「深掘り」してこそ見える《上尾市教育委員会公表資料》の裏側の事情

上尾市教育委員会のHPを閲覧すると、数々の方針やら資料などが出てきます。
たとえば、「いじめの防止等のための基本的な方針」、「小中学校における働き方改革基本方針」、あるいは「上尾市学校施設更新計画に関するホームページ一覧」等々です。
しかしながら、これらの方針や資料は、HPに掲載されるまでに(あるいは掲載されたにもかかわらず、その実は)多くの問題点を含んでいるものばかりです。
上尾市教委から公表や発信されている全ての資料等が、市民にとって透明性のある、言わばまっとうな方針や資料」であると言えるのでしょうか。
当ブログで何度か指摘してきましたが、市教委から発出された方針や資料などについては、それを表に出すまでの経緯(=「裏側の事情」)や、市教委側の意図があります。

今記事では、上尾市学校施設更新計画などが出されるまでにどのような経緯や意図があったのか、その一端について、情報公開請求で得た資料等に基づいてお伝えします。

No.271

🔶審査請求提出の結果、「黒塗りの記録簿」を全面開示させました
当ブログでは、「上尾市学校施設更新計画」の本質は「市内の小規模校つぶし」であることを指摘してきました。
「学校施設更新計画」を作成するにあたっては、市役所内に課長クラスの職員と市教委事務局(総勢27名)による検討委員会が設置されています。

しかしながら、当ブログNo.265記事で指摘したとおり、この検討委員会でどのような話し合いがされたのかについて情報公開請求したところ、各委員の発言部分が黒塗りされてしまったのです。

🔶市民としての対抗手段は「審査請求」
こうした市側の対応(黒塗り=情報の非開示)に対して市民が「それはおかしいでしょう」と考えた場合の対抗手段としては、「審査請求」があります。これは、「非開示という処分には納得がいかないので、取り消して情報を開示してください」というものです。

今回の非開示処分に対する審査請求は以下のとおりです。
(※A4版で全5ページあります。最下部に改ページ機能あり)

審査請求書202303教育総務課 - コピー

この「審査請求書」で、私(当ブログ館主)は、求めた文書を非公開にする理由が無いことを、根拠法令識者の見解判例等を示したうえで指摘しました。
その結果、言い逃れができなくなった市教委事務局は、「要点記録簿」を開示せざるを得なくなったのです。

🔶「要点記録簿」から見る発言回数
開示された「要点記録簿」は、発言をそのまま記録したものではありませんが、誰(どこの部署)が発言したのか、また、発言の趣旨は分かります。
「上尾市学校施設更新計画検討委員会」の委員名簿と、第1回~第5回検討委員会における発言回数は以下のとおりです。
IMG_20230506_0001

都市計画課長と危機管理防災課長が何度も発言しているのが分かります。
その発言の内容は、都市計画課長は計画全体を通じての発言危機管理防災課長は「避難所としての学校」に関する発言が多くなっています。
一方、全5回を通じて1度も発言していない4名(教育総務部次長・学校教育部次長・青少年課長・中学校給食共同調理場所長)は「この話は自分には関係ない」とでも思っているのでしょうか(そもそも、「次長」の役割そのものがよくわかりません)。

🔶市教委事務局の発言に生じる疑念
検討委員会では、言わば「内輪の検討会」であるにもかかわらず、疑念が生じる市教委事務局の発言が見受けられます。

《経費削減の方針》 第3回検討委員会(2022.9.16)より
施設課:経費削減の方針について、金額等もう少し踏み込んだ内容はあるか。
事務局:コストシミュレーションの結果を、今後計画に掲載していく。

施設課の質問に「計画に掲載していく」と答えてはいますが、「基本計画」には載っていません。すなわち、「その場しのぎ」と思われる発言です。
市教委事務局としては、
コストシミュレーションの結果については、市民の目には触れないようにしておくつもりなのでしょうか。それとも、事務局が言っている「計画」とは、今年度末までに策定するとした「実施計画」を指すのでしょうか。そうだとしたら、あざとい「言葉の使い分け」と言わざるを得ません

《経費削減の方針》 第4回検討委員会(2022.12.13)より
財政課:経費削減の方針については、どこかに具体的な内容が示されているのか。
事務局:あくまでも参考だが、試算では約30%の削減という結果になっている。

