市民として「強烈な違和感」を覚えた上尾市教育委員会5月定例会

5月25日、上尾市教育委員会5月定例会を傍聴しました。
議案・報告は各11件。所要時間は約1時間半(休憩を含む)。傍聴者は4名でした。
「上尾市一般会計補正予算に係る意見の申出について」という議案は、「非公開の会議」とされました(意思決定前だから、とかなんとか理由をつけていますが、どのように意思決定がされるかが市民にとっては重要なのです。しかも過去20年間にわたり、「全員一致・異議なし」を繰り返しているのが上尾市教育委員会の会議です)。

5月定例会を傍聴していて、私は「強烈な違和感」を覚えましたが、今記事では、その理由等についてお伝えします。

No.223

記事のタイトルにある「強烈な違和感」を私が受けたのは、まず、会議の雰囲気です。
定例会に出席した教育長・教育委員・事務局職員計18名中、女性はわずか2名でした。
あとの16名は全員男性。昨年度は女性は4名でしたから、半減しています。
これでは、いくら畠山市長が「男女共同参画を推進します」と言っても、実態とはかけ離れています。それを承知で男性の新しい教育委員を任命した市長は、いったい何を考えているのでしょうか。

🔶「平方幼稚園廃止案」は市教委自らの力量の無さの証明
最初の議事は、<「上尾市立学校設置条例」から「幼稚園」を削る>すなわち、市民の宝である平方幼稚園を廃止するという案を6月市議会に出すというものです。

この問題は、当ブログでは<平方幼稚園問題は、教育長と教育委員会の致命的大失策>(その1~その4)として、一昨年の11月に特集を組みました。
その記事でも述べましたが、端的に言えば、次のようになります。

市議会で2回(2019年12月と2021年6月)にわたって反対されたにもかかわらず、表面は保護者の意見を聞くようなふりをしながら、平方幼稚園の閉園を執拗に画策する教育長や教育委員たちと事務局、それに反対する良識ある保護者や市民という構図が浮かび上がってきます。

市議会で反対されたことを真摯に反省せずに、上尾市教委は「園児を募集しない」という暴挙に出ました。園児募集については教育委員会で決められるからです。言わば「外堀を埋めて」から自分たちの方針を強引に通そうという手法です。

振り返れば、上尾市教委として平方幼稚園閉園を決めた2019年6月の教育委員会定例会(非公開の会議)での次の発言、すなわち、(職名はいずれも当時の職名)
平方幼稚園は一つの役割は終わった」-細野教育長職務代理者、あるいは
閉園することが妥当である(ことでよろしいか)」-池野教育長 などは、真に上尾市の公的な幼児教育を考えているとは到底思えないものでした。
さらに性懲りもなく、今回は閉園案の他に、報告事項として「上尾市立平方幼稚園の歩み」という冊子を提出しています。しかしこれは逆効果だと思われ、ますます「上尾市教育委員会は信頼できない」という状況を生み出しています。

🔶マイナスの効果しか無かった「委嘱研究」
閉園条例に付随して、報告事項として配布された『上尾市立平方幼稚園研究の歩み』には、2ページにわたり「沿革の概要」が掲載されています。これを見ると、驚くことに、その大半が「研究委嘱」や「研究発表」で占められているのです。
ここでは、「研究委嘱」をピックアップしてみます(日付は原文では元号使用)。

1965.04 平方幼稚園開園
1974.07 研究委嘱(昭和49・50年度埼玉県教委)
1985.04 幼稚園・家庭との連携協力委嘱(昭和60・61年度埼玉県教委)
1989.05 幼児教育研究委嘱(平成元・2年度上尾市教委)
1991.05 調査研究協力園委嘱(平成3・4年度南教育センター)
1996.05 幼児教育研究委嘱(平成8・9年度上尾市教委)
1999.05 研究委嘱(平成11年度上尾市教委)
2000.04 研究委嘱(平成12・13年度埼玉県教委・上尾市教委)
2006.04 幼・保と小学校の連携推進事業研究指定(平成18・19年度埼玉県教委)
2013.02 埼玉県指定「親支援モデル施設育成事業研究発表会」
2013.07 上尾市接続期プログラム「アプローチカリキュラム」作成協力
2020.10 新入園児募集停止

