上尾市教育委員会を「今よりも少しはましな機関」にするための方策

当ブログで再三指摘しているとおり、現在の上尾市教育委員会の特徴は、以下の点に集約できます。
*市民の声を聞くポーズをとり、結局は「集団浅慮(※)」に陥っている市教委事務局
(※)集団が持つ圧力(同調圧力等)によって、その集団で考えていることに対しての判断能力が損なわれ、本来は好ましくない結論を出してしまう傾向(当ブログ記事No.232参照)
*20年間全員一致・異議無しで事務局提案の案件に賛成する教育委員(※)たち
(※)現在の上尾市の教育委員の男女比・年齢構成は地教行法4条に抵触している可能性が高いです。

では、どうすれば上尾市の教育委員会は現在より良くなるのでしょうか。
今記事では、「市民からの<教育委員会への請願>について明文化すること」が方策の一つとして有効なのではないか、ということについてお伝えします。

No.261

🔶「教育委員会への請願」は本来可能です
言うまでもなく、憲法16条では国民の請願権が認められており、それを受け、「請願法」が定められています。

(日本国憲法 第16条)
何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
(請願法)
第一条 請願については、別に法律の定める場合を除いては、この法律の定めるところによる。
第二条 請願は、請願者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所(住所のない場合は居所)を記載し、文書でこれをしなければならない。
第三条 請願書は、請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない。天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない。
② 請願の事項を所管する官公署が明らかでないときは、請願書はこれを内閣に提出することができる。
第四条 請願書が誤つて前条に規定する官公署以外の官公署に提出されたときは、その官公署は、請願者に正当な官公署を指示し、又は正当な官公署にその請願書を送付しなければならない。
第五条 この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない。
第六条 何人も、請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

以上の条文から、請願は国民の権利であり、所管する官公署に提出された請願書は、受理されたうえで誠実に処理されなければならないことは明らかです。

🔶他の自治体における「教育委員会への請願」
「教育委員会への請願」
で検索すると、県内では、さいたま市と坂戸市がすでに制度化されていることが分かります。また、全国的に見ると、愛知県、高知市、日野市、町田市、大府市、酒田市などでは、住民が教育委員会への請願を提出することを可としています。

では、さいたま市教育委員会請願等処理規程を見てみましょう。
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このとおり、手続きを踏めば個人でも教育委員会に請願を出すことができます。さらに、さいたま市における「請願等処理規程」の最大の特徴は、必要と認められた場合、請願者は教育委員会席上で意見を述べることができるという点です。

また、坂戸市の「教育委員会への請願・陳情についてでは、許可を受ければ、教育委員会の会議の席上、5分程度の陳述をすることができます。
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このように、さいたま市・坂戸市では、「教育委員会が認めた場合」という条件付きではあるものの、市民が教育委員会に請願を提出すること、さらに、認められれば意見を述べることができるのです。
もちろん、内容によっては(予算を伴うものなど)、市議会に提出するべき請願もあると思いますが、市民が議会と教育委員会のどちらに提出するかの選択権があるという点は大変重要です。
(※別件ですが、坂戸市は来年度から児童・生徒の給食費が無償になるそうです)

🔶我孫子市での実例
実際に教育委員会に出された請願(千葉県我孫子市)の例を見てみましょう。

請願第1号 教育長及び教育委員の任命に際して考慮されている学歴と主たる経歴の公表を求めることについて(令和2年3月31日受理)

この請願は、本文だけで18ページという長文ですが、<要旨>は次のとおりです。
なお、請願者(氏名は市HPで公表済み)の鑓水三千男氏は、「図書館情報学」の文献や論文等も数多く発表している研究者です。

