市民の権利行使のために「住民監査請求」のハードルは低いほうが良い

昨日(6/26)は前記事でお伝えした住民監査請求にかかわる「陳述日」でした。
私(当ブログ館主)は「陳述人」として、市の監査委員に向けての陳述をおこない
ました(傍聴された方、ありがとうございました)。
今回の住民監査請求について、監査委員事務局は「家庭教育支援員の報酬および期末手当の一部返還に関する措置要求」という、分かりやすい案件名をつけてくれました。
今記事では、今回の陳述の内容や、市民が権利行使をする際のひとつの手段としての「住民監査請求」について考えたいと思います。

No.280

🔶上尾市の監査委員とは
上尾市の監査委員(3名)の選任にあたっては、「人格が高潔で、地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者のうちから、市長が議会の同意を得て選任します」と市のHPで説明されています。
以前は市議会議員が入っていましたが、現在は条例で「議員は監査委員になれない」とされているため、税理士の方などが就任しています。
なお、監査委員は次の方々です(市HPより)。

🔶陳述の内容(措置請求の補足と新たな証拠の説明)
前記事では、「上尾市職員措置請求書」の内容についてお伝えしました。
昨日の「請求人による陳述」では、措置請求書の補足と、追加で提出した《新たな証拠》について説明しました。以下、その概略です。

今回の住民監査請求のポイントとは(陳述の冒頭で)
今回の住民監査請求は「家庭教育支援員の報酬および期末手当の一部返還に関する措置要求」ということですが、従前の社会教育指導員から職名を変更した家庭教育支援員に対する報酬の格付けに明らかな瑕疵が認められるため、本来の格付けで得られる報酬と、支払い済の報酬等との差額について返還請求をするものです。
「報酬および期末手当の一部」の額については、すでに提出いたしました「過払額内訳書」のとおりですが、これにつきましては、「上尾市会計年度任用職員の報酬等に関する条例施行規則」に基づき、算出したものです。

 以下、請求書の補足と新たな証拠に関しての陳述の概要です。

家庭教育支援員についての教育総務課長による説明
家庭教育支援員に関して、令和3年2月の教育委員会定例会において、教育委員の質問に答える形で、教育総務課長は、2点説明しています。
(1)「家庭教育支援員とは、新たな職というよりは、職名を変えるもの」であり、
(2)「公民館に携わっていただいている方については社会教育指導員のままで、PTAの関係に携わっている方については、家庭教育支援員に職名を変更するというもの」です、と明言しています。

以上については、とても分かりやすい話であり、「教育総務課長によるこの説明が無ければ、今回の住民監査請求は起こさなかった」と言える、大変重要なポイントです。

当初、教育総務課長は家庭教育支援員について説明していません
教育総務課長は、議案第8号は「教育委員会規則の一部改正」であるとしたうえで、かなりの時間をかけて教育委員に向けて議案の説明をおこなっています。
ところが、今回の住民監査請求にかかわる「家庭教育支援員」に関しては、教育委員への説明の中で、ひと言も触れていないのです。ですから、教育委員も「家庭教育支援員とはどのような仕事を担うのか」という質問をしたのだと思われます。

問題の教育委員会定例会で、当初、教育総務課長は「家庭教育支援員」とは何かについて説明をしませんでした。
これでは、さすがに教育委員も質問をせざるを得なかったのでしょう。

家庭教育支援員とは市P連事務局職員です
家庭教育支援員に任用された職員の<上尾市会計年度任用職員勤務条件説明書>を見ると、勤務先が生涯学習課ですが、( )書きで(上尾市PTA連合会事務局)と加筆されています。
また、勤務日は1週間に3日となっており、《新たな証拠⑭ 市P連HP「よくある質問」》の事務局開局日数の3日と一致します。以上のことからも、家庭教育支援員という職は、市P連事務局員であることを示しています。

以上は、家庭教育支援員とは「市P連事務局員」であることの証左です。それまでは全く(上尾市PTA連合会事務局)との記述が無かったのですが、情報公開請求により、勤務条件説明書に加筆されるようになりました。

