鴨川小《時間外在校時間 100時間超え》の要因は「研究委嘱」か?
当ブログでは、情報公開請求により、2023(R5)年6月分の上尾市内小中学校教職員の《時間外在校時間(=実質的時間外勤務時間)》の一覧表を入手しました。
この一覧表を分析することで、現在の上尾市内の教職員の時間外勤務の実態がある程度明らかになると考えられます。
そのひとつは上尾市教委による強制的な「委嘱研究」による過重労働であり、鴨川小では月に100時間の時間外勤務をした職員の存在が明らかになっています。
今記事と次記事では、市内小中学校の《時間外在校時間》の実態についてお伝えします。
文末に【追記】があります。
No.284
🔶今回入手した資料とは
上尾市内各学校では、出退勤の際に教職員が「打刻」し、平日・休日別に「平均出勤・退勤時間」「時間外勤務時間」として月ごとに集計され、データとして蓄積されます。
ただし、このデータは今のところ情報公開請求をしなければ入手できません。
ここでいう「教職員」とは、埼玉県が採用している、いわゆる「県費教職員(臨時的任用者を含む)」を指します。したがって、上尾市採用の職員は、この資料の対象外です。
今回入手した6月分の「時間外在校時間」一覧表の一部を見てみましょう。
今回の資料はA3版で計21枚ありました。黒塗り部分は教職員の個人名(個人情報)なので、開示されません。特徴としては、一覧表の中に、「勤務日数」が0日の教職員が多く含まれていることです。
上の表で、上から3人目~5人目、および下から2人目は、データ上は「勤務日数0日」の教職員です。該当者は全市合計で205人もいることになっています。
市教委事務局(学務課)に確認したところ、「勤務日数0日」には次のようなケースがあり、データの平均日数の母数に含まれることが判明しました。
[勤務日数0日でデータに掲載される教職員とは]
(学務課の説明によります)
*産休・育休・休職等でその月に勤務実績が無い職員。
*一部の市費任用職員(氏名のみ記載)。
*任期満了の職員の一部。
*2校兼務職員。
[勤務0日の職員が含まれる場合の問題点]
「勤務日数0日」の教職員がデータに含まれるていると、分母が多くなるため、「平均時間外勤務時間」が少なくなります。示されたデータの上の部分を拡大してみましょう。
つまり、上の「平均時間外勤務時間 41.05時間」は、「勤務日数0日」の教職員を含んでいるため、正確ではないということになります。
では、開示された資料について私(当ブログ館主)が「6月に勤務実績がある職員」を対象として再計算したデータを見ていきましょう。
🔶勤務実績のある教職員の6月分「時間外在校時間」とは?
まず、勤務実績のある教職員の時間外在校時間の平均です。
このとおり、平均は50時間であり、当初市教委により開示された資料の平均時間と比べると、9時間も多いことがわかります。
もしも市議会の一般質問等で、「市内教職員の6月の平均《時間外在校時間》は?」と問われた場合には、おそらく当初の資料の〖41.05時間〗であると教委事務局は答弁するのではないかと思われます。
しかしながら、上述のとおり、正解は〖50.0時間〗です。教育行政の監視という意味で、資料の検証や分析が求められます。
🔶小学校(学校別)ではどのような結果が?
では、学校別ではどのような結果だったのでしょうか。今記事では、小学校について見ていきます(中学校については次記事でお伝えします)。
このとおり「平均時間外在校時間」「6月の最高時間数」ともに最多は鴨川小であり、過労死ラインをはるかに超えた106時間の時間外勤務をしている職員は、小学校では鴨川小だけです(富士見小にもあと10分で100時間に達する職員がいますが)。
🔶鴨川小はなぜ「時間外在校時間」が多いのか
この問いに関しては、「これが要因です」と特定するのは難しいですが、私は「委嘱研究」がひとつの要因ではないかと考えています。
鴨川小のHPには、次のようなメニューが示されています。
上記メニューの「学校課題研究」とは、上尾市教育委員会からの委嘱研究を指します。
このように学校HPに委嘱研究のメニューを設けている学校はほとんどありませんが、鴨川小ではよほど重きを置いているのでしょう(というより、市教委事務局から「圧」がかけられているとも言えます)。
他校も含め、委嘱研究のテーマと学校名は以下のとおりです。
(赤〇印参照。PCでごらんの方は、下部に拡大機能が有ります)。
IMG_20230729_0004
このように、委嘱研究に「前のめり」になることで、必然的に「時間外在校時間」が多くなっているのだと考えられます。
[鴨川小の校長はサブテーマを正確に把握していない?]
