どうしたら上尾市図書館は本来の「市民の図書館」になれるのか

2月21日、今年度第2回目の「上尾市図書館協議会」を傍聴しました。
この協議会、当初は年度内に3回の開催を予定していたはずですが、昨年の秋に開かれず、今回が今年度最後となるようです(次回は8月まで開かれない予定)。
図書館側の「熱意」が伝わってこなかったせいか、傍聴者も3名という人数でした。

私自身、「どうしたら上尾市図書館が今より良くなるのか」ということを含め、市立図書館の運営問題には強い関心を持っています。
今記事では、傍聴した図書館協議会の感想や、上尾市図書館が本来の「市民の図書館」(この意味は記事中で述べます)に変わるための方策を考えていきたいと思います。

No.209

今回の図書館協議会を傍聴して、私が気になったことを挙げてみましょう。

🔶上尾市図書館を利用していない人が協議委員?
図書館サービス計画の「レファレンスサービス」の話に関連して、図書館協議委員のおひとりが、「レファレンスデスクはどこにあるのですか」と事務局に質問していました。
図書館本館利用者はご存じだと思いますが、本館2階の貸出・返却のカウンターの左脇に「相談用」の机と椅子が置かれています。

本人に確認したわけではありませんが、レファレンスデスクの場所を聞いた委員の方は、おそらく上尾市図書館本館を利用したことが無いのではないか(利用者カードも作っていないのではないか)と推測します。せめて、年に数回でも図書館を利用すれば、上尾市図書館の様子などをご自分の目で確かめることができるのではないかと思います。

🔶「図書館員は利用者の秘密を守る」ことさえ知らない?
もうひとりの委員の方は、「電子図書館の利用者の年齢層は?」と事務局に質問していましたが、「それについてはデータがありません」との回答でした。

もしもこの委員の方が「図書館の自由に関する宣言」(下記)を一度でも目にしていれば、このような質問をすることは無かったはずです。


この「図書館の自由に関する宣言」は、現在、本館の貸出・返却カウンターの後方上部の壁に掲げられています。
利用者の秘密を守る」ということは、すなわち、電子図書館利用者の年齢層はおろか、性別などの属性も明らかにされないということなのです。

利用者が予約した資料の貸出を受ける際は「2冊、ご用意ができています」と言われるだけであり、カウンターにいるスタッフは、利用者以外の人に聞こえるように書名を言うことはありません。それは、「図書館は利用者の秘密を守る」からなのです。

🔶公募の図書館協議委員を加えるべきです
現在の図書館協議委員は、次の方々です。
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この中には、公募の図書館協議委員は含まれていません
では、上尾市において、公募の図書館協議委員は存在しなかったのでしょうか。
現在web上で公表されている資料から、次のことがわかりました。

↓  2011(平成23)年7月教育委員会定例会議案資料より

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「役職名等」の欄に、「公募」とあります。
この委員の方は、2年の任期のあと再任されています。不思議なことに、その時から役職名等には公募とは書かれなくなっており、その方の元の職種が記載されています。
つまり、上尾市では、2011年から2年間、公募の図書館協議委員が置かれていたのです。

もしも現在、図書館協議委員を2名程度公募していたら、毎回の図書館協議会は別の議論がされ、良い意味での緊張感があるのではないかと思われます。
現在の委員の任期は、来年の7月末までですが、それ以降は、以前のように図書館協議会委員を公募していただきたい。すなわち、図書館協議会のメンバーのあり方を再考することが、上尾市図書館を良くするうえでも必要なことのひとつだと私は考えます。

🔶「レファレンスサービス」に足を運んだ結果は
上尾市図書館は、利用者へのサービス(図書館法では「奉仕」という用語を使っています)としてのレファレンスサービスについて、HPで次のように説明しています。

レファレンスサービスって?
レファレンスサービスとは、一言でいうと「調べもののお手伝い」です。図書館職員が図書館の資料やインターネット情報源・データベースなどを使って資料・情報探しのお手伝いをします。

