「留守番も虐待」条例案の正式撤回で見えてきたこと&考えるべきこと

(少し長い記事です。ゆっくりとお読みください)
埼玉県内だけでなく、全国的に批判の的になった「子どもの自宅などへの放置を禁じる埼玉県虐待禁止条例改正案」について、埼玉県議会は10月13日、自民党県議団から提出されていた撤回請求を承認しました。
本会議に先立つ議会運営委員会では、自民県議団が「条例が運用されるに当たっては、趣旨が十分に理解され、広く社会に受け入れられた上で、社会全体として子どもの安全を守る機運につながることが重要だ」と説明したとのことですが、本会議の際には、議会の傍聴席からは、「田村辞職しろ」「責任を取れ」などの声があがっていました(TVのニュースでも報道されていました。傍聴席から県民の声が飛んだこと自体には否定的な報道ではないように思いました)。しかも、この自民党県議団長は、「文春砲」により、自身のスキャンダルをすっぱ抜かれるというありさまです。

今記事では、今回の「子どもの自宅などへの放置を禁じる埼玉県虐待禁止条例改正案」について、私(当ブログ館主)が参考にしたブログの紹介をしたうえで、条例改正反対の署名活動をおこなった「さいたま市PTA協議会」に対して私が感じた「違和感」についてお伝えします。

No.293

🔸ばんどう知子さんのブログがわかりやすい
今回の「条例改正反対」の問題を考える中で、多くの方が様々な意見をエックス(旧ツイッター)やブログなどで発信していましたが、私が最も分かりやすかったのは、上尾市内で政治活動をされている、ばんどう知子さんのブログです。私が知りたい情報がコンパクトにまとまっていて、リンク先も的確だと思いました。
以下、ばんどうさんのブログからこの問題を見ていきます。

①10/9の記事から
ここでは、条例案についてのヤフーのコメント(4名)が掲載されています。
そのうちの1人の方のコメントを見てましょう。

ヤフーの《条例》への反対コメント(ばんどう知子さんのブログより)
シングルマザー、2人の小学生がいます。平日は私がフルタイムパートで仕事のため19時までは留守番させています。学童保育は小学3年生までの地域で19時までなので、仕事帰りでは間に合わないので低学年の下の子は学童を利用せず上の子と留守番させてます。長期休暇も毎日平日は朝8時から夜19時までは留守番です。祖父母は障害があり、県外なので頼れません。ファミサポも見つからない地域です。こんな我が家、虐待しまくりの家庭ということになってしまいます。
子供のことは大好きですし、日々心配で、できることなら一緒にいてあげたいです。ですが、生きるために子供の留守番は仕方ないのです。そんな葛藤を抱えながら留守番させています。発案した方にこんな家庭もあることを知って欲しいです。
それより、社会で子供達を見守っていける仕組みや子育て支援サービス拡充など、もっと必要なことはあるんじゃないかと思います。

これが「条例改正案」への率直な意見だと思います。いかに自民党県議団が提出した改正案が県民の暮らしを直撃するかがよく分かります。

また、福祉保健医療委員会での賛成・反対の議員は誰なのかについても分かります(この表は、多くの方により拡散されていますので、SNS等で目にした方も多いのではないでしょうか)。

②10/11の記事から
《世間が政治を動かした!!! 【条例案】取り下げ》の見出しの記事では、ばんどうさんの考えが述べられています。それによれば、【条例案】取り下げに至ったのは、
*今回、多くの国民がSNSで呼びかけ、議員に電話やメールで抗議し、反対運動された事が大きな要因。
*また、𝕏のフォロワー52万人の元明石市長の泉さんの投稿により拡散された事も大きく影響されている。
とのことです。

↓泉さんのアカウントはこちら↓
https://x.com/izumi_akashi?s=20

ばんどう知子さんのブログで、とりわけ私が共感するのは、次の意見です。

*自民党は日本会議や統一教会といった宗教と関わりがあると言われています。
 家族とは…の考え方が一般市民とは価値観がズレていると感じます。

私もこのことについては深掘りしていきたいと考えています。

🔸さいたま市PTA協議会の対応への違和感
ばんどうさんのブログのように共感できる考えもある一方で、私は「条例改正反対署名運動」でのさいたま市PTA協議会の動きについては違和感を覚えました。

[2つの【条例】改正反対署名活動]
①「2人の子育てをしている」という野沢ココさんは、市民団体「みらい子育て全国ネットワーク」代表の天野妙さんに相談し、10月6日には条例改正案に反対表明するオンライン署名を立ち上げたといいます。


現在は署名終結ということで、最終的には104,114人から署名が集まったとのことです。
署名活動終結にあたっての野沢ココさんのコメントです(抜粋)。

埼玉県児童虐待禁止条例改正案 お礼とご報告 change.org より(抜粋)

