上尾市図書館が抱える<ジレンマ>

 2/17、第5回 上尾市図書館協議会を傍聴しました。そこから見えてきたのは、上尾市の図書館が抱えている<ジレンマ>でした。

記事No.59

■〈傍聴者への配慮〉は見られましたが…
 傍聴者は定員ちょうどの10名。傍聴者にとって改善が見られたのは、当ブログNo.53の記事 で指摘したことですが、「意思決定にかかる文書」以外の資料(当日の次第や席次表など)は「持ち帰り可」となったことです。前回の図書館協議会後の情報公開請求処分の際、ブログ筆者が同様のことを提言したことも含め、市民からの指摘に対して、少しでも改善に結びついたことは評価できると思います。
さて、肝心の図書館協議会の中身ですが、端的に言って、「協議会委員」と「図書館事務局」とで、<話がかみ合わない>のが如実に表れた協議会であった、という印象は免れません。

■なぜ<話がかみ合わない>のか
傍聴をしていて強い違和感を覚えました。理由は次の二つ。
図書館事務局が答申案を作成していること
図書館協議会は、図書館法第14条によっています。

(図書館協議会)
第14条 公立図書館に図書館協議会を置くことができる。
2 図書館協議会は、図書館の運営に関し館長の諮問に応ずるとともに、図書館の行う図書館奉仕につき、館長に対して意見を述べる機関とする。

つまり、館長の諮問に対し、図書館協議会が答申するのです。
にもかかわらず、答申案の作成者は事務局(図書館職員)であり、協議会で委員がその原案に対して質問するという摩訶不思議な状態になっていることにブログ筆者は強い違和感を覚えました。
答申案は、意思決定の過程にあるため回収されましたが、さほど長い文章ではなく、ブログ筆者のメモによれば、次の項目が掲げられていました。

1.目指すべき姿
(1) 資料や情報の収集など基本的機能の充実
(2) 多様なニーズに対応するサービスの提供
(3) 市民の学びと活動の支援
(4) 時代に合わせた環境の整備
2.留意すべき点
(1) 現状の図書館サービス網は可能な限り維持を
(2) 満足度向上と管理運営を図るために
(3) 専門的な知識の活用と職員の育成を
(4) より良質な図書館サービスを生み出すための運営を

 協議会では、項目の文章中の文言(例えば、「学力」→「学び」に直すべき、など)について話が出ていましたが、それに対して館長が説明するという<摩訶不思議な状態>でした。これについて、ブログ筆者は、はっきりと言いたいと思います。
【館長の諮問に対する答申案は、図書館協議委員が自分たちで書くべきです】

 上尾の図書館協議委員は、全部で12名。まず、答申案の柱立てと項目を決め、委員の皆さんが分担して執筆すれば、ひとりひとりの負担も少なくなるでしょう。副次的には、少なくとも自分の分担部分については文献や資料に目を通すでしょうし、それによって問題意識が芽生えるでしょう。「上平複合施設に関しての発言が相当数あったのに、答申案に入っていないのでは」などの意見は出なくなると思います。図書館協議会として自分たちが考えていることをそのまま館長に答申すれば良いのですから。
 おそらく、図書館側としては、「答申案は協議会自らが作成してください」と言えない事情があるのでしょう。それが「いらぬ忖度」によるものなのか、あるいは図書館協議会委員の資質によるものなのかはわかりませんが、図書館側の<ジレンマ>と言えるでしょう。

現状を把握していない図書館協議委員
 協議委員から、さかんに「図書館職員の資質」について答申に反映すべきである、との意見が出されていました。
 残念ながら、上尾では、以前の記事でもお伝えしたように、<職種(職名)としての司書・司書補>は存在しません。
図書館法13条に〈公立図書館に…専門的職員…を置く〉とあり、同法4条に〈図書館に置かれる専門的職員を司書・司書補と称する〉とされているにもかかわらず、上尾では専門的職員である司書・司書補が置かれていないという現状を図書館協議委員はきっちりと把握したうえで、「そうであれば、どうするのが良いのか」を議題にすべきなのです。
図書館側も、初期の段階で、現状について把握していない協議委員に説明すべきですが、これも<ジレンマ>になっていると思われます。

上尾市図書館をめぐる問題は、以上の他にも様々あります。
*本館の老朽化をどうするのか?
*「図書館機能を備えた」上平複合施設は、どうなるのか?
*市民の要望に応えるために、サービスをどう展開していくか。
*中教審答申や国の方針は、社会教育施設としての市立図書館に多大な影響を与えるのではないか?

 etc.

 こうしたことを含め、ブログ筆者が関心を寄せる「指定管理者制度の導入」についての情報公開請求の結果等については、次回以降の記事でお伝えします。

“上尾市図書館が抱える<ジレンマ>” への2件の返信

  1. 要するに、諮問とは行政が(有識者?の)審議会に何々についてご意見ありますか、と求めること。そして審議会が回答することを答申とよぶわけね。
    所が、行政が原案を書き、その説明をし、そこに加筆訂正を入れてあたかも委員が作った偽装をして答申する、と。
    本末転倒ぶりを委員当人らも受け入れているのは彼らに主体性が無いからだ。
    テレビならやらせ。
    或いは八百長地方自治と呼ぶべきか。
    オンブズ氏は「自分たちで書くべきです」と叱咤するが、むしろこの協議会は図書館法に違反しており、現委員を解任し、図書館幹部を処分し、改めて再編成すべきである。と書いても良いのでは。
    行き着く先は、委員たちで答申案を書かねばならなくなり、名誉職的に受ける人や気楽な当て職気分の人は減り、能力主義の協議会になるか、誰も受け手がいない協議会になる。

    1. 指定管理者制度導入についての情報公開請求処分通知手交の席で、次回(来年7月任期)の図書館協議会委員をやりたい旨伝えました。公募の際は、4000字程度のレポートを書いてもらったらどうかとも言いました。担当の方は「それもいいと思います。800字程度ではわかりませんから」とは言っていましたが… その職員が異動して、行政経営課の職員あたりが図書館に来たら、「あげお未来創造市民会議」の再現になってしまいますね(苦笑)。

現在コメントは受け付けていません。