「小規模の学校を潰すこと」を目的とする《素案》に対する私の意見

現在、「上尾市学校施設更新計画基本計画(素案)」に対する意見募集がおこなわれています(募集期間は今月30日まで)。
この《素案》について、ある市民は「具体性に欠けるが、上尾市教育委員会の目的が小規模の学校を潰すことにあるのは明らか」と述べています。確かに、《素案》の中の唯一具体的な記述としては「学校規模の適正化」という名目で「(小規模校について)統廃合を含めて検討の対象とする」とあります。
今記事では、私が提出した《素案》への意見についてお伝えします。

No.258

🔶《素案》への意見募集は1月30日まで
今回、市民から意見募集の詳細については、以下から見ることができます。
■「上尾市学校施設更新計画基本計画(素案)」の中身は、こちら
※全体で89ページありますが、資料等も多いので、本文は思ったより多くはありません。

■「意見書」の様式等については、こちら
※様式上部の「ダウンロード」をクリックすれば、Wordファイルで入力できます。
【提出方法】
①持参:上尾市役所本庁舎7階 上尾市教育委員会教育総務課
②郵送:〒362-8501 上尾市本町3-1-1 上尾市教育委員会教育総務課(1/30消印有効
③FAX:048-776-2250
④メール:s721000@city.ageo.lg.jp
【問い合わせ先】上尾市教育委員会教育総務課 電話:048-775-9469

