糟谷質問で暴かれた、市教委の不都合な真実(1) -「委嘱研究の闇」-

12/19、糟谷珠紀氏の市議としての最後の質問を傍聴しましたが、「子どもたちに豊かな未来を」と題しての、舌鋒鋭い内容でした。ブログ筆者が関心を寄せている「委嘱研究」の弊害や修学旅行問題など、まさに「上尾市教委の不都合な真実」が暴かれた市議会となったと言えるでしょう。今記事では、糟谷質問の中から市教委による「委嘱研究の弊害」について、次回の記事では「修学旅行」についてお伝えします。

記事No.47

■委嘱研究の実態と市教委の「負担軽減」策とは?
 糟谷議員のこの質問についての、伊藤潔 学校教育部長の答弁は以下のとおりです。

 「上尾市内の全小中学校が3年サイクルで2年間の委嘱研究に取り組み、授業や放課後の研修会など、計画的に研究を進めております。教育委員会では、研究発表の方法や、配布する資料を簡素化することなど、負担軽減の視点から各学校を指導しています

 この答弁に対して、糟谷議員は次のように指摘しています。

「委嘱研究をした学校の『研究紀要』の中で、校長がこう言っています。 —5・6年生にあっては、週2時間の外国語活動の授業をやり抜いてまいりました。この実績は、業務の負担軽減には逆行しながらも、教員としての使命感と授業力の向上につながったものと考えています—」

 糟谷議員は質問で「委嘱研究をした学校」と言っていますが、このブログの読者はお分かりだと思いますが、これは上平小のことです。

 上尾市教委の「委嘱研究」を受けた上平小(石塚昌夫校長)が作成した『研究紀要』冒頭の校長あいさつで「業務の負担に逆行しながらも(外国語活動の授業を)やり抜いた」と述べている問題は、当ブログでもすでに指摘したところです。それがこちらの記事です。

■「失笑」が漏れた伊藤学校教育部長の答弁
 では、「委嘱研究」を受けた上平小では、どういう事態になっているのでしょうか。糟谷議員が示したのは、上平小のある職員の今年10月の「時間外勤務の時間数」です。

 なんとその時間数は、1ヶ月 141時間38分

 これは、「過労死ライン」と言われる「1ヶ月 80時間」をはるかにオーバーしている時間外勤務の時間数です。間違いなく、委嘱研究発表の準備に相当時間が取られたうえ、日常的な業務も重なったためにこうした長時間の時間外勤務になったのでしょう

これに関しての糟谷議員の質問:

「こういうことを放置していいのですか、と私は問いたいのですね。委嘱研究がこうした実態であることを見たときに、長時間勤務につながっているという要因もあることを市教委のほうは認識しているのでしょうか。いかがですか?」

この質問に対する、伊藤潔学校教育部長の答弁

委嘱研究がご指摘のように過度の負担にならないよう各学校で計画的にすすめられるように努力しているところでございます」

 ほぼ満席の傍聴席にいた私は、この答弁を聞いて、思わず「は?何言ってるの?すでに過労死ラインを超える勤務をしている状況なのに、全く他人事のような答弁だな」と思いましたが、他の傍聴の方も同様の感想を持ったようで、「この部長さん、何を言っているんだろう?」というような、呆れたような「失笑」が漏れていました。

 糟谷議員は、次のように続けています。

 「(職員が)過度の負担にすでになっていることはお認めいただきますよね。で、こういうのをしっかり見てください。教育委員会がこの学校はこれをやって、というのがはたして良いのか、もっと希望制を取ったら良いのじゃないかとか、もっと自主性に任せたらよいのではないかとか、もっと委嘱研究のあり方、とりくみの見直しなど改善できる余地があると思うんですね。なので現場の声をしっかり聴いていただきたいということを申し上げておきます」

■ブログ筆者の主張を取り入れた質問と市教委の姿勢
 糟谷議員の質問は、次回以降の記事でお伝えする修学旅行の問題と合わせて、ブログ筆者の日頃の主張を取り入れた質問でした。その点で大変感謝しています。
しかしながら、市教委側の答弁は看過できません。『研究紀要』は研究発表の前に教育委員会事務局に届けられたはずですし、上平小を訪問したであろう「来賓=通常は教育長や教育委員」も見ているはずです。上平小に行かずとも、教育長や教育委員は上平小の『研究紀要』に目を通していると考えるのが極めて自然です。
『研究紀要』の校長あいさつ文に「業務の負担に逆行しながらも」という文言があることについて、教育長も、教育委員も、学校教育部長も、指導課長も、学務課長も、指導主事も、誰も「これは良くないな」という指摘をしないとすれば、まさにそれは現在の上尾市教育委員会の「不都合な真実」と言わざるを得ません。