「市民からの意見募集」= ご自分の考えを市に伝えていきましょう
上尾市では現在、様々な「市民からの意見募集」が行われています。
その数は、募集予定も含めれば、10種類に及びます。
今記事では、現在実施されている「意見募集」を紹介したうえで、とりわけ私(当ブログ館主)が関心を寄せている『第4期上尾市教育振興基本計画(案)』についての私の考えをお伝えします。長目の記事となっていますが、じっくりとお読みください。
No.381
🔸「市民からの意見募集」は現在5件
「市民からの意見募集」は、現在は次の5件です(〆切日が早い順)。
※青字クリックで計画等(案)のページ(担当課)に飛びます。
| 案件名 | 募集期間 | 担当課 |
| 第4次上尾市男女共同参画計画((案) | 11/28 ~ 12/26 | 人権男女共同参画課 |
| 第4期上尾市教育振興基本計画(案) | 12/1~ 来年1/5 | 教育総務課 |
| 第3次上尾市空家等対策計画(案) | 12/1~ 来年1/5 | 交通防犯課 |
| 第3期上尾市地域創生長期ビジョン・ 第3期上尾市地域創生総合戦略(案) |
12/9~ 来年1/8 | 行政経営課 |
| 上尾市行政改革プラン | 12/9~ 来年1/8 | 行政経営課 |
これらの計画等は、今月から来月(=年明け早々)が〆切日となっています。
冒頭で述べたように、今記事では、教育総務課が示した『計画案』中の3つの項目について私の考えを述べていきます。
🔸『第4期上尾市教育振興基本計画(案)』について
まず、150ページもあるこの『計画案』の構成や体裁を見ていきましょう。
(ブランクは何のため?)
まず目につくのは、「空白のページ」「ブランク」「無意味なカット(アッピー)」がやたらと多いということです。私が数えただけで10ページ分あります。
さらに、1ページの使い方に「ムダ」が非常に多いですね。

これは『計画案』の60~62ページです。「章」や「目標」の区切りというわけでもなく、
「空きスペース」を設けた意図がまったくわかりません。
それとも、このスペースに「市民からの意見」を入れるつもりでしょうか…?
おそらく、そうではないでしょう。
このような「空きスペース」が『計画案』の中に何か所も出てきます。
そのことからも、「レイアウトの稚拙さが目立つ編集」と言わざるを得ません。
(「目次」の誤った記述)
『計画案』の目次「第1章」は次のとおりです。
この「目次」は、第1章 総論 の 2の(2)~(6)と、3の(2)~(6)がまったく同じ項目となっているので、明らかに間違いですね。
記述内容を確認すると、3の項目が違っていました。単純な確認ミスだとは思いますが、市民に意見を求める「たたき台」になる『計画案』なので、公表前に教育委員会事務局内で確認ができなかったのか?との疑問が生じます。
🔸『計画(案)』の中身の問題点
では、中身はどうでしょうか。
「はじめに」で教育長が「第3期教育振興計画」の総括・評価に基づき、上尾市の教育行政をどうすすめるのかについてのビジョンを語る必要がありますが、そうした記述は見当たりません(そもそも、教育長にはそんな発想は無かったのでしょう)。
次に具体的な中身を見ていきますが、『計画案』は指摘すべき点が多岐にわたるため、その中でも、今記事では次の3点に絞って検証します。
| 項目 | 成果/課題 | 『計画案』 | 視点や問題点 |
| 就学支援 | P15 | P82 | 全体的に「保護者負担の軽減」の視点が無い |
| グローバル化 | P15 | P83-84 | グローバル化と切り離せない平和教育の視点が弱い |
| いじめ防止 | P12 | P57-58, P61 | いじめ再発防止について第三者の視点が無い |
この表にしたがって、順に見ていきます。
《「就学支援」ー「保護者負担の軽減」の視点が無い》

これは『計画案』P5の記述です。「経済的格差が懸念される」ので、「一人一人に寄り添い、等しい学習機会を確保していくことが求められています」とあります。
しかしながら、この記述に対応する「成果と課題」は次のように記述されています。

「成果」として「保護者に就学援助費を支給することができた」ことが挙げられていますが、学校教育法19条に基づく就学援助制度は、どこの自治体でも実施されています。
また、課題として、「市の奨学金貸付金の滞納がないようにする」ことが挙げられているのは「ちょっと違うのでは?」と考えてしまいます。
これについて『計画案』での「主な取組」は次のように説明されています。

たったこれだけです。
▶「進学に対する支援」は、貸付制度なので、借りたら返さなくてはなりません。
▶就学に対する援助は、上述のとおり、学校教育法に基づく就学援助制度で、どこの自治体でも実施している取り組みですから、目新しい施策ではありません。
すなわち、『計画(案)』には、上尾市独自の「保護者負担の軽減」という視点での取り組みがまったく無いのです。
公費で払うことができる事務用品や校用備品などについて、各学校の保護者が支払っている現状について解決していくのが教育委員会の役目ではないでしょうか?
(「グローバル化」と切り離せない《平和教育》の視点は?)
「グローバル化に対応する教育の推進」の成果と課題は次のように記述されています。

