政権に忖度するメディアのあり方が問われる「報道の自由度68位」

毎年「報道の自由度ランキング」を公表している「国境なき記者団(以下、RSF=仏語略称)」によれば、2023年は日本は世界180か国の内、68位であり、今月開催される「G7サミット」各国の中で最下位という状況です。
今記事では、RSFが公表している「報道の自由度」に関し、いかに日本のメディアが政権に忖度しているか、また、メディアのあるべき姿についてお伝えします。
(記事の後半でツイッターの投稿画面が表示されます)

No.273

🔶「報道の自由度」G7の中で日本は最下位
この「報道の自由度 2023」は、「国境なき記者団」のサイトで閲覧できます。
報道の自由度は、以下の観点から順位がつきます。
( )内は世界180か国中の日本の順位。
「政治指標」(83位)
「経済指標」(47位)
「立法指標」(68位)
「社会文化的指標」(105位)
「セキュリティインジケータ」(60位)
「グローバルスコア=世界順位」(68位)

以下はG7各国のグローバルスコアです(国名はRSFのサイトでの邦訳)。

カナダ(15位)
ドイツ(21位)
フランス(24位)
英国(26位)
イタリア(41位)
米国(45位)
日本(68位)

ちなみに、1位~5位は、ノルウェー、アイルランド、デンマーク、スウェーデン、フィンランドであり、北欧とその近隣諸国が上位となっています。

🔶日本に対する評価は?
では、日本はどう評価されているのでしょうか。以下はRSFの説明です(日本語の訳文に不十分な点が見られますが、なるべく原文を生かすようにしました)。

日本についての総合的評価
議会制民主主義である日本は、報道の自由と多元主義の原則を支持しています。しかし、伝統、経済的利益、政治的圧力、ジェンダーの不平等の重みにより、ジャーナリストは政府に説明責任を負わせる役割を十分に発揮することができません。

ジャーナリストが政府に説明責任を負わせる役割を果たしていないのは、「伝統(この場合、「慣習」の意でしょうか)」「経済的利益」「政治的圧力」「ジェンダーの不平等」の重みであると分析しています。まったくその通りであると言わざるを得ません。
次に、「政治的背景」を見てみましょう。

日本における政治的背景
2012年のナショナリスト右派の権力の台頭以来、多くのジャーナリストは彼らに対する不信感、さらには敵意の風潮について不満を漏らしてきました。「キシャクラブ」(「記者クラブ」) のシステムは、確立された報道機関のみが政府のイベントにアクセスし、当局者にインタビューすることを許可しており、ジャーナリストを自己検閲に誘導し、フリーランサーや外国人記者に対する露骨な差別を表しています。

RSFは現政権与党が「ナショナリスト右派」であることに加え、日本の「記者クラブ」のシステムについて的確な批判を加えています。

ランキング105位の「社会文化的背景」について、RSFは次のように述べています。

日本における社会文化的背景
日本政府と企業は日常的に主流メディアの管理に圧力をかけており、その結果、汚職、セクシャルハラスメント、健康問題(Covid-19、放射線)、汚染など、デリケートと見なされる可能性のあるトピックについて厳しい自己検閲が行われます。
2020年、政府はCovid-19の健康対策を言い訳にして記者会見に招待されるジャーナリストの数を大幅に減らし、大規模な国家危機の場合にその「指示」に従うことになっている組織のリストに公共放送NHKを含めました。

この分析も全くその通りだと考えられます。政権に都合の悪い報道は避けていることは、疑いようがないでしょう。
後段の「記者会見における記者数」については次のような指摘があります。

🔶官房長官会見の記者席数はコロナ禍と同じって…?
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行したこともあり、多くの事柄がコロナ前に戻りつつあります。一方で、大型連休明けに、共同通信は「官邸、会見の人数制限は継続 書面回答は取りやめ通告」という記事を発信しました。

記事によれば、「引き続き感染防止が重要だとして、コロナ禍前の半数に満たない規模にとどめた。首相会見で質問できなかった社への書面回答については、取りやめると内閣記者会に通告している。」ということです。
まさに、RSFが言うところの「政府はCovid-19の健康対策を言い訳にして記者会見に招待されるジャーナリストの数を大幅に減らした」たことを継続していることになります。
しかも、このことについて、TVのニュース等では解説付きでの報道はされていないと思われます。

🔶「放送法」の精神を無視した番組では?
このような現状に対して、日本のTV番組での「著しい劣化」が指摘されています。
以下、ツイッターでの投稿を紹介します。

放送法では、(目的)として次のように定められています(強調のため色替えあり)。

(目的)

第一条 この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。

一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二 放送の不偏不党真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。

上のツイッターで紹介されている番組は、放送法の精神に基づくものであるかは非常に疑問です。まさに、TVは何のためにあるのかを考えさせます。

🔶一方では比較的「まともな」番組も
メディアによる政権への忖度が目立つ番組が多い中、私(当ブログ館主)が比較的「まとも」だと思う番組もあります。

紀藤正樹弁護士も言及しているTBS『報道特集』(土曜 17:30~)ですが、金平キャスターが降板した後、内容が変わるのではないかと危惧して方も多かったのではないでしょうか。ですが、膳場キャスターのコメントとともに、「まともな番組」を継続しているのではないかと思います。

🔶メディアの現在地を読み解く国民のリテラシーが必要
今記事では、RSFの「報道の自由度ランキング」に関してお伝えしてきました。
日本で果たして「報道の自由」が保証されているのか伝える側の記者たちの姿勢はどうなのか、という問題は、今後も多くの場面で取り上げられなければなりません。
そのためには、メディアの現在地を把握したうえで読み解く「リテラシー」を国民が獲得することが必要になってきます。ここ数日の例では、Time誌の見出し訂正「申し入れ」などは、日本政府が外国の出版社にまで「圧力」をかけたとしたら、大変な問題ですが、今後日本のメディアはどう伝えるのでしょうか

最後に、前回の日曜討論で「非常に説得力のある」発言をNHKが止められなかった例を挙げます。発言者の岩本菜々さんは、10代・20代の若者の生活相談や、奨学金問題に取り組んでいる大学院生です。

“政権に忖度するメディアのあり方が問われる「報道の自由度68位」” への2件の返信

  1. 変だなと思うのは、官邸で自殺した警察官(機動隊員)についてその後の報道がされないような❓

    1. コメント、ありがとうございます。

      そうですね。私もおかしいと思います。
      守衛室に近いとはいえ、官邸の中での出来事ですからね。
      報道規制がおこなわていると考えるのが普通です。

      他にも、いわゆる「菊のタブー」とか、「鶴のタブー」とかがあるようです。
      TVや大手の新聞だけを見ていたら、実相はわからないのが「報道の自由度68位」たる所以でしょう。

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