しかしながら、市教委からの「委嘱研究」に前のめりになっているにしては、お粗末と言える事態が生じています。鴨川小の委嘱研究のサブテーマは、上記のとおり「~プログラミング的思考を軸とした授業展開で、社会で活きる情報活用能力を育てる~」だそうです(色替えは強調のため)。
ところが、鴨川小の2023年7月の『学校だより』では、次のように記載されています。
テーマやサブテーマについては、研究主任などが、表現に苦心しながら「活きる」という語を使うことにしたのではないかと考えられます。それにもかかわらず、校長が『学校だより』で、一般的な「生きる」という語を使用してしまったのは、この研究自体の目指すところを校長が「わかっていない」のではないでしょうか。
🔶「時間外在校時間」多い学校のツートップは「適正規模校」
「時間外在校時間」が鴨川小についで多いのは、上尾小です。どちらも市教委の「働き方改革基本方針」の目標値である月45時間を大きくオーバーしています。
今年度の学級数は一覧表のとおりですが、実はこの2校とも、市教委が「学校施設更新計画基本計画」の中で「適正規模校」としている「12~18学級(市教委はこの件では特支を除いています)」に該当しているのです(鴨川小15学級、上尾小17学級)。
つまり、市教委が示している「適正規模校」であっても、時間外勤務は適正ではない、ということになります。
※今記事では、情報公開請求により入手した資料に基づき、市内各学校教職員の6月の[時間外在校時間]について考えてきました。
次記事では、市内の中学校の実態についてお伝えしていきます。
【追記】
当ブログをお読みの方からのご指摘(コメント欄参照)もあり、「出退勤時刻」を確認したところ、上尾小では「平均出勤時刻」が朝の4:48という職員がいました。
また、今記事の中で言及した鴨川小では、「平均退勤時刻」が20時過ぎという職員が6名います(市内小学校全体では9名ですから、鴨川小が突出しています)。
これらの現状は、まさに異常事態と言わざるを得ません。
(中学校の状況については次記事でお伝えします)
貴重な資料ありがとうございます。教師の勤務実態の本質とでもいうものの一端が、如実に明かされたという意味で誠に貴重です。
統計の隠匿性と、更には統計を取るまやかし性というものが大手を振って歩いています。個人別の中はすべてがわかりませんが上尾小の朝4時台の出勤などと言うのは、許せないことです。
こうした実態が教育の目指すところを極端にゆがめていると思うっと、保護者ももっともっと神経を尖らせるべきと思います。早いうちに「検討会」のようなものをもって、議論ができる状況をつくってほしいと覆います。
NOM 様
コメント、ありがとうございます。
私のほうでは見落としていましたが、上尾小では「平均出勤時刻」が朝の4:48という職員がいますね。ご指摘ありがとうございました。
資料をざっと見た限り、朝の4時台に出勤しているのはこの職員だけのようですが、まさに「異常」と言えます。
防犯上も問題がありますし、近隣の方も朝の4時に校舎内に明かりが見えたら不信に思うでしょう。
次回の記事を投稿するまでに、出退勤時刻の確認もしておきます。
中学校も含めて、夜遅くの退勤が常態化していることも予想されます。
これらの問題については、全市的に問題提起をしていく必要があると痛感しています。
学校別データ興味深く拝見させていただきました。
時間外在校時間が多い学校はもちろん問題ですが、
逆に少ない学校、平方小勤務実績20名45時間超1名、上平北小17名中2名
も気になります。
何故この2校だけ突出して少ないのか、業務改善が本当に進んでいるのか、それとも持ち帰りで対応しているのか、勤務実態を正確に申告しているのかを分析する必要があると感じました。
お手数をおかけして大変申し訳ございませんが、中学校も学校別データをお示しいただくと大変助かります。
よろしくお願いいたします。
コメント、ありがとうございます。
市民が学校での時間外勤務が多い要因を捕捉するのは困難ですが、情報公開請求の処分通知の手交の際に担当課の職員からよく聞くことが必要です。
学校別データの件は承知いたしました。別途お送りします。