来年度の中学校修学旅行からも見えてくる《上尾市教育委員会の実相》
当ブログでは、上尾の市政や教育行政について「これはおかしいのでは?」「実はこのような資料があります」など、事実に基づいてお伝えするようにしています。
多くの場合、事実関係の根拠としては、情報公開請求を通じて、市民に公表されていない文書や資料について入手し、記事にすることを基本としています。当ブログで「市民が知らない一面」を浮かび上がらせ、問題を可視化することで、上尾の市政や教育行政が今よりも少しでも改善されるよう、私(当ブログ館主)は望んでいます。
今記事と次回の記事では、来年度の市内中学校の修学旅行関連についてお伝えします。
あらためて見えてくる、上尾市教育行政の真の姿とは??
No.353
🔸「修学旅行費用」は、学校によって、16,680円もの差が!
次の一覧表は、来年度の上尾市立中学校の修学旅行目的地と費用の見込みです。
(開示資料では校名は公開されましたが、今記事では学校名は伏せてあります)
市内の中学校は市のHP(教育委員会のページ)を参考にしてください。
このとおり、E中とJ中では、16,680円の差 があります。
目的地は両校とも「京都・奈良」なのに、この差の要因は何でしょうか。
一覧表が開示されたあと、2校の修学旅行の積算額を情報公開請求しました。
🔸貸切バス代や宿泊費は「黒塗り」
以下は、私が情報公開請求した内容です。
同じ目的地(京都・奈良)であるにもかかわらず、J中学校とE中学校では、予定費用に16,680円の差異があります。そこで、J中学校とE中学校の来年度の修学旅行の積算額(見積り明細)が判別できる文書・資料等。 |
この請求に対し、金額が分かる開示された資料としては、JR乗車券・特急券など公共交通機関の内訳のみでした。
貸切バス代・宿泊費・食事(弁当)代や、なんと、拝観・入場料や添乗員経費・手荷物配送費用・保険料も「黒塗り」という結果でした。
教育委員会が「一部公開」とした理由は、以下のとおりです。
つまり、「営業・販売方法のノウハウに関する情報」は「公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害する恐れがある」ので、公開できないということなのです。
首肯できる部分もありますが、では、次のことについてはどうなのでしょうか。
「拝観・入場料」が非公開ですか?
取扱い旅行業者によって、拝観料が変わるのでしょうか。「黒塗り」にする必要はないと思われますので、一部公開とした市教委の姿勢が問われます。
「添乗員経費」「企画料金」は、私の理解では、パーセンテージの範囲が定められていると思われます。また、保険料も「黒塗り」にする必要があるのでしょうか。
これらについては、再度開示を求めて「審査請求」するかどうか考えています。
🔸「修学旅行の費用の上限額」を定めていない上尾市教委
昨今の物価高騰の状況も含め、私は「保護者負担の軽減」についての配慮が必要だと考えています。少なくとも、「保護者の経済的負担」については、上尾市教育委員会として基本的な理念なり方針があって然るべきではないでしょうか。
修学旅行一覧表の開示を受けて、保護者の費用負担の件で情報公開請求しました。
請求人は、昨今の物価上昇や、生活の困難さに直面している世帯が増えていることを考慮し、修学旅行にかける費用そのものについて教育委員会として上限額を設けるなどの配慮が必要だと考えています。 そこで、要・準要保護世帯への補助以外に、上尾市教育委員会(事務局)として、中学校の修学旅行の費用に関し、上限額を設ける(例:総額60,000円未満とする)などの基準や目安を各学校に示している(あるいは検討している)ことが判別できる文書・資料等。 |
この請求に対し、市教委の回答(処分)は、「文書不存在による非公開」でした。
つまり、上尾市教育委員会は、修学旅行の費用の上限額について検討すらしていない、という事実が明らかになったのです。
修学旅行の費用の考え方については、公益財団法人日本修学旅行協会の資料(令和6年度 都道府県 修学旅行基準概要)が参考になります。