家庭教育支援員は「業務報告書」の類を作成していません
「昨年度から今年度にかけての家庭教育支援員の業務報告書の類」について情報公開請求をおこなった結果、《新たな証拠 :「行政文書非公開決定通知書」=文書不存在》により、「家庭教育支援員による業務報告書、または同趣旨の報告書・日誌の類」は存在しないということが分かりました。

家庭教育支援員が、自分が携わった仕事についての業務日誌や報告書を、1年簡にわたって何も残していないということ自体信じ難いですが、市P連事務局員とは、そうした仕事であるということだと言えます。

🔶事実関係の整理
ここまで陳述した内容を整理してみます。

ここまでの陳述内容の整理
家庭教育支援員の業務内容とは、勤務条件説明書では「家庭教育支援業務」とされていますが、実際には「PTAの関係(=市P連)に携わる事務局員としての業務である」ということになります。
「社会教育指導員については公民館関係業務、家庭教育支援員については市P連業務」という教委定例会での教育総務課長の発言からも、新たに家庭教育支援員を任用するにあたっては、社会教育指導員と同様の格付けをおこなわないと整合性が取れないということになります。

🔶なぜ家庭教育支援員について4号給上位に格付けをしたのか

現在までに二人の方が家庭教育支援員になっています
令和3年度から現在まで、お二人の方が家庭教育指導員に任用されています。最初に任用された方は、社会教育指導員であった方が家庭教育指導員となったケースであり、昨年度から任用された方(現在も引き続き勤務している方)は初めて家庭教育指導員として任用された方です。
家庭教育支援員の採用(任用)時の不透明さ
《新たな証拠⑯・⑰》は「上尾市会計年度任用職員である家庭教育支援員の採用(任用)については、公募であるのか、あるいはそれ以外の方法で任用したのか」について開示を求めたものです。
結果は「文書不存在のため非公開」であり、処分通知の手交の際に、口頭での説明を求めましたが、担当である生涯学課の職員からは家庭教育支援員の任用については全く説明はされませんでした。
このことは、家庭教育支援員の採用経緯(任用)に不透明さが生じていると言えるものです。
職名変更の時点から報酬の格付けを訂正すべき事案です
住民監査請求の趣旨から、今回は1年前からの事実関係に焦点を当てていますが、実は、最初の方についても、令和3年度に社会教育指導員から家庭教育指導員に職名が変更になったと同時に4号給上位に格付けされていると思われます。
生涯学習課の職員の方に伺ったところ、通常は1年勤務すると1号給上がるということなので、いきなり4号給上がるというのは、明らかに誤った格付けであったと言えます。
家庭教育支援員の号給の格付けは、元校長に配慮したから?
家庭教育支援員として任用されたお二人については、検索すれば、どのような立場であった方たちか、すぐにわかります。お二人とも上尾市内の小学校の元校長であるという点で共通しています。
新たに社会教育指導員となった者の報酬が2級5号給であるにもかかわらず、なぜ新たに家庭教育支援員となった者の報酬は2級9号給なのか」という疑問については、「単なる過誤」であったのか、あるいは意図的なものであるのかについては、現在までのところ分かっていません。
しかしながら、「家庭教育支援員に任用する際、元校長への配慮で4号給上位に格付けをしたのではありませんか?」と私が尋ねたところ、生涯学習課の方はそのことを明確に否定できませんでした。

🔶ぜひとも厳正な監査を

3名の監査委員への請求人としてのお願い
埼玉県職員の給与事務を担当していた自身の経験から考えて、今回のような「発令の誤り」による「過年度戻入」、つまり過去に遡って該当者が正規の給与との差額を支払うことについては、実際に見聞きしてきました。ですから、会計年度任用職員の格付けの誤りについても、行政実例としては有り得ることですので、判明した時点で本来の格付けに是正することが必要であると考えています。
4号給上位への格付けに対する疑問」、また、「任用時における不透明さ」も合わせて、監査委員のみなさまに厳正な監査をお願いするものであります。