🔶《素案》についての私の意見(抜粋)
次に、参考までに私が提出した意見について、抜粋してお伝えします。

前提として
《素案》についての意見募集なので、《素案》で述べている文言と、現在実施中の「地域公聴会」において配布されている資料の文言との間に齟齬が生じてはならないのは当然である。しかしながら、実際には《素案》の文言と「地域公聴会」配布資料の文言と異なっている箇所があるのは非常に問題である。
(例:地域公聴会資料の「施設一体型小中一貫校の建設を検討」の文言が《素案》には無い、など)
《素案》の構成について
すでに市民から、「《素案》は全体的に具体性に欠け、何が言いたいのかわからないが、これから小規模校を潰すための検討をすることは分かる」との声が上がっている。「何が言いたいのかわからない」のは《素案》の構成に問題があると考えられる。すなわち、《素案》提出に至る経緯と、今後のスケジュールに関する記述が全く無いからである。
その一方で、「小規模校は潰すことも検討する」ことについては明確であるにもかかわらず、対象校を具体的に挙げていないという論法・構成が市民の不信感を募らせている。
言葉のごまかし(P4)
「学校規模の適正化の検討」という表現であるが、P77の枠内で「学校統廃合を含め」と明確に述べているので、P4の記述は「音を隠した言い換え=言葉のごまかし」である。
大石中と大石南中の生徒数の差(P14)
大石中と大石南中との生徒数の差がなぜ生じたのか、その分析が無い。また、その差を解消するために市教委としてどのように対応したのか、通学区域審議会にどのように諮問したのかについての記述が無い。
出張の見直しをするはずでは?(P36)
 “Topic” の下部に「各教員は担当する校務分掌によって出張が決まる」との記述があるが、現行の「上尾市立小・中学校における働き方改革基本方針」によれば、「教育委員会が主催する研修及び会議の見直し」が方針として掲げられている。《素案》は、この方針との整合性が無い。
少人数学級と言えるのか(P40)
 「…35人に引き下げ、少人数学級の実現を図っていく」とあるが、そもそも35人学級は少人数学級なのか。諸外国と比較して「35人学級は少人数学級」と言えるのか。
「中一ギャップ」という表現(P46・P74)
「中一ギャップ 文科省」で検索すると、最初にヒットするのは国立教育政策研究所の資料である。
文科省に属する同研究所は、必ずしも実態を表現しているとは言い切れない「中一ギャップ」という用語を使用することに警鐘を鳴らしている。議会調査特別委員会においても、地域公聴会においても、このことは指摘されている。したがって、安易に「中一ギャップ」という用語は使用すべきではない。
P74 の ”Topic” で説明するのであれば、国立教育政策研究所の提言も示すべきである。
コミュニティ・スクールの「不都合な真実」について(P47)
コミュニティ・スクールの運営協議会は傍聴可となっているにもかかわらず、会議録を見ると傍聴者はどの学校でもゼロである本当に「地域とともにある学校」なのか、疑問である。
「アンケート調査」に関して(P51・P55・P57~P60)
《学校の教室に必要なこと》
「ゆとりのある教室」が必要との回答が最も多いとしながら、ではどうしたらよいか」についての考察が無い
《通学距離》
「通学距離の上限」の希望が全体的に短めであることが、素案の上でどう生かされているのか。P77にはその記述が無い。
《小中一貫教育》
アンケート実施にあたり、そもそも「小中一貫教育に関する基本方針」が市教委として定まっていないことを回答者に知らせたのか。ふわっとしたイメージだけの設問によって導かれたこのアンケート結果については懐疑的にならざるを得ない
《学校再編》
実施したアンケートの説明文「法律で定める程度」は法律ではないので誤り。この設問については議会調特で多くの議員から「誘導であるので修正を」との指摘があったにもかかわらず、修正せずに強行した経緯がある。「アンケートでは約7割の人が学校規模の適正化は必要と回答」などとしているのは、極めて悪質であり、撤回すべきである。
《アンケート調査全体について》
上記にかかわって、アンケートの設問は、庁内27名で構成する「検討委員会」を経たと言うが、誰ひとりとして「この設問は誘導ではないか」と発言する者がいなかったという事実は見逃せない。
基調講演会に関して(P62)
  『広報あげお』で市民に周知し、保護者1万人に連絡したにもかかわらず、聴衆がほとんど集まらなかったことについての反省なり総括が無い。
教職員の執務空間(P72)
「多様な人材による[チーム学校]として働き方を最大化することができる執務空間とする」とあるが、見出しにある「教職員の働き方を最大化する」の意味が全く不明。また、学校が現在引き受けている役割や任務について見直しをするという観点からの記述が無い。
学校規模の適正化方針(P77)
「小学校においては、特別支援学級を除き全体で6学級以下の状態が5年以上継続した場合、統廃合を含めて検討」とあるが、なぜ特支を除くのか、理由が書かれていない。市教委の『令和4年度 上尾の教育』等の資料では、学級数の推計に特支を含んでおり、整合性が取れていない。
小規模校の良さの記述が無い(P77)
中教審答申に触れているが、答申の文言「小規模校のメリットを最大化し、そのデメリットを最小化することで、教育の魅力化・充実を行うことが必要である」が抜けている。もし意図的であれば、悪質この上ない。また、市内の小規模校の学力の状況、人間関係の安定化などを含め、小規模校の良さについての記述が無い
児童生徒の通学距離・安全確保(P80)
保護者・市民の関心の高い「通学距離」についての記述が極めて少ない。アンケートでは小学校で2.0キロメートル以内を望んでいるのは少数であるにもかかわらず、2.0キロメートルを通学距離として容認している。
学校再編をすすめるにあたっての留意事項(P80)
学校規模の平準化のために市教委として何をするのか、「通学区域審議会」にどう答申するのかについての記述が無い。
(全体として)《素案》提出までの発言や発信の問題点
*「素案は教育委員会(2022年)11月定例会で協議します」と池田課長は9月に明言したにもかかわらず、11月に協議されることはなかった。したがって、『広報あげお12月号』で市民に発信した「上尾市学校施設更新計画基本計画」を改定します。このたび、その案がまとまりました」という記述は事実ではない。また、訂正を求めたが何らの対応もされなかった。
*昨年12/23の議会調特で、池田課長は「公述書は何百字とかそういうことではなく」と述べたが、3日後にHPに掲載されたのは、課長発言とは異なる「400字以内にまとめ」であった。
※このように、《素案》提出までの過程での発言や発信に誤りが多いばかりか、現在までに、それについての訂正も謝罪も無い。
《素案》の特徴と要望
以上のとおり、《素案》は「学校規模の適正化」という名目で「小規模校は良くない」という誤った印象を市民に与え、統廃合をすすめようとする意図が見えるのが特徴である。
したがって、《素案》はあまりにも問題点が多いことから、全面的に見直し、白紙撤回することを要望する

◎当ブログでは、引き続き「学校施設更新計画基本計画」「上尾市教委による小規模校潰しの画策」と捉え、関連する事項についてお伝えしていきます。