上尾市教委の「小中一貫教育校の視察」の中身とは

上尾市9月議会の一般質問で、鈴木茂議員から小中一貫校についての見解を問われた池野教育長は「小中一貫校の設置については、先進都市の事例研究や視察の実施をおこなっている」と答弁しています。
今記事では、教育長答弁にある「視察」の内容と、「学校施設更新計画基本計画=学校統廃合計画」との関連性についてお伝えします。

No.192

🔷情報公開請求で入手した資料の検証
9月議会の教育長答弁にかかわって、「先進都市の事例研究と視察の実施」の内容についての情報公開請求しました。その結果入手したのは次の文書です(下部にズームあり。PC画面での閲覧推奨)。

IMG_20211111_0002

この文書と同時に開示された資料から、次のことが判明しました。

◎「先進都市」の事例研究と視察に関して
①視察先は春日部市(旧庄和町)の江戸川小中学校。
②視察日は2020年7月16日。視察職員は4名(指導課・学務課各1名ずつ。教育総務課2名)。
③江戸川小中学校は、2019年4月に、埼玉県内初の義務教育学校として開校している。

春日部市立江戸川小中学校は、2019年4月の開校にあたって学校名を募集し、一度は「江戸川学園」となった経緯がありますが、千葉県にある江戸川学園から校名の再考を求められ、現在の名称になったという「いわくつき」の学校です。

また、江戸川小中学校のHPから、次のことがわかります。

9年間をジュニア・ミドル・ハイに分けており、各学年のクラス数は全て1学級となっています。これを見る限り、「小学校最終学年の6年生としての自覚を育てる」などということはできません。

では、なぜこの学校を視察に選んだのでしょうか。
どうやら、江戸川小中学校を「反面教師」あるいは批判的に捉えて視察をしたというわけではないようです。
それは、「調査特別委員会」の席上で「自分としては義務教育学校が良いと思う」との池野教育長の発言と無縁ではないでしょう。
池野氏が「良いと思っている」学校を教育委員会事務局職員が視察したというのが実際のところだと考えられます。

🔷「更新計画基本計画」との矛盾
「上尾市学校施設更新計画基本計画=統廃合計画」の案について、すでに指摘されていることの一つに、「学校規模の適正化」があります。
以下は、「基本計画」に示されている上尾市教委の「適正な学校環境づくり」から引用したものです。

上尾市教委は、小・中学校とも、適正規模の基準は12学級から18学級であるとしています。ですから、もし「視察」するのであれば、全学年が1学級ずつの学校などではなく、自分たちが適正だと考えている学級数(12~18学級)の学校を視察すべきでしょう。

🔷視察に関して出た市教委の「本音」
視察に行った際に、市教委事務局職員は先方に【スクールバスについて】質問をしています。その内容も入手しましたので転記します。

(上尾市教委からの質問)【スクールバスについて】
スクールバスの運行ルートの決め方について、実際に走行する道路の状況や交通事情、さらに全児童が乗車でき、かつ長時間の乗車とならないようにルートを設定したとあるが、どのように道路の状況や交通事情を調査し、どのようにルートを設定したのかご教授ください(例:調査やルート設定は業者に業務委託した等)
(春日部市教委からの回答)【スクールバスについて】
スクールバスのルートについては、職員が実際に登下校時の時間帯に公用車で巡回し、道路状況を確認しました。その結果、学区内の道路状況(車両規制や細道が多いこと)から最大28人が乗車可能なマイクロバス2台で運行することにした。また、低学年の児童も乗車することから乗車時間を最大で30分程度になるよう検討した。さらに、児童の安全面を考慮し、自宅から概ね300メートル以内にバスの条項場所を設置することも検討した結果、現在のルートとなった。

これは、江戸川小中学校のスクールバス使用に関しての質問です。
ここで上尾市教委の「本音」が出ています。つまり、「調査やルート設定は業者に業務委託した」という前提での質問をしているのです。
「学校施設更新計画基本計画」では、上尾市教委自らが調査をしたり実務を担うことは少なく、様々なことについて外部の業者に業務委託をしているからこそ出てしまった質問と言えます。

🔷上尾市教委による「考察」
この「視察」のあとで、上尾市教委事務局は【スクールバス】についての「考察」を文書として残しています。私が入手した「考察」は以下のとおりです(下部にズームあり。PC画面での閲覧推奨)。

