「いじめ重大事態」に関して市議会「全員協議会」が開催されました
12月25日、上尾市議会の「全員協議会」が開催されました。
協議の中身は、「上尾市いじめ問題再調査委員会の調査報告書について」です。
今記事では、私(当ブログ館主)がこの協議会を傍聴して考えたことなどについて、事実や資料等に基づいてお伝えします。
No.382
🔸12/25の「全員協議会」の中身とは?
「全員協議会」は、議会から要請がされたもので、欠席者1名を除く全議員が出席。
関係職員として、市長・副市長・教育長・市長政策室長・総務部長・総務部次長・総務課長・学校教育部長・学校教育部次長・指導課長および事務局職員が出席し、2時間以上にわたって議員からの質疑や意見が出され、それについての教育委員会(再調査報告書の一部については総務課)が回答する、という中身でした。
傍聴者は私が見た限り6名(プラス新聞社)であったと思います。
配布された資料は、現在市のHPで公表されている『上尾市いじめ問題再調査委員会調査報告書』、『被害生徒及びその保護者からの所見』と、総務課が作成した『上尾市いじめ問題再調査委員会調査報告委の概要』の3種類でした。
私はこの協議会において、次の2点について注目しました。
*「教育長が被害者に直接謝罪していないという事実を明らかにするのか」
*「上尾市では、R4年のいじめ重大事態の問題に加えて、現在何件のいじめ重大事態を抱えているのか」という点です。
なお、ここで、用語の理解のため、2つの委員会を整理しておきます。
★「原調査委員会」=「いじめ問題調査委員会」
⇒上尾市では、年度当初に委員を任命していることから、R4年の「いじめ重大事態」が起きる前から組織としては立ち上げられていました。市の条例により、学校の調査が困難であったため、R4年の事案を調査をしました。庶務担当は教育委員会事務局。
★「再調査委員会」=「いじめ問題再調査委員会」
⇒市長の諮問に応じ、調査委員会の結果について再調査する組織で、庶務は総務課。
=再調査委員会の調査は、R4に起きた[いじめ重大事態]が初めてのケース。
🔸『再調査報告書』の概要とは
市長の諮問により再調査委員会が作成した『再調査報告書』。総務課がその<概要>をまとめています(下記参照。全5ページ。最下部の ⇓ クリックで改ページできます)。
再調査報告書の概要
この<概要>は、「再調査委員会」による関係機関への「評価」がどういうものであるのかが、わかりやすくまとまっています。
具体的には、7-1中学校の評価は、「悪い」「非常に悪い」「事実と異なる」となっていて、いかに学校の対応が不適切であったかがあらためてわかります。
7-2 市教育委員会への評価についても「非常に悪い」「悪い」となっています。
一方で、7-3「原調査委員会」への評価は、おおむね「適切」とされましたが、中で「不適切」とされたのが「面談による調査」です。ここで注目すべきは、次の項目です。
| ⇒市教育委員会の調査への関与は避けるべきところ、関係生徒6名を事務局(職員)が聴取した。 | ➡ 不適切 |
私は、「いじめ重大事態」が起きたときには、再調査委員会によるこの指摘、すなわち「市教育委員会の調査への関与は避けるべき」が極めて重要だと考えています。
🔸議員からの質問
「いじめ重大事態」に関わる問題について、12名の議員から様々な観点からの質問が出されました。その内の幾つかを挙げてみます。
| ※以下の回答 ⇓ の中で(市教委)とは、学校教育部長または指導課長による回答のことです。 | |
| Q.(議員) 再調査報告書は、学校の対応が不適切であると強い言葉で書いてある。しっかりと学校内で議論されていたのか。マニュアルだけでは対応できないのでは? | A.(市教委)学校には、生徒指導委員会が週1回や教育相談部会が月1回位あるが、R4年の事案では、いじめに特化しての対応がされていなかった。 |
| Q.(議員) <概要>P2に「第三者とは言えない委員がいた」の意味は? | A.(市教委) 校長OB(=元校長)が調査委員会のメンバーの一人として入っていた、という意味である。 |
| Q.(議員) 今後は元校長は入れないのか。 | A.(市教委) 今後はガイドラインに沿って、委員の中に元校長は入れない。 |
| Q.(議員) <概要>P2に「学校の調査報告書はどこの確認も受けていない」とあるが? | A.(市教委) 「校長が主体になって作成した報告書」であるから、学校内のどこの確認も受けていないという意味である。 |
| Q.(議員) 市教委は指導助言をしたが、(その後の)フォローはしなかったのか。 | A.(市教委) 失念していた。 |