 教育長及び教育委員は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地方教育行政法」という)第2条第2項の規定により、人格が高潔で教育行政に学識があるもののうちから、長が議会の同意を得て任命することとされているが、人格高潔はともかく、教育行政に学識を有するかどうかを判断するについて、候補者の学歴及び経歴が大きな要素とされていると漏れ聞くところである。一方、教育委員会のホームページには教育長及び教育委員の現在の社会的地位と職業等が記載されているのみで、一般の市民はこれらの者がどのような基準で選任されたのか知る方法はない。議会における同意についても、審議抜きでいきなり採決されており、同意するに至った経緯が明らかにされていない。
 教育については、市民も強い関心を有している分野であり、教育委員会は執行機関としての責任も重大であるにもかかわらず、教育長及び教育委員会の構成員である教育委員はその選任過程が全く透明性を欠いている現状である。
 民主主義社会にあっては「よらしむべし、知らせるべからず」という状況があってはならず、こうした状況が現に存在することは極めて不都合であると考えられるので、専任基準ともいうべきこれらの者の学歴及び主たる経歴の開示を求め、請願法に基づき請願するものである。

 我孫子市教育委員会では、この請願の取扱いについて継続審議とされ、結果として不採択となりました(2020年5月の会議録(P11~P13)に掲載)。不採択とした理由は以下のとおりです。

(我孫子市教育長)このような議案における個人情報の取り扱いについては、市の議案調整担当である政策法務室が我孫子市情報公開条例や本市の長年の慣例により運用してきた経緯があり、不明瞭な状況であると考えます。また、政策法務室としても、議案における個人情報の取り扱いについて、現状のままでよいか検討する必要があることを認識しており、今後、現在の運用が変更になる可能性も十分あり得ることから、その判断をまつべきであると考えます。
このような状況の中で、教育委員会として、現状の取り扱いを変えて自主的な公表を決定することは差し控えるべきと考えます。

つまり、「現行では個人情報の取扱いが不明瞭であり、運用が変更になる可能性もあり、政策法務室の判断を待つべきである」という、いわば「先送り」とされました。

しかしながら、教育委員会の定例会において、市民からの「請願書」が審議されることは、市民の意見を教育委員に伝えるという意味でも大変重要です。

🔶市議会への請願と教育委員会への請願の棲み分けができれば
上尾市議会では、採択された請願の内容がHPで公開されるようになりました。
教育関係については、「小中学校における特別教室及び給食調理室へのエアコン設置に関
する請願」をはじめ、昨年9月議会で2件、12月議会で1件の請願が採択されています。

上尾市の教育委員会を現在より良くするためには、エアコン設置など、予算を伴う請願は今までどおり市議会に提出し、それに加えて教育の内容に関わる請願は教育委員会へ提出できるようにすること、つまり棲み分けが必要です。
そのために、教育委員会への請願提出についての「規程」の整備などが求められます。

“上尾市教育委員会を「今よりも少しはましな機関」にするための方策” への2件の返信

  1. 貴重な意見と思います。
    教育委員会の職掌と言いますか、何もかも教育関係すべてを網羅するというのはその範囲が広すぎます。教育委員もそのあたりは感じ、認識されているのではと思います。

    1. コメント、ありがとうございます。

      確かに、以前から学校には「良さげなことは、とりあえずやってみよう」ということで、業務が拡がり過ぎたという面があります。
      教育委員会もそれをセーブするのではなく、助長してきたという傾向があったように思います。
      その結果、大きな歪みが生じ、「教職員の働き方改革」を推進することに繋がったのではないかと考えられます。
      しかし、拡がった業務範囲は、すぐには縮小できないばかりか、ヤングケアラー問題など、取り組むべき課題も増えています。
      さらに、「いじめ」「不登校」問題は、本人・保護者・学校それぞれ解決しなければならない喫緊の課題となっています。
      2月の教育委員会定例会の議題を見ても、教育行政の範囲の広さがわかります。
      https://www.city.ageo.lg.jp/site/iinkai/ky-kaigi-kaisai.html
      教育委員は、自らの力や発言の影響力が思ったほど無いということを自覚しているのかもしれません。
      その意味でも、当ブログでは、引き続き教育委員の資質や発言についてお伝えしていきます。

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