〖イングリッシュサロン=英語クラブ〗創設の問題点の検証(1)

〖イングリッシュサロン〗なる企画が市教委主導で行われようとしています。
2月の「総合教育会議」の際、私(当ブログ館主)はこの企画を初めて知り、同時に強い違和感を覚えました。そして、情報公開請求等で中身を深掘りしていくうちに、〖イングリッシュサロン〗の問題点が浮かび上がってきました。
折から、市議会の予算特別委員会でこの企画についての問題点が取り上げられました。
今記事は、
〖イングリッシュサロン=英語クラブ〗創設の問題点の検証(1)として、批判的に検証していきます。

No.315

🔸議会・予算特別委員会での質疑応答とその検証
市議会HPで録画配信済の3月5日の上尾市議会予算特別委員会から、質疑応答の様子と、情報公開請求等で判明した資料により検証していきます。
以下、今記事に関連する部分の質疑応答を、中継録画から文字起こししてあります。

(ばんどうともこ委員) 〖イングリッシュサロン〗について聞くのですが、イングリッシュサロンという名称は、部活動と分かりづらいので[英語クラブ]と呼ばせていただきます。
まず、[英語クラブ]創設についてお伺いします。
部活動の地域移行の目的は、超過勤務する教職員の仕事量の軽減が目的ではないのでしょうか。
新たな部活を作っても、緩和にはならないと思いますが、創設提案した理由をお聞かせください。
(瀧澤学校教育部長) これまで本市では、休日の部活動地域移行に関するテストケースをスポーツに関する地域クラブ活動において実施しております。しかしながら、文化芸術活動に関する地域クラブ活動につきましては実施できておらず課題となっておりました。
そこで政策企画提案制度を活用し、文化芸術活動に関する地域クラブ活動を実施することといたしました。文化活動・芸術活動といたしましたのは、本市がこれまで取り組んでいる上尾市英語力向上プランの更なる充実に寄与するものと考えたためでございます。
なお、〖イングリッシュサロン〗の運営につきましては、民間事業者に委託しておこなうため、教員に負担がかかるものではございません
(ばんどうともこ委員) 吹奏楽部や美術部などの既存の部活動の地域移行が全く実施できていない中、新たな部活をつくること自体、疑問しかありません。
「教員に負担がかかるものではありません」とのことですが、超過勤務する職員や過重労働する教職員の負担軽減を全く考えていない新たな事業には賛成できません。
小学生も対象で、月に3回、土曜日2時間、1,333万円の予算を使い、120人対象。単純計算で一人当たり10万円以上かけた「習い事レベル」の内容で、部活動の地域移行と言えるのでしょうか。
(瀧澤学校教育部長) 本事業は、本市における初めての文化芸術にかかる地域クラブ活動であることから、ノウハウを持った専門の業者に運営を委託して実施することが望ましいと考えております。
委託業務の内容につきましては、外国人講師及びコーディネーターの他、指導カリキュラムの作成や講師の研修、運営マニュアルの作成、緊急時体制整備等が含まれており、それらを踏まえた予算計上となっております。
取り扱う内容につきましては、現時点で「生きた英語に触れる」ことをテーマとし、英語によるコミュニケーションを中心とした活動を想定しております。また、地域クラブである以上、生徒のニーズに即した自主性の育成に寄与するものとなるようにしてまいりたいとも考えております。本事業をていねいに検証し、持続的に活動することを前提とした仕組みを構築するとともに、地域クラブ活動の選択肢拡大につなげていきたいと考えております。

[検証]
(部活動地域移行=AGEO地域クラブの果たす役割)
「上尾市における部活動の地域移行に向けた基本方針案」
より
このとおり、(1)生徒のニーズ (2)教員の働き方改革 (3)生涯学習 が部活動地域移行(AGEO地域クラブと名付けています)の役割だと「上尾市における部活動の地域移行に向けた基本方針(案)」では述べています。

