上尾市の財政を考える「市民学習交流会」で出された意見を深掘りする

10月15日、市民学習会『上尾を”子育てを応援する街”に ~市財政から考える~』に参加しました。講師の渡辺繁博さん(埼玉自治体問題事務局長)の話は、自治体の財政について初めて聞く事柄も多く、大変参考になりました。
学習会の最後に、参加者からの意見交流がありました。今記事では、学習会で私(当ブログ館主)が学んだこと、また、学習会席上で出された意見について、私なりに考えたことをお伝えします。

No.294

🔸自治体財政について学んだこと
[類似団体比較カード]
講師の渡辺さんによれば、「この資料を見れば、その自治体がどういうことに力を入れてきたのかが分かる」のが、総務省公表の「令和3年度類似団体比較カード」です。
上記青字をクリック → 埼玉県 →  (P18)上尾市 に進みます
これによって、全国の自治体の財政状況を見ることができます。
(現時点では、「令和3年度決算状況」が最新の資料です)

中でも、兵庫県明石市と上尾市との比較では「(公共施設の)維持補修費」の構成比が、上尾市は明石市の8分の1しかないことも読み取れます(学習会に参加されていた方のブログでは、学習会の資料の画像付きで詳しく紹介されています)

[〖量入制出の原則〗と〖量出制入の原則〗]
聞き慣れない用語ですが、意味は次のとおりです。

〖量入制出の原則〗とは ⇒  意味は、「収入にあわせて支出を考えなさい」ということであり、家計で考えると分かりやすいです。

〖量出制入の原則〗とは ⇒  意味は、「支出に応じて収入が確定されること」です。自治体財政の原則であり、そもそも財政とは公的な需要、社会のニーズを充足するための存在です。まず、財政民主主義の原則のもとでこれらのニーズを確定する必要があります

つまり、自治体の財政は、家計と違い、「まず、どのような政策を実行していくか」ということが重要になります。

[財政力指数が高くない東秩父村で給食費が無償]
〖財政力指数〗が高いほど、財源に余裕があるといえます。財政力指数が 1.0 を超えると、地方交付税が交付されません。
令和4年度の埼玉県内の地方交付税不交付団体は戸田市・和光市・八潮市・三芳町です。

一方、東秩父村の〖財政力指数〗は 0.20(上尾市は 0.89)ですが、「給食費無償化」が実現できています。以下は東秩父村のHPからの引用です。
すなわち、自治体の長や当局の「やる気」の問題だということがわかります。
残念ながら、上尾市では市民にとって分かりやすい使いみちがされていないようです。

給食室や特別教室へのエアコン設置の請願が市議会で全員一致で採択され、一般質問で質問されてもエアコンを設置しない姿勢でいる市長や教育総務部長は、意地になっているとしか思えません。市税の使いみちは、市民の要望を生かした形で使うべきです。

🔸学習会で出された意見を深掘りする
[形骸化している?「学校運営協議会」]
学習会の終盤、講師から「保護者やPTAが、学校のこの箇所を修理・修繕してほしいなどの要求を出すべきではないか」との提言がされました。
これを受けて、学習会に参加されていた市内のある小学校のPTA会長さんの意見。
「(本来は保護者や地域住民が学校運営に参画するための)学校運営協議会であるが、校長からの伝達の場になっていて、修繕の要求などはできない実態がある」
このことについて、当ブログでは深掘り(検証)することにしました。

観点としては、「上尾市学校運営協議会規則」により、次のように定められていることについて実効性があるか否かです。

上尾市学校運営協議会規則
(学校運営等に関する意見の申出)
第4条 協議会は、対象学校の運営全般について、教育委員会又は校長に対して、意見を述べることができる。

校舎や設備の修繕などについて、学校運営協議会として教育委員会に対して意見を述べている痕跡があるかどうか、これが検証のポイントになります。そこで、

*「学校運営協議会(公開の会議)の傍聴者は何人いるのか?」
*「学校運営協議会での、学校(または市教委)への修繕等の要望は?」
ということについて、各学校のHPを閲覧しました。

「学校運営協議会」をHPのメニューに載せていない学校もあります(会議録を探すのが大変でした)が、その真意はわかりません(HP担当者が超多忙なのかも)。

[結果は?]
今年度の「学校運営協議会」は各学校とも3回程度開催されていると思われます。
会議録は各学校とも公開されていますが、バラつきがあります(中には、今年度の学校運営協議会の会議録をまだ公開していない学校もあります)。

傍聴者数は公開されていますがー
*今年度の学校運営協議会の傍聴者は、ほとんどの学校でゼロ。
⇒ただし、小学校2校で各1名の傍聴者あり。

学校(または市教委)へ修繕等の要望をしている記録は無し。
⇒ただし、委員が安全点検をおこなった学校は1校(小学校)ありますが、市教委に要望しているかは不明です。

市内全部の学校のHPを閲覧し、深掘り(検証)した結果、以上のことがわかりました。
中には、運動会の参観をもって「学校運営協議会」としている学校もあります。
残念ながら「校舎や施設の状況を点検し、市教委に要望する」という発想は無いようです。

[会議録の中にはこんな記述も]
(今記事では、学校名はマスキングしてあります)

委員の「働き方改革は…生徒の目線が入っていない印象」という発言の真意は今ひとつよくわかりません。この発言を受けて、校長が「教員については、二極化の傾向がある」と述べているのはどういうことなのでしょうか。明らかにさせる必要があると思います。

🔸学校配布「修繕料」が少なすぎるのに余しているという不可解
*市内のある小学校(19学級)の昨年度の「修繕料」の予算配分額は 992,000円 です。
この額では、学校の校舎や設備を直すために専門業者に頼めば、すぐに消えてしまいます。
しかしながら、この学校は、昨年度の修繕料を使い切っていません
予算残額は 63,655円となっているのです。
どうしてこのようなことが起きるのでしょうか

あまり知られていませんが、学校の予算配当をめぐっては、次の問題があります。
予算の決裁権が校長ではなく、教育総務課長にあること
(つまり、何をするにも市教委にお伺いを立てる)。
そこで、学校では、使いやすいお金や「寄附」に頼ることになる
(PTAの「学校協力費」は学校にとって「ATM化」している現状)

そもそも、校長は市教委にきちんと修繕の要望をしているのか?

以上の問題を含めて、学校をめぐる「お金」の問題は、後日記事にする予定です。

◎今記事では、市財政を考える学習会に参加して私なりに考えたことなどについてお伝えしました。とりわけ、〖量出制入の原則〗について学ぶことができたのは収穫でした。
また、最後に述べたように、学校をめぐってのお金の問題は、あまり表面に出てこないこともあり、今後、実例を出しながらお伝えしていこうと考えています。

“上尾市の財政を考える「市民学習交流会」で出された意見を深掘りする” への2件の返信

  1. 渡辺さんから地方自治について一番最初に教えて頂いたのが、下記の地方公共団体の役割です。

    地方自治法

    第一条の二 地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。

    その施策を行うことによって「住民の福祉の増進」が図られのかという視点から、自治体の施策を評価していくことが重要だと思います。

    1. いただいたコメントを読んで、今回 or 先回の財政問題学習会で、講師の渡辺さんが確かに「地方公共団体の本旨は、住民の福祉の増進を図ること」とおっしゃっていたことを思い出しました。
      重要な視点をご指摘いただき、ありがとうございます。

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