陳述の最後に、このようなお願いをしました。ぜひとも厳正な監査を望むものです。

🔶教育委員会は正々堂々と陳述を
私が陳述をしている間、傍聴の方とは別に、教育委員会の職員が陳述の様子を見に来ていました。教育委員会による陳述の機会を設けるか否かについては、これから監査委員が検討するようですが、もしもそうした機会があるならば、正々堂々と教育委員会側の主張を述べてほしいものです。

🔶「おかしい」と思ったら情報公開請求や住民監査請求を
私は個人として住民監査請求をおこなったのは、今回で4回目です。
すべての回に共通していますが、流れ的には次のようになります。

会議の傍聴や資料などから「これは変だな、おかしいな…」と思ったら
  ⇓
それが「市の財務上の問題なのか」考える(金額は少額でも可)
  ⇓
「財務上の問題」だとすれば、証拠を集める(情報公開請求が有効)
  ⇓
「上尾市職員措置請求書」を作成する(監査委員事務局に相談してもよい)
  ⇓
「誰が、どのような行為で、損害を与えているか」再度確認する
  ⇓
請求書を提出する(請求人による陳述の機会があります)
  ⇓
「棄却」「勧告」等の結果を待つ(60日以内)

流れ的には大変そうですが、実際に請求をおこなうと、思ったほどではありません。
今後、市教委関連では、「学校統廃合」に関する「実施計画」が出され、様々な形で市の税金が投入されることが予想されます。そうしたことも含め、金額の多寡ではなく(今回の住民監査請求で言えば、「不当な支出」の額は42,238円です)、「おかしいな」と思ったら、まずは情報公開請求、さらには住民監査請求などを通じて市政や教育行政を市民として監視していく必要があると考えています。

市民の権利行使のためにも、「住民監査請求」のハードルは低いほうが良い のです。

*「情報公開請求」あるいは「住民監査請求」のやり方を詳しく知りたいという方は、当ブログの「お問い合わせ」経由でご連絡ください。具体的な手続きや書類の作成方法等についてアドバイスできると思いますので、必ず返信いたします。なお、秘密は厳守いたします。

“市民の権利行使のために「住民監査請求」のハードルは低いほうが良い” への2件の返信

  1. 何も知らない私には「驚きの連続」です。すべからく不合理な行政(だけではありませんが)が存在し、市民が要望する様々な課題がないがしろにされていることに、強い憤りを感じます。館邸の主人のご努力と勇気に心からの敬意です。 私はもう相当な年ですが、このような行政が続くことにいらだちと焦りを感じます。
     学校統廃合問題は、当初私も事態の本質を若干読み違えて居たこともあり、市民センターなる運動体が、直近では「教育の内容とあり方」に焦点を移し、運動から離れていますが(本質は何も改善されていない)、大事なことは行政とりわけ教育委員会を委員会を中心とする「市長部局の運営に」もいささかの問題を感じています。市議会もその追及の本質を離れてしまいました。

    どうか今後とも

    1. NM様

      コメント、ありがとうございます。

      ご指摘のとおり、残念ながら現在の上尾市政&教育行政は、市民の声や要望は「聞くふり」だけです。
      学校統廃合の関係で言えば、上尾市が狙うのは小規模校を順次潰していくことです。
      「地域の声を聞いてすすめていく」という意味は「地域の声を聞くふりをして計画を実施する」ということだと思います。
      また、関連する他のこと(小中一貫教育の推進、水泳授業の民間委託化など)も併せてやろうとしています。

      避けなければいけないのは、現在の市政&教育行政について「この点は評価できるのではないか」などと市側を評価したり認めたりすることです。
      彼らは、私たちが考えているよりよほど狡猾であり、権限を持っていることについては押し通してきます。
      その意味で、市側と市民側とは決して対等の関係ではありません。市民の側のほうが圧倒的に弱い立場なのです。
      だからこそ、私は市民の権利である情報公開請求や住民監査請求を通じて「市側と対等に近い関係で」問題点等を指摘していくつもりです。
      引き続き、どうぞご意見などをお寄せください。

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