10月13日 21:00時点で 合計104,114人の皆様に署名いただきました。
本当に、本当にありがとうございました。 ちょうど1週間前の同時刻に署名をスタートさえていただき、今まで本当に大きな力をいただきました。11日には取り下げの会見となり、本日13日の本会議において正式に取り下げとなりました。(中略)
 また、本日皆様から頂いた署名は自民党県議団田村団長にお手渡しさせていただき、みなさんからの想いをしっかり受け取っていただきました。 その後、意見交換の場を設けていただき、再度本改正案を再提出つもりはないとはっきりご明言いただきました
また、今回の一件を真摯に受け止め、今後の条例案策定時には広く意見を聞くこと等、今までの慣習に習うだけではなく幅広く意見を聞きより良い条例になるよう尽力していただけると、合わせてご明言いただきました。
また、署名のムーブメントと共に、埼玉県内のこどもに関わる団体が意見表明し、県内の賛同団体を募りました(最終的に208団体ご賛同があったとお伺いしています)これらの団体が横に繋がれたことは、埼玉県としても大きな財産になるのではないかと思います。 今日の意見交換では私たちから子育て施策10の提言をご提出させていただきました。私や天野さん、また埼玉県内で活動されている皆さんが作りましたが、大変荒削りなものですが、今後実現可能なものはぜひ迅速に進めていっていただきたいと思っております。(中略)
また、会見でもお伝えしましたが、私にとって今回大変大きな学びは「しょうがないよね」「変わらないよね」で済まさず、「反対」「賛成」や「これはどうなってるの?」と誰かに聞きに行くプロセスを怠ってはいけないと思ったことでした。
議論はあって然るべきです。その中で異なる意見があることを知りそこからさらに深めていくことこそが大切なプロセスではないでしょうか。 友人が「今回署名がこれだけ集まったのは保護者たちの叫びなのではないか」と話していました。本当にその通りだと思います。解決しなければいけない問題は山のようにあります。すぐに解決することは難しいでしょう。しかし、私たち一人ひとりが意識をかえ、困ったことには困っていると、間違ったときには間違っていると、そして、それはとても良いね!と思ったときには良いね!と意見が交わし合える環境はお金がかからずすぐに実行できることかもしれません。
あらためて、多くのみなさんのお力に突き動かされるように1週間過ごして参りました。ひとえに皆さんお一人お一人が力を下さった結果だと思っております。本当にありがとうございました。
(後略)
署名発起人 野沢ココ

太字の箇所は、私が大事だと思ったところです。

②さいたま市PTA協議会の反対署名

10月13日 18:00現在のオンライン署名数は 29,625(〆切)
上記①の野沢ココさんが立ち上げた署名の翌日から、さいたま市PTA協議会独自で署名活動に入りましたが、結局、数の上では、かなりの開きが出てしまいました。
なぜ、さいたま市PTA協議会は、野沢ココさんが始めた署名の他に自らも署名活動をおこなったのでしょうか?

🔸「さいたま市PTA協議会」の「闇」
「さいたま市PTA協議会」は、最近まで自らの組織における「使途不明金」や、それに伴う退会(2020年度から今年にかけて少なくとも7校)で話題となり、新聞でも報道されています。たとえば東京新聞は、2023年6月15日付けで「さいたま市PTA協議会 使途不明金問題3か月 説明なく募る不信 退会する学校も」という記事を電子配信しています。
この記事では、「さいたま市PTA協議会で一千万円を超える使途不明金の問題が発覚して三カ月が経過した。三月に書面で内容を公表して以降、役員らは公の場で詳細を説明していない。協議会は五月に第三者委員会を設置。調査終了まで書面以上の説明を控える立場を崩していないが、組織への不信などから協議会を退会する学校が出てきており、十七日に開催予定の総会では、何らかの説明が求められそうだ。」とあります。

もともと、PTAは任意団体であり、各学校における加入・脱退は個人の意思が尊重されなければなりません(このことは、当ブログの以前の記事でもお伝えしました)。
同様に単P(各学校)が各自治体のPTA協議会に加入するか脱退するかについても、単Pの意思が尊重されなければならないのは当然です。

使途不明金問題&退会問題を抱える「さいたま市PTA協議会」のHPには次の記事が掲載されています。

さいたま市PTA協議会のHPより
「埼玉県虐待禁止条例改正案に対する反対意見書を手渡しました」
本日、10月9日(月・祝)朝9時30分頃、埼玉県虐待禁止条例改正案に対し、反対の意見書を田村たくみ県議(埼玉県議会自由民主党議員団 団長)に手渡しました。田村議員より、今回の主旨の説明を受け、PTA協議会として保護者の意見を代表し、意見書を手渡しました。
田村議員からは真摯に受け止めて、検討していただけるとのお約束をいただきました。
まずは、とりいそぎ、ご報告いたします。

これを読んだとき、私は、何よりも「PTA協議会として保護者の意見を代表し」という文言に疑問を持ちました。
*「保護者の意見を代表し」って何ですか?
*加入・脱退は自由なのに代表って?
*退会が続いている組織にもかかわらず、代表することができるのですか?

SNSでは何の疑問も無いかのように「さいたま市PTA協議会 すごい」などの意見もありますが、私と同様、疑問に思った方の意見も見られました。

🔸「闇」の向こう側を考える
今回のように、あまりにも酷い改正案を自民党が出してきたことで、多くの方が「それはないだろう」「撤回せよ」ということによって、外形的には反対の人々が一丸となったように見えます。そのこと自体は「市民の力」が結集したものとして評価できます。
一方、埼玉県のPTA連合会は自身のHPで「埼玉県PTA連合会は、政治に中立であるため、児童虐待禁止条例について特定の運動などを行うことはございません」と述べています。これはこれで「そうかな?」と疑問が生じます。

私は、県のPTA連合会も、さいたま市PTA協議会も、今回の条例改正案については、野沢さんが立ち上げた反対署名サイトを紹介し、全面的に協力する姿勢を示すべきであったと考えています。

さいたま市PTA協議会のように、不正経理や使途不明金の問題を抱えている団体が「条例改正に反対です」「独自で署名サイトを立ち上げました」などと言っている場合には、その団体の「闇」の向こう側についても思いをめぐらすことが必要なのではないでしょうか。
今回と同様のことが起きた場合に備えて、そうした検証も重要なことだと考えます。