さいたま市教委は「押しつけの感謝の拍手」を止めるべきです(追記あり)。
お隣のさいたま市では、明日の同じ時刻(6/15 10:00)、医療従事者に向けて「感謝の気持ちを込めて」子どもたちに一斉に医療従事者に向けて拍手をさせるそうです。ブログ筆者はこうした明らかな「押しつけ」には反対です。
(追記2)香山リカさんがツイッターで発信しています。
医療従事者ですけど……午前10時に学校で拍手してくれなくていいんで………その時間にコロナについてしっかり学んだり、感染者や医療従事者を差別しないと理解したりしてくれた方がずっとうれしいです。#さいたま市教委は10万人拍手を中止してください https://t.co/FdXKorUWKg
— 香山リカ (@rkayama) June 14, 2020
(追記3)東京新聞の記事では、「感謝の強制?市民らから疑問の声」が寄せられたと伝えています。(追記1は文末に記載)
記事No.88
■さいたま市教委の説明は?
報道機関に向けて発表された内容はこちらです ⇒ さいたま市教委記者発表
この「取り組み」なるものには、多くの疑問符が付きます。
①さいたま市立小・中・高等・中等教育・特別支援学校(168校)を総動員しての「取り組み」ということですが、誰がどう見てもこれは明らかに「押しつけ」です。さいたま市の保護者からは、こんな声も発信されています。
月曜日、医療従事者の方への感謝を込めてみんなで教室で拍手するんだって。茶番。気持ち悪い。でも市教委からの命令だから授業を中断してやるよ。時間も決められてるからね。うちのクラスだけやらなかったら後で何言われるかわからないし。 #さいたま市 #拍手 |
確かにこれは「茶番」と言えるものです。何よりも、子どもたちのほうから「こうしよう」と声を挙げたわけではないからです。一方、学校では「主体的・対話的で深い学び」ということがさかんに言われています。文科省の資料によれば、次のように説明されています。
「主体的・対話的で深い学び」の目的は、子ども達が生涯にわたり能動的(アクティブ)に学び続けるようにすること。 そこで子ども達が学習内容を深く理解し、必要な資質と能力を身に付けられるよう、学習の質向上に向け授業の進め方を改善する。 |
では、月曜日に行われるという<Clap for Carers>は、果たして「主体的・対話的で深い学び」に結びつくでしょうか。答えは「否」と言わざるを得ません。明らかにさいたま市教委による押しつけのイベントだからです。
②<Clap for Carers >の意味は?
さいたま市教委は、「児童生徒が学校から、医療従事者の方々へ感謝の気持ちを込めて拍手を送る」と説明しています。イギリス発祥とも言われている(諸説あり)このイベントですが、<Carers> の意味を、さいたま市教委は正確に捉えているのでしょうか。
Carers (あえてカタカナ表記にすれば「ケアラーズ」)は、手元の辞書を引くと、「《英》(病人・老人の)世話[看護]をする人」となっています。ですから、「医療従事者の方」だけではなく、当然ですが「介護に携わる方」も含まれます。4月2日にイギリス全土でおこなわれたイベントでは、医療従事者、介護従事者、緊急サービス、配達ドライバー、店で働く人々、教師、廃棄物収集業者、製造業者、郵便局員、清掃業者、獣医、エンジニアなども含まれています。
もちろん、医療に携わる方たちへの感謝の念は忘れてはならないのは当然ですが、それ以外にも、多くの方がコロナ感染を防ぐために努力しているのです。さいたま市教委は、そのことについても子どもたちに説明すべきです。
なお、<Clap>は名詞では「拍手」、動詞も「拍手する」という意味ですが、各学校の校長さんは、ALT(英語指導助手)にこのイベントについて説明する際に、<Clap>を<Crap>つまり[L]を[R]と発音してしまうのは絶対に避けてください。なぜなら<Crap>は①愚かな考え②駄作③うんこ という意味だからです。
③「オンラインミーティング」参加小中学校は?
どうやら、大宮の桜木小と浦和の岸中がオンラインミーテイングに参加させられるようですが、桜木小 学校だより(6月2日更新)にも、岸中学校のHPにも、全くこのイベントについて触れられていません(ブログ筆者の最終閲覧日 6/14 15:00 )。イベントの前日になってもそれぞれの学校のHPに掲載されていないことから、これは明らかにさいたま市教委が両校に半ば強制的に参加するように伝えたと推測できます。
(追記)朝日新聞(デジタル版)で、この問題についての報道がされています。新聞記事には、<「唐突で、なぜ拍手を送るのか子どもは理解していないかもしれない」と話すのは40代女性教員。「子どもたちからやりたいとなったわけではないし、周囲でも『感謝の気持ち』は指示されて生まれるものなのかという話が出ている」と言う。50代の男性校長も「ポーズっぽくて嫌だなという思いはある」と明かすが「深く考え出すと『私はやらない』という人も出てくる。良い風に解釈し実施したい」と語った> とあります。校長の話の中で「深く考えだすと『私はやらない』という人も…云々」というのは、「主体的・対話的で深い学び」を強調することと明らかに矛盾するものです。
*以上の理由から、さいたま市教委は、月曜に予定されているイベントを中止すべきだとブログ筆者は考えます。また、今のところ上尾ではこのような動きは見られませんが、さいたま市教委の真似をするということも十分考えられます。引き続き関心を持って見ていきたいと思います。