🔸[英語クラブ]希望生徒は 3,204名中 わずか1名のみ
「生徒のニーズはあるのか」情報公開請求したところ、「部活動地域移行検討報告書」が示されました。その結果は、中学生3,204名対象の調査で、[英語クラブ]を希望した生徒は、わずか1名であることがわかりました。
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このとおり、「外国語」を含めても、希望する生徒は2名というアンケート結果だったのです。小学生対象の部活希望調査でも、[英語クラブ]希望児童は 3,260名中2名でした。
つまり、今のところ
[英語クラブ]を希望する児童生徒は、極めて少ない
と結論付けられます。
ただし、〖イングリッシュサロン〗が民間英会話スクールと競合する形になり、費用が民間より安価である場合には、一定程度の人数が流れる可能性はあります。

🔸教員の働き方改革の推進とは関係ない〖イングリッシュサロン〗
学校教育部長も答弁しているとおり、〖イングリッシュサロン〗(英語クラブ)は多額の費用をかけて民間事業者が運営するものです。
ですから、『部活動の地域移行に向けた基本方針(案)』で述べている事項、すなわち

*中学校教員の時間外在校等時間の減少
*学力向上等につながる教員の指導力の向上
*授業等教育活動の充実
*校務と学校部活動の無理のない両立

これらは、〖イングリッシュサロン〗の創設とは全く関係がないのです。
したがって、「教員の働き方改革」には全くつながりません
(そもそも、現在、市内の中学校に英語部はひとつもありません)。

🔸「生涯学習」になるのか
市教委指導課は無理やり「生涯学習」につなげようと、「多世代がつながる生涯学習」や「地域コミュニティの強化・拡大」を挙げています。
しかしながら、もしも〖イングリッシュサロン〗が継続したとしても、
「多世代がつながる」or「地域コミュニティが強化・拡大される」状況にはならない
。 と私は考えます。
むしろ、幅広い世代が「英語を話す」ことを目的とするならば、公民館に任せたほうがよいのではないでしょうか。

🔸次回の記事では「予算」&「政策企画提案制度」の中身も検証
当ブログでは、以前から、上尾市の英語教育のあり方については非常に懐疑的です。
たとえば、No.251記事「多額の費用をかけてALTに頼らざるを得ない上尾市の英語教育の現状」では、現在のALT雇用の契約の実態を明らかにし、「予算をかけているにもかかわらず、上尾市の中学生の英語力がさほどでもない」あるいは「小学校の先生が英語を教えることの問題点」などを指摘してきました。

それらに加え、今記事では、市教委が優先順位を無視して推し進めようとしている〖イングリッシュサロン〗(英語クラブ)創設の問題点の検証についてお伝えしました。
私はこの企画(〖イングリッシュサロン〗)については反対です。
その立場を明らかにしたうえで、次回以降の記事では、「予算額」や「政策企画提案制度の中身」について検証していきたいと考えています。

“〖イングリッシュサロン=英語クラブ〗創設の問題点の検証(1)” への2件の返信

  1. [英語クラブ]希望生徒は 3,204名中 わずか1名のみ

    生徒のニーズを無視した企画であることが一目瞭然ですね。

    政策企画提案制度、英語クラブについて疑問点が2点あります。

    ①政策企画提案制度は、担当の行政経営課によると、9月末が募集の締切りで12月1日に予算化する案を決定するそうです。

    20本近い提案をわずか2ヶ月で審査する。緻密な審査が本当にされたのでしょうか?

    ②英語クラブを提案した教育委員会指導課は、いじめ・不登校・部活動・学習指導等、重要な業務を多岐にわたり担当しています。

    これらの業務を真剣に行いながら、新たな事業を提案することが果たして可能なのでしょうか。

    本来の業務がおろそかになっているのではないかという疑問が残ります。

    1. 神田 様

      いつもコメントありがとうございます。

      ニーズを無視した〖イングリッシュサロン=英語クラブ〗は、創設する意味が全くわかりません。
      ご指摘の「政策企画提案制度」は、確かに「異常なスピード感」ですね。深掘りする必要があると思います。

      また、他の業務があるにもかかわらず、新たな、しかも不要と思われる施策をちゃんと出来るのか?という心配もあります。
      指導課は、いじめ問題でも「調査委員会」人選の問題や、必要な手続きをしなかったことにより住民監査請求の対象となるなど、発足で致命的な大失敗をしています。
      また、学校図書館支援員への酷い対応など、「何をやっているのか?」と思わざるを得ない失態が続いていますね。
      同じ轍を踏まないためにも、〖イングリッシュサロン〗なる企画は、取り下げてもらいたいものです。

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