いかがでしょうか。いずれHP等で公開される『上尾市立平方幼稚園研究の歩み』の「沿革」をご覧になれば、いかに平方幼稚園が県や市の教育委員会に協力してきたのかが誰の目にも明らかになると思います。
それに対して、上尾市教育委員会の対応は「冷たい仕打ち」とも言えるものです。
市の都合で「研究委嘱」を受けさせておいて、その時の職員は研究発表のために相当なエネルギーを使ったはずです。ですが、市教委はそれに応えるように十分に園児募集の努力をしてきたのでしょうか。答えは明らかに「NO」です。

「委嘱研究」は平方幼稚園を存続させるという面ではマイナスの効果しかなかった、ということになります。「平方幼稚園廃止案」は市教委自らの力量の無さの証明であり、「沿革」の最後の「新入園児募集停止」の記述は、これ以上ないほど冷たく見えます。
私は、市教委が提案している6月議会での平方幼稚園廃止の条例には反対です。施設が老朽化していると言うのであれば、民間の施設(幼稚園)を借用したうえで、職員の経験の蓄積を生かすべきだと考えます。

🔶情報公開請求の実施状況
報告事項に、「上尾市教育委員会が保有する行政文書の公開に係る令和3年度の実施状況について」がありました。これは、どのような情報公開請求がされたかというものです。
市全体の請求件数は次のとおりです。
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教育委員会の受付件数は262件ですが、この内、私が請求した件数は239件です。
ただし、この受付件数の数字は注意して見る必要があります。
たとえば上尾市図書館の〈電子図書館〉に関して、1回に(1)~(13)として請求しています(図書館側が開示しやすいように配慮)。これが13件とカウントされる仕組みとなっています。なお、私が開示請求した情報の「非公開率」は63.4%でした。

情報公開請求の本質は、各部署・担当者が作成した文書・資料は基本的に全部開示されることが当然だということです。もちろん、個人情報には配慮が必要であることは言うまでもありません。同時に、条例の次の文言が重要になります。

上尾市情報公開条例
(情報提供の推進)
第26条 実施機関は、情報公開を総合的に推進するため、行政文書の公開を行うほか、市政に関する正確で分かりやすい情報を市民が迅速かつ容易に得られるよう、積極的な情報提供に努めるものとする。
2 実施機関は、市政に関する情報を効果的に提供するため、市民が必要とする情報を的確に把握するよう努めるものとする。

ともすれば、行政側は情報公開条例のこの文言を忘れがちです。
重要なことは、職員が作成した文書は、市民の財産であるという点です。ですから、職員や担当課が文書や資料を「私物化」することは決して許されないことは当然です。
なお、この報告については、教育委員の誰からも質問や意見は出されませんでした。

🔶看過できない「生徒指導の状況」
また、「令和3年度上尾市立小・中学校生徒指導の状況」が報告されました。
その資料は以下のとおりです。
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この資料では、それまでに比べて、昨年度は「暴力行為」や「いじめ件数」、あるいは「30日以上の長期欠席者数」が増えていることが分かります。
担当課(指導課)は、この理由を「文科省の基準が変わったから」などと説明しています。だとすれば、それまでは「暴力行為」や「いじめ」は見逃していたことになります。
これらのことは、深く検証する必要があります。教師の多忙化により、子どもたちと向き合える時間が少なくなっているとしたら、多忙化の原因となっている委嘱研究や指導課訪問などの見直しを含め、すぐにでも対応を考えなくてはならないでしょう。

🔶教育長職務代理者の関心はシティマラソンの定員?
教育委員の発言を聞いていると、相変わらず差し障りのないものでしたが、さすがに「生徒指導の状況」についての質問が何人かの教育委員から出されました。
ですが、今年度から教育長職務代理者になった大塚委員からの質問は、「シティマラソンの定員は例年と比べて増えたのですか?」などというものでした。よほどシティマラソンについて関心を寄せているのだな、ということだけは分かりました。

今回の教育委員会定例会も、強く「違和感」を覚えた会議となりました。
休憩を含め約1時間半の会議(5月は1回しか開催されていない)で、教育長職務代理者に対する報酬は75,000円。他の4名の教育委員には64,000円支払われます。

6月議会に提出する平方幼稚園廃園条例の理由のひとつに、池田教育総務課長は「税の配分の不公平性」を挙げていますが、それを言うのであれば、私は今回の教育委員会定例会を傍聴して、現行制度における教育長職務代理者&教育委員への報酬こそ「税の配分の不公平」であると考えます。