〖イングリッシュサロン=英語クラブ〗創設の問題点の検証(2)
前記事のつづきです。
今記事では、市議会の予算特別委員会(3月5日)での、ばんどうともこ議員による質疑のつづきと、それに対する学校教育部長&市長の答弁について、関連する資料等を示しながら批判的観点で検証していきます。
No.316
🔸予算特別委員会での質疑応答から(前記事のつづき)
(ばんどうともこ委員) 何かにつけて「予算が無い」と言われるのに、「習い事レベル」の事業に一人当たりのコストが10万円以上もかかっていることを指摘し、質疑しているのに、応答になっていないと思います。普通に考えて予算の使い方がおかしいと思います。 今でも、英語教育・ALTに年間1億6千156万8千円かかっています。 現在契約しているALTの業務内容に、 *日常の児童・生徒との交流 *各校でおこなわれる学校行事への参加 *清掃指導 *給食指導への参加 と明記されており、子どもたち自ら英語で対話したいと思えば、学校生活の日常でALTと対話する機会は多くあるように思えます。提案内容も「習い事レベル」で、現場の状況を全く把握していない安易な発想の提案だと感じました。 現場で働く中学校の先生からも反対の意見をお聞きしています。今ある部活動の地域移行が優先されるべきだと思います。市民のみなさまからお預かりしている大切な予算です。まだ予算が通っていない段階ですので、今からでも取り下げていただけないでしょうか。 |
(瀧澤学校教育部長) 〖イングリッシュサロン〗を設立することで、文化芸術にかかる新たな地域クラブ活動の多様な選択肢の一つとなり、生徒が自己の興味関心に合わせた活動を選択できる環境整備につながるものと考えております。 |
(ばんどうともこ委員) 本市は英語教育を推進していますが、現在1億6千156万8千円をかけ、全小中学校にALTが派遣されています。また、中学生海外派遣研修に2140万3千円、令和6年度からは保育所の英語体験に1711万円、[英語クラブ]に1333万円。 かなり英語に予算をかけていますが、子どもたちにとっては、英語だけが大切なわけではありません。英語が苦手な子もいます。苦手なことの教育格差も心配です。3年契約にする必要もないと思います。 それよりも、理科室にエアコンが無く、真夏の過酷な状況下で勉強に集中できない多くの小中学校の子どもたちの教育環境を改善するほうが、学力向上にもつながるのではないでしょうか。 限られた予算であるからこそ、あたりまえに必要な事業から予算を使っていただきたいです。[英語クラブ]創設については取り下げていただいと、再度要望して、次の質問をさせていただきます。 |
今回の予算の中で、たとえば「冷却ミスト設置事業」「保育所の英語体験事業」「英語クラブ事業」など、委員会でも意見が分かれる事業よりも、特別教室にエアコンを設置することに予算を充てていただきたいと思います。市民の声が反映される市政運営にするために、市民の声を取り入れた売予算編成にできないでしょうか。 |
(畠山市長) 市の政策課題については、日頃から市民や関係団体などと直接接している各担当部局において、それぞれの課題解決に向け政策立案をおこなっております。また、市民のみなさまからいただく「市長への政策提言」など、寄せられたご意見やご要望は、私がすべて目を通させていただいており、加えて積極的に地域に出向くなどにより多数の要望を伺っております。このような貴重なご意見・ご要望を踏まえ、予算編成をはじめとする上尾市の市政運営に反映しているところでございますが、本市の財政状況等を鑑みて総合的に判断をさせていただいております。 |
(ばんどうともこ委員) すべての意見や要望に目を通していらっしゃるのであれば、子どもたちからエアコンの設置や、トイレ改修に関する切実な要望もお聞きしていると思います。 総合的に判断されている、とのことですが、エアコンが無く真夏の環境下で勉強している子どもたちがいること、老朽化の進むトイレ、実際に大石中学校のトイレを拝見しましたが、和式も多く、本当に古いです。学校の状況を把握していただき、エアコン設置に関しては、生死にかかわる優先順位の高い事業だと考えます。優先順位の低い事業を後に回すなど、総合的に判断していただき、予算編成をしていただければと思います。 [英語クラブ]は、政策企画提案制度による職員の提案だそうですが、職員ではなく、現場の声が反映される、今回で言えば学校の先生方の政策提案を取り入れるべきだと思います。制度の見直しが必要だと思いますが、ご見解をお聞かせください。 |