財政課の質問に対して、「あくまでも参考だが」と断ってはいるものの、経費30%削減と発言しています。市長が「経費35%にはこだわらない」と議会で明言したものの、「35%削減から30%削減、つまり大幅削減には変わらないのでは?」との疑念が生じてきます。

《小中一貫教育の関係》 第3回検討委員会(2022.9.16)より
行政経営課:小中一貫は「一貫校」なのか「一体校」なのか。どのように考えているのか聞かせていただきたい。
事務局:基本的には小中一体の学校を考えている。施設を共有できる学校をイメージしている。

事務局のこの発言は「本音」が露見した例と言ってもいいでしょう。
注目すべきは、発言者が「事務局」となっている点です。すなわち、指導課長あるいは学校教育部長の発言ではなく、教育総務課長または新しい学校づくり担当職員の発言であることが分かります。
そうなると、上尾市で「小中一貫教育」をすすめるにあたっての「本音」が見えてきます(以下は「上尾市小中一貫教育基本方針」P21より引用)。

ページの下の枠内で、小中一貫教育とは《「ハード面」のことではなく、「ソフト面」のこと》と言っても、その上の文章とは矛盾しています。
結局は「小中一貫教育」は「基本的には小中一体の学校を考えている。施設を共有できる学校をイメージしている」(つまり、小規模校を潰して、隣接する小学校に統廃合する)という事務局の意向に沿った形ですすんでいくことが危惧されます。

🔶上尾市教委の発出資料の「裏側の事情」の例
大変残念なことに「市民的視座からはあり得ないこと」が事実としておこなわれているのが今の上尾市教育委員会の実態なのです。
すでに当ブログでお伝えしているとおり、上尾市教委(事務局)が今までに公表した資料等で「裏側の事情」が見え隠れする実態は数々あります。特徴的なのは、現在の教育委員は何も指摘しないことと、私が情報公開請求をすると(つまり、核心を突くと)市教委側が対応を変える場合があるという点です。

*「上尾市立小中学校における働き方改革基本方針」は、定例教育委員会で承認を得ることなく、いつの間にか上尾市教委のHPに掲載されていました。
その経緯について情報公開請求すると、市教委事務局は、シレっと「改定版」の案を定例教育委員会にかけたのです。(詳しくは当ブログNo.237記事参照)

*「教育委員会の権限に属する事務の管理および執行の状況について、点検および評価を実施すること」は、地教行法で定められています。また、「点検・評価する者」は「第三者的立場にある者」であることは言うまでもありません。
あろうことか、第三者である「有識者」として、教育総務課長自身が学校運営協議会副会長であった時の会長(退職校長)に依頼したという事実があります。そうした流れで、今年度の「第三者としての評価者」が誰になるのかは要注目です。
(詳しくは当ブログNo.242記事参照)

*現在も継続中の問題のひとつに、「家庭教育支援員」の不透明極まりない人選(それに加えて報酬の格付け疑惑)があります。この問題については、当ブログでは徹底的に検証していく予定です。(概要は当ブログNo.269記事No.270記事参照)

このほかにも、「いじめ問題調査委員」にまつわる不可解な人選や、調査委員会が開催されていることすら定例教育委員会で報告されないという信じ難い事実があります(何も言わない教育委員にも責任はありますが)。これらの問題の多くは、「おかしいな」との疑念から情報公開請求をおこなった結果、事実関係が明らかになる、というパターンです。

🔶透明性を伴う説明責任が求められる上尾市教育委員会
今記事では、上尾市教育委員会が公表したり発信したりしている内容には、「裏側の事情」があることについて、幾つか実例を出してお伝えしました。
情報公開請求をしていると、「実はこういうことだった」という事実にあらためて気づかされます。それはつまり「上尾市教委が公表・発信する資料等を鵜呑みにすることは禁物」であるということなのです。中には、上尾市教委が発出する方針や資料等を丸ごと信じているかのようなブログでの発信もありますが、少し立ち止まり、「市教委が発信していることは本当に信用していいのか?」と考え直すことも必要ではないでしょうか。

今、上尾市教育委員会に求められるのは、市民に対しての「透明性を伴う説明責任」だと思われます。今後とも当ブログでは、市教委から発信された情報については、「本音のところはどうなのか」「裏側の事情があるのではないか」という視点で注意深く見ていきたいと考えています。