「経済的に恵まれた」ごく一部の生徒(22名)が行く「中学生海外派遣研修」を成果として挙げていく姿勢は、上述の「保護者負担の軽減」の観点とは真逆です。就学援助を受けている生徒が「海外派遣」に行っていないという現状を教育委員会はどのように捉えているのでしょうか。
また、グローバル化と切り離すことができない「平和教育」の視点が、この「成果と課題」にはありません。
では、『計画案』ではどう書かれているのでしょうか。

ごらんのとおり、わずかに「国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う教育の充実が必要」との記述がありますが、具体的にはどのように取り組むのでしょうか?


このとおり、「主な取組」は、「平和教育」の具体的取り組みではなく、「伝統と文化を尊重する教育」がメインになっています。
なぜ、「▶平和教育の積極的な推進」と書けなかったのでしょうか?
また、「主な取組」の③に「教育課程特例校の指定を受け、小1から英語活動を実施する」との記述がありますが、すでに教育課程特例校の指定を受けて6年目となります。
にもかかわらず、教育委員会としての「総括」や「評価」、平たく言えば「上尾の児童生徒は英語が堪能になっているのか」については何らの報告もされていません。
(「いじめ防止」の第三者の視点が無い)
「計画案」では、私は「いじめ防止」に第三者の視点が無いと考えています。
「成果と課題」の記述を見てみましょう。

まず、「いじめ」や「不登校」を単独の問題として扱わずに「生徒指導の充実」に含めていることで、教育委員会の基本的な姿勢がわかります。
「上尾市防止子供サミット」は、「サミット」の名のとおり、各学校の「代表」の子たちが集まる企画です。どんなに素晴らしい目標やスローガンが決められたとしても、言わば「普通の」子どもたちに浸透するのか、私は甚だ疑問です。
『計画案』の「いじめ防止の対策の推進と生徒指導の充実」は、次の記述があります。

この中の②で「いじめは、どの子供にも、どの学校にも起こり得る」との記述はそのとおりです。だからこそ「いじめ防止」の観点は、すでに市内の学校で起きてしまった問題から教訓を得ることが重要です。
教育委員会定例会で「いじめ重大事態調査報告書」が報告されたのは、令和6年9月以降令和7年11月まで都合12件を数えます。それぞれの報告書には「再発防止のため」の実証的な記述がされているはずなので、それらを活用することは極めて重要です。
残念ながら、『計画案』には、その防止策を活用する重要性が書かれていません。
🔸「市民アンケート」は生かされたのでしょうか?
ここまで3つの項目について『計画案』を見てきました。
別の項目を含めて、まだまだ市に出す意見はありますが、『計画案』について、もう一つ言及したいことがあります。
それは、「市民アンケート」は『計画案』に生かされたのか?という点です。
『計画案』のP22には、次の記述があります。
この資料により、アンケートの目的は「より良い教育環境を整備するための意見を伺い、『第4期上尾市教育振興基本計画』の策定の参考資料とするため」であり、2,309人の市民がアンケートに回答したことがわかります。
実際のアンケートと回答を見てみましょう(『計画案』P25より)。

この設問「質の高い学校教育のための環境の充実」については、グラフの「その他」、つまり最初から設定された選択肢の回答以外の自由記述として、199件の意見が寄せられたことがわかります。しかしながら、その結果は、右下の【その他意見の内容】の①~⑤としか記載されていないのです。これでは、教育委員会が言う「より良い教育環境を整備するための意見を伺い、『第4期上尾市教育振興基本計画』の策定の参考資料とするため」というのは、明らかに「ウソ」であると言えるでしょう。
※情報公開請求で入手した資料(教育アンケート:自由記述のまとめ)を紹介します。
◎この資料は、全部で32ページあります。資料の最下部に矢印(⇓)がありますので、それをクリックすれば次のページに進むことができます。
教育アンケート自由記述のまとめ
🔸積極的に「意見募集」に応じて、ご自分の考えを伝えましょう
『第4期上尾市教育振興基本計画(案)』への意見募集の提出方法については、市HPの教育委員会のページを参照してください。
ただし、残念ながら教育総務課のメールアドレスが記載されていないため、メールで意見書を送りたい方は、教育委員会HPの最下部にある「お問い合わせはこちら」経由で教育総務課に質問するとよいと思います。
🔸これから募集される予定の「市民の意見募集」もあります
市HPのメニュー「市民の意見募集」には、これからの予定が掲載されています。

たくさんありますが、ご自分が興味・関心を寄せているテーマについて、ぜひご自分の意見を市に伝えていくことをおすすめします。