議会質問の決め手は「現場主義」と「市民と問題意識を共有すること」
3月10日に上尾市議会の一般質問が始まりました。その初日に、私(当ブログ館主)が高い関心を寄せて記事にしている「学校が抱えている問題」が取り上げられました。
議会を傍聴して、「鋭い質問だな」と思わせる一般質問の決め手は「現場主義に裏打ちされた質問」と「市民と問題意識を共有すること」だとあらためて思いました。
今記事では、私が関心を寄せている問題についての坂東知子議員による一般質問と、上尾市教育委員会や教育長の答弁の様子などについてお伝えします(少し長いです)。
No.357
🔸どんな問題が取り上げられたのでしょうか?
私が議会で傍聴したのは坂東知子議員の質問です(青字クリックで、3/10の市議会一般質問中継録画に飛びます。坂東議員は5番目。学校関連の質問は 24:25 頃~ です)。
重要と思われる質問が幾つもありましたが、とりあえず今記事でお伝えする問題は「中学生の海外派遣事業」、「中学校の修学旅行」、「PTA学校協力費と学校予算」、「上尾市内の給食施設の現状」です。
以下、それぞれの質問と答弁について見ていきます。
🔸「中学生 海外研修派遣事業」関連
この問題の本質は、「わずか22名の[英語好きな生徒]のために、多額の予算が投じられていること」への疑問です。
坂東議員の質問では、以下の資料が示されました。
このとおり、中学生海外派遣の当初予算額が毎年度増加しています。
当ブログのNo.352記事でもお伝えしましたが、執行額については以下のとおりです。
*「R6 中学生海外派遣研修事業」の予算執行額= 21,084,816 円
今年度の参加者は生徒が22名・引率者は5名の計27名。
= ひとり当たりの予算額(公費負担額)は、780,919 円 となっています。
坂東議員の指摘のとおり、参加できる生徒は、たった22名。
派遣対象となる今年度の上尾市の中学校3年生の数は1848名。
つまり、98.8% の生徒たちは、実際に行っていないので、海外派遣とは無縁なのです。
質問に対し、学校教育部長は「派遣生徒たちが研修の学びを上尾市の全中学生まで広げるまでが研修です」と答弁しています。一方、ごく普通の生徒たち、つまり英語かあまり得意でない生徒たちにとっては、「自分とは関係ない、選ばれた生徒の話」(見方によっては、自慢話)となることが懸念されます。それでは本末転倒です。
この質問は「市民と問題意識を共有しての一般質問」と言えます。
私は以前から、情報公開請求の際に市の職員と面談するなどの機会をとらえて「失礼ですが、英語は堪能ですか」「今まで生きてきて、英語が話せなくて本当に困ったことはありますか(=海外旅行で Cola,Please と言っても通じなかったなどというレベルではなく、仕事や日常生活で英語が話せなくて困った経験があるかないか)」という趣旨の質問をしてきました。
それに対し、私の質問に答えてくれたほとんど全員の職員が、手を振りながら「英語は得意ではありません」「(英語が話せなくとも)困ったことはありません」と否定します。
これらのことも含め、私は、畠山市長に次のことを問いたいと思います。
なぜ一部の生徒を優遇して英語を話せるようにしたいのですか?
今後は「本当に5名の引率が必要なのか」「他の自治体と比較して引率者が多いのは《お手盛り》ではないのか」という点や、海外派遣を経験した卒業生の「その後」(後追い)も含めて、この問題については当ブログも検証をしていきたいと考えています(来年度予算減を余儀なくされた「イングリッシュサロン」の問題もここに含まれます)。
🔸中学校の修学旅行についての問題(費用・行き先等)
これについては、当ブログのNo.353記事とNo.354記事でもお伝えしました。
問題の視点は次のとおりです。
*同じ行き先(京都・奈良)で費用の差が大きく異なる理由は?
*2校が 大阪・関西万博に行くというが、安全面は担保されているのか?
まず、費用の問題です。
今年度の中学校修学旅行の費用の差は?
73,040円(高) ー 55,838円(低)= 17,202円の差
(※行き先はどちらも京都・奈良です)
金額の差がなぜ生じるのか。なぜ市教委は放置しているのか?