(瀧澤学校教育部長) 教育委員会といたしましては、部活動地域移行推進事業を推進していくことは、教員の働き方改革と生徒の豊かなスポーツ、文化芸術活動を実現するため学校現場の声も反映した必要な施策であると認識しております。今後も学校現場の声を踏まえて本市教育行政上の課題解決に即した取り組みを政策企画制度に提案できるようにしてまいりたいと考えております。 |
(ばんどうともこ委員) [英語クラブ]が先生方の求めている部活動地域移行ではない、と指摘しています。質疑の応答になっていません。「論点ずらし」の答弁ではなく、制度の見直しについて真剣に考えていただきたいです。 今回、質疑への答弁の多くが「論点ずらし」で、誠実な応答とは思えない答弁ばかりでした。 市民からお預かりしている税金を、もっと大切に使う予算編成にしていただきたいですし、的を得た答弁が出来る事業を考えていただきたいと思います。 |
🔸質疑応答の検証
上記で引用した、予算特別委員会でのばんどう委員と市当局との質疑応答により、次の問題が浮かび上がってきます。今後、さらに深掘りしていく必要がある問題もありますが、現在分かっていることに基づく検証は可能です。
[〖イングリッシュサロン〗予算化の経緯]
*「政策企画提案制度」とは何か(PC画面の方は最下部にズーム機能があります)
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★〖イングリッシュサロン〗は、職員による「政策企画提案制度」の一つです。
情報公開請求により入手した上記資料によれば、今回の「政策企画提案制度」は、17件応募があり、内13件が採択されています。
上記の表のとおり、企画は19点~4点まで得点化され、11点以上が採択されていますが、〖イングリッシュサロン〗は4位となっています。ばんどう議員が指摘する「冷却ミスト設置事業」は1位、「保育所の英語体験事業」は13位に入っています。
もうひとつの資料を見てみましょう。
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これは情報公開請求で入手した「政策企画提案 概要調書」ですが、〖イングリッシュサロン〗の実態と性格がより鮮明になります。
★まず、〖イングリッシュサロン〗とは、《市長公約に掲げる政策に合致するもの=市長の思いの具現化》である、と説明されています。「忖度」が働いたようにも見えます。
★この「調書」には「希望すれば(英語クラブに)誰でも加入することができ」とありますが、定員を20人としています。これは明らかな矛盾です。
★「生徒のニーズに応じたクラブ」とありますが、前記事でもお伝えしたとおり、[英語クラブ]を希望している生徒は、3,204名中わずか1名です。これでも市教委指導課は「生徒のニーズがある」と強弁するのでしょうか。
*市民から提言された企画はどの程度通っているのか
一方で、「市民からの政策提言制度」による市民の提言は昨年度が12件、今年度は19件(1月末現在)です。この中で予算化されているのは、私の見る限りたった1件です。
つまり、提言時期は多少ずれますが、次のように整理できます。
職員からの政策提案=17件中13件採択。
市民からの政策提言=31件中 1件が予算化。
市民からの政策提言への市からの回答は、ほとんどが「参考にします」「検討します」「研究します」というものです。これでは、いくら市長が口では「貴重なご意見を踏まえ」と言ったとしても、結局は市民からの政策提言が軽んじられていることになります。
[現行のALT派遣契約で〖イングリッシュサロン〗は可能か]
これについては、上尾市とジョイトークイーストジャパン=ALT派遣会社(以下、ジョイトーク)との契約を確認する必要があります。