私は以前から、図書館本館のカウンター脇に、案内用のデスクはあるものの、「レファレンスコーナーにはいつも、スタッフが誰もいない」ことに疑問を抱いていました。

ですから、図書館協議会の席上、事務局から、レファレンスサービスについて、「11月から毎週火曜日午前中にレファレンスカウンターを設置している」との説明を聞いて、たとえ週に一度、平日の半日であろうと、対面のレファレンスサービスが始まることは一歩前進であると捉えたほうがいいかなとも思いました。
同時に、事務局からは、昨年11月から約3か月半、レファレンスの相談は0件であるとの報告がされました。その理由についての説明はありませんでしたが、「利用者に周知がされていない」ことが要因だと思われます。私が知る限り、このサービスが始まったことについて、市図書館HPの「お知らせ」や「図書館のサービス(レファレンスサービス)」には掲載されていないからです。

さて、私は事務局の説明のとおり、図書館協議会翌日(2月22日=火曜日)の午前中(10:50頃)にレファレンスの相談をするために上尾市図書館本館に足を運びました。
しかしながら、レファレンスコーナーには誰もおらず、カウンターにいたナカバヤシの委託スタッフにレファレンスサービスを受けたい旨告げると、待たされた挙句、会計年度職員(「会計年度職員」は任用形態であり、職名ではないと私は思います)という方がやって来て、「忙しいので(席に誰もいなかった)」という話をされていました。
確かに、この日は蔵書整理を理由とした長期休館明けであり、多忙であることは理解できます。ただ、私が以前入手した「委託業務内訳書」によれば、休館明けにはナカバヤシのスタッフを増やしているはずで、「手が足りないためにレファレンスコーナーに人がいなかった」という理由は成り立たないのではないかと思います。
厳しく言えば、図書館協議会における事務局の説明は、少なくとも2月22日については明らかに「虚偽」であったということになります。

「第3次上尾市図書館サービス計画(R3~R7)」には、次のように示されています。

レファレンスサービス <方向性>
利用案内や情報提供など、基本的なレファレンスサービスの提供を着実に行なうとともに、サービス自体の周知を徹底することにより活用促進を図ります。また、多様化・複雑化する利用者の情報ニーズに応えるため、レファレンスサービスを今後の図書館の中心的サービスと位置づけ、職員等の技能向上を含めた対応体制を構築します。

 上尾市図書館は、このような方向性を示しているのですから、レファレンスサービスについて、もっと実際にきちんとした対応をしていくべきでしょう。

🔶色褪せない『市民の図書館』の指摘
日本図書館協会編『市民の図書館』は、初版発行が1970年です。つまり、半世紀以上前に発行された本ですが、その内容は今も色褪せていません(写真は増補版)。

 

 

 

 

 

 

 

この本の中で、レファレンスについて、次のような指摘がされています。

レファレンスとは利用者の研究や問題解決を援助することであり、「利用者の調査研究への援助」と「参考質問に対する回答」にわけられる。調査研究でも参考質問の解決でも、利用者は図書館の資料を借りておこなうことができる。つまり貸出によって利用者自身が問題を解決し研究を進めることができる。
しかし、複雑な問題の解決、深い研究は図書館の多くの蔵書を十分に使い、司書の助けを得てはじめて能率的に進められる。このような利用者を援助する働きがレファレンスの一面であり、これは参考室において行われる。従来「閲覧」と言われていたものは「援助なき」レファレンスであった。また質問によっては、利用者が自分で資料を探し、知りたいことを尋ね求めるより、資料の検索技術と道具を持っている司書に尋ね解答を得るほうが簡単で単純なことがある。このような質問への回答もレファレンスの一面である。
日本図書館協会編『市民の図書館』19~21頁。強調のために色替えをしています。

繰り返しになりますが、『市民の図書館』が発行されたのは、今から半世紀以上前です。
この時にすでに「レファレンスの重要さ」と「司書の果たす役割」が明確に指摘されていることに驚くと同時に、「では、上尾市図書館はどうなのか」という疑問も生じます。

上尾市図書館は、あらためて『市民の図書館』で指摘されていることについて、自らの責務を自覚する必要があるのではないかと私は考えます。

※高い関心を寄せているせいか、図書館に関する当ブログの記事は長くなりがちです。
「私がどのようなレファレンスサービスをお願いしたのか」「職員の配置についてどう考えたらよいのか」などについては、次回以降の記事でお伝えします。