学校部長は答弁で宿や食事の差、観光コースの違いと説明していますが、これほど差がつくものでしょうか。
真の理由は、上尾市教育委員会として「費用の上限や目安」を設けていないからです。
坂東議員の質問で、この点が明らかになりました。
それゆえに、学校教育部長の「保護者の経済的負担を考慮したうえで、負担が適正なものとなるよう、学校に対して指導している」という答弁の信憑性が問われてきます。
当ブログでは、「保護者の経済的負担について、どのように学校に向けて指導しているのか」について、徹底的に情報公開請求していくつもりです。
次は修学旅行で市内2校が大阪・関西万博に行くことについての問題です。
メタンガスの爆発を起こした万博会場の安全性や熱中症対策について、学校教育部長は「旅行業者と打ち合わせをしているから大丈夫」という答弁でしたが、聞いていて、深く考えた答弁とはとても思えませんでした。
極めつけは、教育長の答弁です。かなり驚かされました。
以下は、ばんどう議員の質問と西倉教育長の答弁です(中継録画の文字起こし)。
(坂東知子議員による教育長への質問) |
大阪府吹田市では、2025年1月29日、休息場所および待機場所での熱中症対策や安全に団体行動をするための導線および点呼・待機場所の確保が不充分であるという理由から、学校の行事として参加を見合わせています。そのほか、交野市・熊取町・島本町でも参加見合わせとなっています。 具体的に懸念点が挙げられる中、上尾市では大阪万博への見学に行くことに問題は無いとお考えなのか、教育長のご見解をお聞かせください。 |
(西倉教育長の答弁) |
本市における修学旅行につきましては、生徒たちの安全面を十分考慮したうえで計画し実施されるものと認識しており、問題はないと考えています。 |
傍聴していて、思わず「え~~?」と声を出しそうになったくらい、西倉教育長の「何も考えていない」答弁に驚きました。
教育長の答弁の前に、学校教育部長は「安全面は旅行業者に確認している」と答弁しています。つまり、旅行業者に丸投げしており、万博協会は「下見は開幕までできない」と言っています。このようなことで本当に大丈夫なのでしょうか。
万博の安全性について、教育長の見解を求めた質問は、上尾市議会で初めてです。
まさに、教育長の本質が露わになったと言える答弁でした。
🔸PTA学校協力費と学校予算
坂東議員の質問は、まず、PTAの学校協力費が「学校で取っている新聞の購入費」などに使われている実態を明らかにしたうえで、問題点を指摘しています。
この質問には、次のような背景があります。
★学校配布(ただし校長には執行権は無い)の予算が少ない
↓
★PTAの学校協力費(=保護者負担)に頼っている
↓
★公費で支出しなければならない費用も保護者負担となっている
(典型的な例)
⇒ 教室のカーテンのクリーニングを保護者に依存している
(市の予算「役務費」で支出可能なのに ……)
詳しくは当ブログ No.333記事「保護者への教室カーテン洗濯依頼、なぜ市予算で支出しないのですか?」もごらんください。
また、坂東議員は『草加市立小中学校におけるPTA協力費取扱いガイドライン』を示したうえで、上尾市もPTA学校協力費についてガイドラインを設けるべきである、と指摘しました。これに対し、教育総務部長は満足に答えることが出来ませんでした。
坂東議員の質問の秀逸な点は、この質問のために学校に行って、実務担当者である学校事務職員に直接実態を聞いていることです。
このような「現場主義」の質問によって、いかに上尾市教育委員会が「保護者負担の軽減」についての問題意識が無いかが明確になりました。
当ブログでも、引き続きこの問題についての情報公開請求を続けていきます。
🔸小学校の給食調理室の早期の改修を
質問の中で、「上尾市内の学校給食施設の現状」が提示されました。
このとおり、西小・東小ともに大変な状況のもとで日々給食を作っているのです。
市教委が今すぐ取り組むべきは、こうした給食調理室や設備の改修です。
また、次の資料も示されました。
給食調理室の老朽化が何年も続いたにもかかわらず、
いかに上尾市が給食調理室の改修について何もしてこなかったか
が明らかになりました。示された資料により、50年以上給食調理室を放置してきた上尾市に対して、それよりも短い期間で給食提供方式を統一した久喜市の状況が見えてきました。
※では、給食調理室の不具合や老朽化が進んだと思われる、今から10数年前~20年前くらいの時期に、市民から「給食調理室を直してほしい」との要望が出されていたのか、出されているとしたら、市としてどのように対応したのか?
これについては、市民からの要望についての「特定歴史公文書」を情報公開請求することで経緯が少しは見えてくると考えています。
坂東議員の質問によって、議員として視察に行き、実態を把握したうえで一般質問で取り上げることにより「市民と問題意識を共有すること」ができるのだとわかりました。
🔸深掘りしてこそ議会の質問
今記事では、坂東知子議員の一般質問の中で、私が関心を寄せている問題についてお伝えしました。今回の質問で、上尾市と教育委員会が抱える問題が可視化されたのではないかと思います。
同じ日に学校問題について質問した議員もいましたが、中継録画を見て、質問の深みが無く、鋭さも感じられませんでした。やはり、データ(主張の裏付け)を示しながら質問することで、市民の共感を得るのだとあらためて思いました。