上尾市教育委員会の不都合な真実 ー指導主事についてー

記事No.17

市教委「指導主事」の人数が減っても学校は困らない

■上尾市職員定数条例では…
上尾市役所の7階に「上尾市教育委員会事務局」があります。行ってみるとわかりますが、何やら多くの職員がいます。そこに「学校教育部」と「教育総務部」があり、部ごとに各課(学校教育部ならば「学務課」「指導課」「学校保健課」)に分かれていることを知っている市民は多くないでしょう。

実は、市教委事務局職員の定数(つまり、何人の職員を置くのか)は、本採用者の総数しか決まっていません。小中学校や図書館で勤務している、多くの「非正規職員」「臨時職員」は、上尾市職員定数条例での定数の中に入っていないのです。
同条例によれば、上尾市教育委員会事務局(その中にも再雇用を含む非正規職員の方
はいますが)と学校職員(市費負担の正規職員)と合わせて167人です。
ただしこの人数の中には、学校に勤務する[県費負担の教員や学校職員](正規・非正規問わず)は含まれていません

■多種多様な任用の職員
 市民からしたら、誰がどういう立場で働いているのかは、ちょっと見ただけではわからないでしょう。

 一説によると、上尾市役所の場合「ぶら下げているネームカードに写真が貼ってあれば正規職員」だそうですが、小中学校に行くと、その区別はありません。

■「指導主事」の配置の「不都合な真実」
今回の記事で取り上げる、上尾市教育委員会事務局の学校教育部に配置されている「指導主事」と呼ばれる職員の定数も、実は決められていないのです。

 今年度、指導課にいる「指導主事」の数は、課長を含め11名です。その他に学務課に3名、学校保健課に1名の「指導主事」が配置されています。
しかしながら、その数は定数条例で決められたものではありません。
では、なぜ指導課に指導主事が11名という多人数が配置されているのでしょうか。

 それは、指導主事たちが「自らのアイデンティティを維持する」こと、つまり「指導に関する事務」と称して市内の小中学校に対して強制的に3年サイクルの「研究委嘱」なるものを設定し、学校に訪問すること、あるいは「指導課訪問」という名の「押しつけの訪問」をする、いわばイベントを目的として慣習的に今の人数を置いたと考えられます。

 結果的にそれは、「権威の序列性」を一般教職員に見せつけることになります。勘のいい子どもは「先生よりエラそうな人が来た」と思うかもしれません。

 また、教頭や校長の「予備人員」として教育委員会事務局に人数を置いておくということもあり、現在は「教頭・校長候補者名簿登載者」のみが「指導主事」となっています。

■「教育委員」の集まる会議でも語られることのない教員多忙化の要因  
 いわゆる「働き方改革」と称して、教員の長時間勤務が社会問題になっている昨今、解決のために、たとえば中学校での部活動外部指導員の配置増や、印刷やコピーを受け持つ「スクールサポートスタッフ」の配置などが方策として出されています。

 しかしながら、そうした「対処療法」的な方策よりもむしろ、多忙化の主要因と思われる<教育委員会から発出される指示や施策>が本当に必要なのかなどについては、定例の教育委員会の会議等でも話題に出ることはありません。

■「指導主事」という名の職員の資質
 上尾では、発表を伴う強制的な「委嘱研究」が行われています。3年に一度とは言うものの、発表の前年の中間発表などもあり、学校にとっては相当なプレッシャーになります。主担当の教員(研修主任)はもちろん、全員が「指導主事」に「授業を見てもらい」、講評を聞くという流れですが、問題は、「指導主事」の資質です。

 実際には、小学校の勤務経験しか無い「指導主事」が、中学校のベテラン教師に対して「指導」するという実態があります(これについては、市教委HP「教育委員会会議の結果」H29年3月,20頁を参照していただくと、指導主事の実像がよくわかります)。

 また、研究発表前日には、「指導主事」によるメイン会場等の下見があり、下足箱に貼られた「ナントカ部長様」などの表示の位置まで直される実態、つまり完全にイベント化していることも、ほとんどの市民の方は知らないでしょう。
おまけに、市議会において、学校教育部長は「委嘱研究は児童生徒の学力向上に寄与している」と答弁していますが、それを市民に十分納得させるだけのデータはありません。

■「指導主事」が半減しても、学校現場は困らない
 教職員の長時間勤務を解消する手立ての一つとするためにも、現在市教委事務局に配置されている「指導主事」の人数を半減したうえで、「委嘱研究」とそれに伴う指導主事による「学校訪問」は、あくまでも「希望制」とすることを提言したいと思います。
その際、学校側から本当に適切な助言が出来るような「指導者」を選べるようにすることも必要です。

 最も簡単な方法は、「指導主事」と称する方に模範授業をやっていただくことです(絶対にやらないというか、出来ないでしょうが)。 さらに、現場教員が「指導主事」の指導や助言に対してコメントできるようなシステムも導入されるべきです。

 できることなら、こうした実態や要望を市議会等で発信してもらえる議員が現れれば良いのですが。