学校の設置者及び学校は、自らも調査対象であるとの認識をもちながら、主体的に調査に取り組まなければならない。 |
| (調査組織の種類)P21
|
| (調査組織の構成の検討)P22 調査組織の構成は、従前の経緯や事案の特性等を踏まえつつ、公平性・中立性を確保し、客観的な事実認定を行うことができる体制を検討する。具体的には、第三者となる者を調査組織に加えることのほか、法律、医療、心理、福祉等の専門的見地から充実した調査を行うことができるよう専門家を加えることが考えられる。この第三者と専門家は同じ者であっても構わない。 |
ここで重要なのは、市教委が「実は文科省のガイドラインにしたがって調査をした」という場合に、調査をする教育委員会事務局それ自体が、はたして「第三者性が確保された調査組織であったか否か」ということです。
前記事でお伝えしたとおり、市教委が「第三者性が確保された組織」であるか否かについては、現行の指導主事がすべて学校から異動してきており、いずれは学校に戻る職員であるということを考えれば、どうしても調査が学校寄り・教委寄りにならざるを得ません。
したがって、現在の教育委員会が調査するとなると、「第三者性が確保された調査組織」とは言い難いでしょう。同時に、「文科省ガイドラインにしたがう」とするのであれば、市教委は「自らも調査対象であるとの認識をもちながら」調査をしているのかどうかも問われることになります。
R6年11月に認定された「いじめ重大事態」の調査主体は教育委員会ではなく、条例で定められているとおり、第三者性が確保された弁護士や精神科医、専門家を含めた「いじめ問題調査委員会」なのです。
市教委による「拙い対応」の要因はここにあります。
🔸「条例」より「対応マニュアル」優先という市教委の対応の拙さ
この報道がされる前に、市教委の「拙さ」に気づいた私は、市に次の情報公開請求をしました(担当課は教育委員会指導課ではなく、市の総務課)。
| 請求人は、上尾市における事務の管理および執行にあたっては、法的根拠に基づいてその処理がされるものと考えています。しかしながら、上尾市の一部の実施機関による事務の執行において、条例が定められているにもかかわらず、当該条例が無視されている実態があります。 そこで、上尾市における事務の執行について条例が定められている場合、実施機関(あるいは実際に当該事務を執行する機関)は、その条例を遵守する義務があることが判別できる文書・資料等。 |
この情報公開請求の結果は、「文書不存在による非公開」とされましたが、通知書の備考欄に次の記載がされています。

このとおり、総務課は「条例は地方公共団体がその議会の議決を経て制定する自治立法であり、市の機関は当然に遵守する必要があると考えられる」と明言しています。
このことからも、教育委員会の対応の拙さが浮き彫りになったと言えます。
(なぜ市教委は専門家に任せなかったのでしょうか?)
ここで疑問が生じるのは、なぜR6年11月に「いじめ重大事態」に認定された事案であるにもかかわらず、条例にしたがって、専門家集団である「調査委員会」に調査を任せなかったのか、という問題です。
ここからは、確度の高い推測になりますが、おそらく市教委はR4年のいじめ重大事態の際に「調査委員会」に調査を委ねたものの、「元校長」が入って作成されたその報告書は、被害者側に寄り添ったものではなく、その結果「ダメ出し」されたことが「気に入らない」「自分たちの立場がない」とでも思ったのではないでしょうか。
🔸大半の報告が「学校による調査」という実態
今回の問題は、市教委による「拙い対応」が顕在化したものであることはお分かりいただけたかと思います。ここで、私が入手した昨年度の「いじめ重大事態」の調査主体についての資料を紹介します。

ごらんのとおり、「いじめ重大事態」9件の内、学校が調査主体になっているのが8件、教育委員会が独自に調査主体になっているケースが1件となっています。
つまり、学校が調査主体になっている場合が大半ですが、はたして正確な調査が行われているのかは不明です。
🔸市教委は「いじめ問題調査委員会」に調査を任せるべきです
以上のとおり、報道された今回の「いじめ重大事態」について、市教委は保護者の要望どおり、条例にしたがってすみやかに「いじめ問題調査委員会」を機能させるべきです。
| (現在のいじめ問題調査委員会 各委員の属性) ※任期は令和8年3月31日まで(再任可) |
| 1号委員 1名(弁護士) 2号委員 1名(医師) 3号委員 1名(心理・福祉等に関し専門的知識を有する者) 4号委員 2名(識見を有する者) 5号委員 欠員(その他教育委員会が必要と認める者) 計 5名 |
この 「いじめ問題調査委員会」は、教育長が任命した方々ですが、R6年5月に「顔合わせ」の会合(具体的にいじめ重大事態を扱ったわけではありません)を開催しただけです。
なぜ教育委員会は専門家集団としての「いじめ問題調査委員会」に今回のいじめ重大事態の調査を任せないのでしょうか。
埼玉新聞web版の記事の最後に、次の記述があります。
「被害児童は現在、加害児童と同じ中学校に通っており、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状に悩まされているという。」
この状況は、極めて深刻な事態です。
言うまでもなく、児童生徒には「安心して学校生活を送る」権利があります。
一日も早く、現在の状況が根本的に改善されるよう願うと同時に、当ブログはこの問題に引き続き高い関心を寄せていきます。