| Q.(議員) 被害者側は担当者や教育長の処分を求めている。今後の予定はどうなるのか? | A.(市教委・教育長) 現在精査中である。 ※同様の質問には何度か「精査中」を繰り返す。 |
| Q.(議員) この問題について『再調査報告書』が出されるとなった10/15以降、教育長は被害生徒・保護者に直接謝罪をしていないのか? | A.(教育長) 直接謝罪はしていない。 |
| Q.(議員) 市教育委員会の調査への関与は避けるべきとあるが? | A.(市教委) 重大事態マニュアルにより対応している。 |
| Q.(議員) 保護者は調査主体(機関)を選択できるのか? | A.(市教委) 学校の設置者(=市、または市教委)が決める。 |
| Q.(議員) いじめ重大事態は、現時点で何件あるのか? 調査主体は? | A.(市教委) 12/25現在5件(小3件・中2件)で、4件は学校主体、1件は教育委員会が調査をおこなっている。 |
これらの質問から、私が注目した上述の2点については回答がありました。
やはり教育長は被害者側(被害生徒・保護者)に直接謝罪をしていないこと、
また、今現在継続している「いじめ重大事態」は5件であるということ。
以上がそれぞれ明らかにされました。
🔸条例を優先すべきではないのか
教育委員会の回答の中で、わかりにくい点があります。
「保護者は調査主体(機関)を選択できるのか?」という質問に対して、学校教育部長は「学校の設置者(=市、または市教委)が決める」と答えています。
あらためて、市の条例の該当部分を確認してみます。
| 「上尾市いじめ問題対策連絡協議会等の設置に関する条例」 第3章 上尾市いじめ問題調査委員会 |
| 第12条 調査委員会は、法第28条第1項に規定する重大事態について上尾市立の小学校又は中学校における調査が困難な場合に、当該重大事態について調査を行うものとする。
※第12条の文言にある「法第28条第1項」とは、「いじめ防止対策推進法」で定められている「いじめ重大事態」を指します。 |
この条例に定められているとおり、上尾市立の小学校又は中学校における調査が困難な場合には、第三者機関である「いじめ問題調査委員会」が調査主体となるのです。
その場合には、当然被害者側の意向も尊重されるべきなのは当然です。
したがって、学校教育部長の回答には強い違和感を覚えます。
🔸現在全く機能していない「上尾市いじめ問題調査委員会」
市の条例で「重大事態について上尾市立の小学校又は中学校における調査が困難な場合に、当該重大事態について調査を行うものとする」と定められている「上尾市いじめ問題調査委員会」ですが、R6年5月に一度だけ「顔合わせ」をおこなった以外は、全く機能していません。この事実は、情報公開請求によって判明したものです。
このとおり、R6年9月からR7年11月まで計12件の『いじめ重大事態報告書』が教育委員会定例会の議案になっています(ただし傍聴不可・会議録は非公開)が、ただの一度も「上尾市いじめ問題調査委員会」が関与=調査をしたという事実は無く、機能していないのです。
この公文書が公開されたことにより、「本当に学校だけで被害者が納得できる報告書が作成されているのか?」という疑問が生じます。
🔸「マニュアル」の改訂と「条例」との関係
市教育委員会の説明でわかりにくい点は、
今も継続しているR4年の「いじめ重大事態」に関わる問題と、
再発防止を含めて「今現在のいじめ重大事態」の問題
以上が混在していることにあります。
法律と条例、マニュアルの関係を整理してみます。
①いじめ防止対策推進法(法律:国会)
最上位。 すべての条例、方針、マニュアルはこの法律に違反してはならない。
![]()
②文科省ガイドライン(国の指針:文科省)
国の法律に基づく指針。地方自治体はこれを遵守する義務がある。
![]()
③上尾市いじめ問題対策連絡協議会等の設置に関する条例(市条例)
市議会で可決された市の条例。法律と同等の法的拘束力を持つ。
市が自ら定めた強力なルール。
![]()
④上尾市いじめ防止基本方針(方針:市と教育委員会)
法律や条例に基づき、市長と教育委員会が合意している公式方針。
条例に次ぐ優先順位。
![]()
⑤上尾市いじめ重大事対応マニュアル
教育委員会が作成した内部向けの手順書。順位としては最下位に位置する。
上位の法律・条例・基本方針に反することは許されない。
つまり、いじめ重大事態が起きた場合、適用される条例や、その時点でのマニュアルの記述がどうであったのかの確認が必要になります。