このとおり、旅費(=修学旅行費用)については、「目的の達成と保護者の経済的負担を考慮し、適正な額とする」とされています。
この「実施基準」について、上尾市教委(事務局)はどう考えているのでしょうか。
私は「市教委事務局は、修学旅行費用の目安について全く調べていないのではないか」と推測しています。
🔸市教委は「保護者負担の軽減」について配慮していないことが判明
そもそも、上尾市教育委員会(事務局)の中で、「保護者負担の軽減」という理念あるいは方針が共有されているのか、との疑問が生じ、次の内容で情報公開請求しました。
「保護者負担の軽減」について上尾市教育委員会(事務局)として共有されていることが判別できる文書・資料等。 |
※請求人がいう「保護者負担の軽減」とは、要・準要保護世帯に向けた就学援助、あるいは時限的な給食費の減額などに留まらず、児童・生徒の保護者全体に向けた「保護者負担の軽減」(できるだけ保護者に経済的な負担をかけずに、公費で支払えるものは公費で負担するなど)のことであり、上尾市教育委員会(事務局)として共有していることが判別できる文書・資料等を指しています。 |
この請求に対する回答(処分)が以下の通知文書です。
結果は「文書不存在による非公開」でした。
しかも、備考欄にも何も書かれていないこと自体、「上尾市情報公開条例」第26条で定められている「実施機関(=この場合、上尾市教育委員会のことを指します)は、積極的に情報の提供に努めること」と真逆の対応であると言えます。
この情報公開請求によって、上尾市教育委員会は、「保護者負担の軽減」について共有していない、という極めて残念な事実が明らかになりました。
このことで思い出されるのは、市教委事務局のある課と情報公開請求の関係で面談した際に、「本来は公費で支払える事務用品や消耗品費を、PTAの学校協力費で支払うのはおかしいのでは?」という疑問から、「保護者負担の軽減という点については、市教委事務局内で同じ考えですよね?」と尋ねたところ、「何を言っているのかわからない」という、怪訝そうな反応をされたことです。
上尾市教育委員会(事務局)には、「保護者負担の軽減」という理念は共有されていないのです(この3月に物価高騰対策として給食費が補助されますが、そういった時限的な措置とは異なる、理念として「保護者負担の軽減」という考え方が無いということです)。
🔸教育長の頭の片隅にも無い「保護者負担の軽減」という考え
教育長が年度当初にどのような教育行政をすすめていくか、事務局内で共有した文書を情報公開請求したところ、次のような文書が示されました。
いかがでしょうか。
教育長名で「令和6年度 教育行政を進めるにあたって」と題され、市教委事務局内で共有されたはずのこの文書ですが、どこを探しても「保護者負担の軽減」という文言は見当たらないのです。
このことは、私にとってかなりの衝撃でした。なぜならば、上尾市教育委員会(事務局)として、「保護者負担の軽減」という考えは共有していると考えていたからです。
教育長は「学校施設更新計画実施計画」を推進していく際には「着地点を想定しつつ」などと書いています(着地点って何ですか?)。それよりもむしろ、「保護者の経済的負担を考慮し」という文言を基本に据えるべきではないでしょうか。
🔸当ブログが今記事で明らかにしたこと
修学旅行の費用などの情報公開請求により、次のことが明らかになりました。
*来年度の市内中学校の修学旅行の費用は、学校により 16,680円 もの差があること。
*公開すべき中身にもかかわらず、「黒塗り」にされている費用があること。
*県の修学旅行の基準で示されていることが上尾市では無視されていること。
*市教委事務局では、「保護者負担の軽減」という考えが共有されていないこと。
*教育長がすすめようとしている教育行政の中にも「保護者負担の軽減」が無いこと。
これらについては、市民や保護者にも伝えていく必要がありますので、引き続き情報の入手を続けていきます。
次回の記事では、来年度の中学校修学旅行の「行き先」についてお伝えする予定です。