IMG_20211112_0001

画面が見にくい方のために、転記したものを次に示します。

考察(※上尾市教委事務局による)
スクールバスの運行について、平方東小学校と太平中学校の統合校から半径2キロ圏外の児童生徒は現状では約23人。
児童の安全確保のためにスクールバスの運行を検討した場合、上野本郷地区の道が狭いため、春日部市のように自宅から300m以内に乗降場所を設置するのではなく、わくわくランドなどある程度広いところに乗降場所を設けるほうが良いと考える。
わくわくランドから統合校までは片道約3キロ(車で約8分)であり、乗車時間は集合場所までの徒歩の時間を合わせても30分はかからない見込み。
統合校から一番遠い児童が乗降場所となるわくわくランドまでの距離は約1.2キロ(徒歩15分程度)であるため、わくわくランドまでの間にもう一つ乗降場所を設けたほうが良いと考える。(浦和実業高校のグランド駐車場を活用できないか要検討、浦和実業グランドから統合まで片道約3.9キロ(車で約11分))
春日部市のスクールバスの予算は以下の内容で1610万4千円
①運行バス台数 28人乗りマイクロバス2台
②運行予定日数220日
③運航路線 2コース各2路線 1日当たり60キロの走行予定
④1日の便数は登校1便、下校3便
⑤時刻表・ルートマップなどは年度毎に作成し保護者や発注者へ、学校に提供する(注:原文のまま)
※上尾の場合、運行路線とバス台数は減らしても良いかもしれない。

あたかも、上尾市でもすぐにでも実施するような書きぶりです。
この「視察」は昨年度実施したものであり、もちろん、地域説明会など開かれる前の段階ですが、これらの資料から、「調査等は業者まかせ」「地域へのていねいな説明等の軽視」の姿勢がうかがえます。

🔷教育委員はどのような観点で「視察」するのか
過日の「調査特別委員会」で、出席していた3名の教育委員がさかんに言っていたのは、「小中一貫校については、これから視察してから考える」ということです。
まさか同じ学校(江戸川小中学校)を「視察」するようなことはないと思いますが、どのような観点で「視察」をするつもりなのか、引き続き注意して見ていきたいと考えます。

🔷市民への情報公開は行政の当然の責務
今記事でお伝えした文書・資料については、私は情報公開請求で入手しました。
ところで、最近、情報公開制度についての「誤解」あるいは「制度についての無理解」ではないかと思われる市民の方の意見を目にしました。それは、「時間をかけて行政に余計な仕事を増やすことは望まない(ので情報公開請求しない)」というものです。
こうした意見の方には、ぜひ上尾市の情報公開条例を一読していただくことをおすすめします。条例の目的には次のようにあります。

上尾市情報公開条例(強調のために色替えあり)
(目的)
第1条
 この条例は、市民の知る権利を尊重し、行政文書の公開を請求する権利につき定めること等により、市の保有する情報の一層の公開を図り、もって市の諸活動を市民に説明する責務が全うされるようにするとともに、市政に対する市民の理解と信頼を深め、及び市民による市政の参加の充実を推進し、公正で開かれた市政の発展に寄与することを目的とする。

すなわち、情報公開制度は、市民(住民)の「知る権利」を尊重するための手段なのです。
当然、上尾市の職員は、この条例の目的を意識したうえで日々の職務にあたっているはずです。
しかも、通常は情報公開請求の申請をしてから、約2週間経過したのち、「処分通知(公開・非公開の決定)」を手渡す日程の調整をする段取りとなっています。ですから、市の職員にとって「余計な仕事を増やす」という指摘は的外れもいいところです。私は、市の担当者にアポを取らずにいきなり市役所に行き、「話を聞かせてくれ」「資料を見せてくれ」という手段は避けています。
また、文献としては、浅野詠子『情報公開ですすめる自治体改革』(自治体研究所)があります。著者は「加工されていない書類を入手できることが、情報公開制度の最大の特徴といってもいい」と述べています。

今記事でお伝えした、上尾市教委の「小中一貫校」の視察の資料も、浅野氏の言う「加工されていない書類」です。こうした実際の文書や資料等から、上尾市や上尾市教育委員会の「不都合な真実」が浮かび上がってくると言えるでしょう。