★契約書の特記仕様書には、ばんどう議員が指摘する事項に加え、次の記述があります。
「仕様書、特記仕様書に定めのないことについては、双方で協議し円滑に対処するものとする。なお、変更があった場合は変更契約を結ぶものとする」
つまり、来年度予算に1333万円かけなくとも、ジョイトークとの話し合いで、[英語クラブ]を立ち上げることは可能なのです。ALTが月に1回土曜日に公民館に行くことは、その分の振替休を別の日に取れば十分可能です。
★残念なのは行政経営課の対応です。情報公開請求で面談した際、行政経営課としては「見積額の信憑性について検証をしていない」ことが判明しています。
[これだけ予算をかけて英語力は向上しているのか]
これについての検証方法としては、以下のことが考えられます。
(今後引き続き検証する必要があります)
*ALT費用など「英語にかける予算」についての他の自治体との比較
例:2024(令和6)年度予算
上尾市の児童生徒1人あたりの ALT予算 = 9,888円
さいたま市の児童生徒1人あたりのALT予算 = 5,629円
「それだけの予算をかけて、教育効果があるか否か」については、引き続き検証していく必要があります。
★上尾市の児童・生徒の「英語力」の客観的評価
★小学校の教員で「英語」を教えることについての検証
などについても検証していきます。
これらのことについては、当ブログNo.275記事での「監査委員と市教委指導課職員とのやり取り」が参考になります。
🔸「論点ずらし」ではなく、根拠に基づいた説明が必要です
ばんどうともこ議員が予算特別委員会で指摘しているとおり、「上尾市教育委員会として今優先的に予算化すべき」は、まずは特別教室のエアコン設置などでしょう。
本当に今[英語クラブ]が必要なのか、地域移行すべき部活動なのかについて、論点をずらさずに、根拠に基づいた説明をしていくのが市教委事務局の役割ではないでしょうか。
当ブログでは、今記事でお伝えした内容について、さらに深掘りしていきます。
市長 答弁
「市長への政策提言」など、寄せられたご意見やご要望は、私がすべて目を通させていただいており、加えて積極的に地域に出向くなどにより多数の要望を伺っております。このような貴重なご意見・ご要望を踏まえ、予算編成をはじめとする上尾市の市政運営に反映しているところでございます
職員からの政策提案=17件中13件採択 提案に占める予算化の率 76%
市民からの政策提言=31件中1件が予算化 提案に占める予算化の率 3%
「市民からの提案に占める予算化の率がたったの3%」なのに市民の意見を上尾市の市政運営に反映している ???
瀧澤学校教育部長 答弁
今後も学校現場の声を踏まえて本市教育行政上の課題解決に即した取り組みを政策企画制度に提案できるようにしてまいりたいと考えております。
〖イングリッシュサロン〗を希望したの中学生は、3204名中 1名 0.03%
「わずか0.03%の中学生からの要望」が学校現場の声を踏まえた提案???
一方で「特別教室にエアコンを設置を」という要望は、議会で請願が通り、その後も議員より何回も実現を求められているのに教育委員会は予算化を拒否しています。
文部科学省は教育委員会制度とは
住民が専門的な行政官で構成される事務局を指揮監督する、いわゆるレイマンコントロールの仕組みにより、専門家の判断のみによらない、広く地域住民の意向を反映した教育行政を実現する
としています。
地域住民の意向を無視し続ける上尾市教育委員会は、教育委員会制度を全く理解していないと言わざるを得ません。
神田 様
いつも的確なコメントをありがとうございます。
そうなんですよ。上尾市の教育長と教育委員の劣化は目に余ります。おまけに事務局も……
教育委員会制度の基本はレイマンコントロールであることを知らない(あるいは、知っていても無視している)職員が多すぎますね。
最近あらためて気づいたのですが、市教委事務局(とりわけ指導課)は、職員相互の仕事のチェック体制が欠落しているのではないか、と考えています。
さらに、法令や指針・ガイドラインをきちんと読み込んでいない職員もいますね。
市民から指摘されて初めて理解する、ということが多すぎます。