上尾市図書館に望むこと
前記事で書いたとおり、今年度、「上尾市図書館の今後のあり方」について図書館協議会等で検討がされるようです。今記事では、同協議会の委員や図書館の職員が触れない重要な点についてお伝えします。
※今記事の途中で、日本図書館協会『図書館の自由』ニューズレター(無料購読)の紹介があります。
No.103
🔷「基本理念」&「宣言」の復活を望みます
上尾市図書館HPの新着情報には、「上尾市図書館要覧の最新号(令和2年度)を作成しました」とあります。実はこの『図書館要覧』に2017(平成29)年度まで記載されていた、図書館運営にかかわる基本中の基本とも言うべき大事な視点が今年度も消されたままなのです。
その一つは<上尾市図書館の基本理念>です。
<上尾市図書館の基本理念> |
くらしに役立ち、市民とともに歩む図書館 |
🔶誰もが本と出合うよろこびを感じられる居心地の良い図書館 |
🔶くらしに役立ち、市民の知る権利を保障する図書館 |
🔶市民文化創出の礎(いしずえ)になる図書館を目指して市民とともに歩んでいきます |
そしてもうひとつが「図書館の自由に関する宣言」です。
今後の図書館のあり方を考えるというのであれば、<上尾市図書館の基本理念>に基づいて議論されるべきですし、「図書館の自由に関する宣言」は図書館としての基本姿勢と言えるものです。
なぜこの二つが『要覧』から消されたのか、ブログ筆者にはその意図が分かりません。上尾市図書館の今後のあり方を考えていくうえで、これら二つは基本となるはずです。2017年度から消されてしまった理由については情報公開請求でも「文書不存在」とされ、明らかになっていませんが、何らかの意図が働いたと考えるのが自然です。
「理念」にしても「宣言」にしても極めて重要な視点であり、今後も必要であるとブログ筆者は考えます。図書館の目立たない場所にひっそりと掲示するのではなく、図書館内でもHPでも、目立つところに堂々と掲載すべきだと思います。
ところで、日本図書館協会<図書館の自由委員会>では、年4回「図書館の自由」ニューズレターを刊行しています(購読料:無料)。
最新号はこちら⇒図書館の自由109号(2020年8月)
毎回読みごたえがある内容となっていますので、興味のある方は次のサイトを検索してみてください。⇒『図書館の自由』ニューズレター電子版のご案内
🔷「望ましい基準」についての県内の実態
前記事で、文科省の「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」について触れました。中でも、市町村立図書館の職員についての望ましい配置について、発行されたばかりの『日本の図書館 2019 』によれば、埼玉県内の市立図書館の館長の半数以上は〈図書館司書有資格者〉であることがわかりました。
2019 埼玉県内市立図書館 司書有資格者である館長 |
県内市立図書館(分館分室含む)=143館 |
上記のうち、館長が司書有資格者= 77館(53.8%) |
※複数兼任館があるので、司書有資格者館長の実数は 54名。 |
たとえば、川越(4館)や春日部(3館)の図書館では、それぞれ館長が異なり、全員が司書の有資格者です。また、北本(2館)・富士見(3館)・三郷(3館)も同様です。さいたま市は兼任館がありますが、22館すべて司書有資格者が館長となっています。
上尾市は全部で9館(5分館・3図書室を含む)ありますが、館長は同一人物であり、司書有資格者ではありません。9館も兼任していて司書資格を持っていない館長は上尾だけです。鶴ヶ島も7館兼任ですが、館長は司書有資格者です。
こうした県内の現状を把握したうえで、少なくとも館長は司書有資格者を配置し、同時に職名としての司書・司書補を採用すべきであるとブログ筆者は考えます。そのことが上尾の図書館の今後のあり方を考えていくうえでの重要な点ではないでしょうか。