市教委は、このことを整理したうえで、協議会の席上で回答すべきでした。
🔸全体を通して見えてくる問題点等
以上、『再調査報告書』、全員協議会での議員からの質問、それに対する市教委の回答、その基本原則となる法律や条例、方針やマニュアルなどの関係性を見てきました。
ここであらためて、問題点を整理したいと思います。
①市教委が「調査」することの問題点
再調査委員会の評価として「市教委の調査への関与は避けるべきところ、関係生徒6名を事務局(職員)が聴取した」と明確に「不適切」と指摘されているにもかかわらず、現在も教育委員会が主体となって調査を進めている事例が存在している点は、制度的に大きな矛盾であると言わざるを得ません。
②優先すべき根拠等は何か
条例・基本方針・マニュアル等について、「どれが優先されるべきなのか」について、教育委員会は明確に述べていません。おそらく、教育委員会内部でも整理されていないと思われます。その結果、「マニュアルに基づいて対応している」という説明が繰り返され、その時点で有効であったはずの条例や基本方針との整合性について正面からの説明がなされていないとの印象は免れません。
③調査主体の選択の問題
「保護者は調査主体を選択できるのか」という議員からの質問に対して、学校教育部長は「学校の設置者(市または市教委)が決める」と回答しています。
しかしながら、条例第12条の趣旨からすると、学校での調査が困難な場合には、第三者機関である「いじめ問題調査委員会」が調査主体になると読むのが自然であり、設置者の裁量が無限定に認められるかどうかは、むしろ法解釈の専門家の意見も含めて、検証されるべきではないでしょうか。
④市民による検証が可能であるべき
私が「いじめ重大事態」に関する情報公開請求の席上で市教委事務局の職員に「現在のいじめ重大事態は何件なのか」と質問したところ、「答えられない」とのことでした。その一方で、「全員協議会」で同様の質問が議員からされると回答する、という教育委員会の姿勢は問題点の一つとして挙げられます。
もちろん、個人情報は守られる必要があるのは当然ですが、市民として上尾市の教育の問題や教育行政のあり方について検証をしていく際に、必要な情報は提供されるべきです。
今後市民が「いじめ問題」や教育行政の施策についての検証が可能なのか、については、大げさではなく民主主義の根幹の問題とも言えます。
「いじめ重大事態」の問題に関しては、とりわけ、令和7年1月の「いじめ重大事態対応マニュアル」改訂以前の事案について、改訂後のマニュアルを前提とした説明が混在している点は、きちんとした検証が必要であると考えます。
🔸教育長は「精査」を待つことなく被害者に直接謝罪を
さらに私は、非常に疑問に思っている点があります。
なぜ、教育長は直接被害者に謝罪をしないのでしょうか?
すでに何度か当ブログでも指摘しているとおり、西倉教育長は、R4年の「いじめ重大事態」の被害者側(被害生徒と保護者)に直接謝罪していません。
今回の市議会の議員「全員協議会」席上でも、「精査してから」と繰り返す教育長。
「精査に要する時間の目安は?」と聞かれても「分からない」と答える市教委。
こうした態度をあらためて、すぐに被害者側に謝罪することが必要です。
🔸教育長から市長への「回答」について
現在、市の総務課のページには以下のように掲載されています。

これは、市長から教育長に「再調査委員会調査結果を踏まえた再発防止策を実施しているか」の確認と、教育委員会からの回答となっています。
リンク先は、それぞれ青字をクリックすれば文書を見ることができます。
市長➡教育長「上尾市いじめ問題再調査委員会調査結果を踏まえた再発防止策の実施について」
教育長➡市長「上尾市いじめ問題再調査委員会調査結果を踏まえた再発防止策の実施について」
◎それぞれの「再発防止策」が本当に効果があるのかについては、別途検証が必要です。
🔸いじめ重大事態への対応は条例に基づいておこなうべきです
現在市内の学校で継続している「いじめ重大事態」は5件であることが、議員の質問により明らかにされました。
上で述べたとおり、「いじめ重大事態」への対応は、法律・条例に基づいて行われるべきであると私は考えます。
市教委が作成した「いじめ重大事態対応マニュアル」はR7年1月に改訂されています。
そうであれば、それよりも前の「いじめ重大事態」への対応は、改訂前のマニュアルを参考にしたはずですし、何よりも法律・条例が優先されるべきであることが大原則となります。
当ブログでは、引き続きこの問題について高い関心を寄せていきます。