五輪TV放送の影響 -日々の所感-

このところ、見たいと思うTV番組がありません。理由は明らかで、どこのチャンネルもオリンピックの話題ばかりだからです。
一方、新型コロナ感染者は連日爆発的に増加しているにもかかわらず、コロナ報道よりも五輪報道を優先しているように思えます。
今記事では、そんな話も含めて、「日々の所感」を書いていきます。

No.175

🔶スポーツ専用チャンネル化したTV
TVでニュースを見ようと思っても、情報番組では、どのチャンネルもオリンピックばかりで、「スポーツ専用チャンネル」のようです。
(現在のところ、「まともなニュース番組」は、BS TBSの「報道1930」くらいでしょうか)
しかも、各TV局では、「金メダルの数、日本は過去最高」などとの報道が目立ちます。

あらためて、オリンピック憲章を見ると、次のような規定があります。

オリンピック憲章/ ❻ オリンピック競技大会 
1. オリンピック競技大会は、 個人種目または団体種目での選手間の競争であり、 国家間の競争ではない 大会には NOC が選抜し、 IOC から参加登録申請を認められた選手が集う。

これを見ると、オリンピック憲章の「国家間の競争ではない」という理念と、「日本の金メダルの数が過去最高」とする報道との間には、とても大きな開きがあるのは明白です。

また、今回のオリンピックは「圧倒的に地元日本選手有利」と言われており、柔道などの選手たちは「選手村」ではなく、練習や調整が出来る施設からの「通い」であることは、あまり報道されていません。それらの「東京五輪の不都合な真実」は、後日の別記事でお伝えします。

🔶「日曜美術館」も五輪のため休止。
45年間続いている、NHKのEテレ「日曜美術館」。私は毎週楽しみにしていますが、残念ながら、五輪放送のため、7月25日・8月1日・8月8日・8月25日は休止。8月15日・22日はアンコール放送の予定となっています。
毎回リアルタイムでは見られないので、録画は「毎週予約」になっていますが、オリンピックが録画されてしまいました(即削除です)。

それでも、8月8日の夜には、「無言館の扉 語り続ける戦没画学生」というテーマでの放送があります。ただし、1年前の再放送です。
久しぶりに、以前録画してあったこの番組を見ました。

🔶無言館と窪島誠一郎氏
「日曜美術館」で司会者が訪れる「無言館」は、著作家・美術評論家である窪島誠一郎氏が信州・別所温泉のある塩田平(長野県上田市)に設立。戦没画学生(とくに東京美術学校から召集された若者たち)の作品を展示してあります。東京美術学校は、現在の東京藝術大学です。
館主の窪島氏は、「無言館」設立にあたり、次のメッセージを寄せています(無言館HPより)。

あなたを知らない
遠い見知らぬ異国くにで死んだ画学生よ
私はあなたを知らない
知っているのはあなたがのこしたたった一枚の絵だ
あなたの絵は朱い血の色にそまっているが
それは人の身体を流れる血ではなく
あなたが別れた祖国のあのふるさとの夕け色
あなたの胸をそめている父や母の愛の色だ
どうか恨まないでほしい
どうかかないでほしい
愚かな私たちがあなたがあれほど私たちに告げたかった言葉に
今ようやく五十年も経ってたどりついたことを
どうか許してほしい
五十年を生きた私たちのだれもが
これまで一度として
あなたの絵のせつない叫びに耳を傾けなかったことを
遠い見知らぬ異国で死んだ画学生よ
私はあなたを知らない
知っているのはあなたが遺したたった一枚の絵だ
その絵にきざまれたかけがえのないあなたの生命の時間だけだ
窪島誠一郎
1997.5.2(「無言館」開館の日に)

窪島氏は、画家である野見山暁治氏に触発され、戦没画学生の遺作の収集・保存に奔走します。番組では、修復家の山領まり氏のアトリエも紹介されています。
画家を志していた多くの画学生が戦争へと駆り出された不条理。
番組では、その志を、静かに伝えていきます。

周知のとおり、窪島誠一郎氏の父親は、『飢餓海峡』で著名な小説家・水上勉です。
また、個人的なことですが、窪島氏は私が通った高校(新宿区の海城高校)の大先輩でもあります。たまたま、那須海城高校(現在は閉校)で窪島氏の講演会があることを知り、お話を伺ったことがあります。

信州上田の塩田平には、もうひとつ、窪島氏が館長をつとめる美術館があります。「KAITA EPITAPH(エピタフ=墓碑銘) 残照館」です。
ここは、一昨年閉館した「信濃デッサン館」が母体となっており、夭折(ようせつ=年若く亡くなること)の画家の作品が集められています。その代表は村山槐多ですが、窪島氏の著作『鼎と槐多』も読みごたえがあります。鼎(かなえ)とは、信州・上田在住で、美術の大衆化、民衆芸術運動のなかに身を投じた山本鼎のことです。

オリンピックの放送が片がつくまで、この本や日曜美術館の録画でも見て過ごすことにします。

ところで、ネットを検索していたら【バッハ会長「原爆の日」黙とう呼びかけず】というNewsが目に入りました。
このことについて、広島県被団協・箕牧智之理事長代行は、「黙とうをしてもらえれば全世界に知らない人でも、8月6日の広島の出来事が分かってもらえると思った」と述べ、 また、広島市も「無理のない範囲で呼びかけたつもりだったので非常に残念」とコメントしています。

かの「ぼったくり男爵」は、何のために広島に行ったのでしょうか。
何をか言わんや、です。