上尾市図書館による「学校統廃合」関連のレファレンスサービス(1)

上尾市図書館に依頼していた「学校統廃合」に関する「レファレンスサービス(=資料を探す手助け)」ですが、先日その結果を受け取りました。
結果はA4版6枚にわたっており、当方の「時間は多少かかってもよいので、できるだけ詳細に」という依頼に応えた図書館利用者サービスであると言えます。

上尾市図書館からの回答は、<図書><雑誌><オンラインデータベース><インターネット情報><埼玉県内の学校統廃合に関する資料>に大別して示されました。
回答の中身が豊富なことから、今記事では<図書><雑誌><オンラインデータベース>までお伝えします。
さらに、上尾市図書館における「学校統廃合」に関する蔵書が、上尾市の資料収集方針(=選書等の基本線)と照らし合わせてどうなのか、についても言及します。

なお、<インターネット情報>と<埼玉県内の学校統廃合に関する資料>については、次記事でお伝えします。

No.221

🔶今回受けたレファレンスサービスとは
今回私が上尾市図書館にお願いしたのは、現在「全市的問題」になっている「学校統廃合」関連で、私が入手したり、調べた文献(記事No.210参照)以外の資料があれば教えてほしい、というものです。

以下が、今回示された主な文献や検索方法ですが、同時に依頼した外国における学校統廃合の関連資料については除いてあります。

🔶<図書>について
(以下、表記・文言は上尾市図書館によります)
埼玉県立図書館ウェブサイト》の詳細検索を以下の条件で検索すると、該当する図書の一覧が表示される。

(1)〈キーワード:学校統廃合 & 出版年 2011~〉
若林敬子『学校統廃合の社会学的研究 増補版』お茶の水書房,2012
中村文夫『子どもの貧困と公教育』明石書店,2016年
(2)〈キーワード:学校 & 再編 & 出版年 2011~〉
教育科学研究会編『大阪「教育改革」が問う教育と民主主義』かもがわ出版,2012
佐藤学他編『教育変革への展望6 学校のポリティクス』岩波書店,2016

🔶<雑誌>について

(1)《国立国会図書館オンライン》の詳細検索で「雑誌記事」を選択し、〈件名:学校統廃合 & 出版年:2011~〉で検索すると、該当の記事一覧が表示される。さらに掲載されている雑誌タイトルを《埼玉県立図書館ウェブサイト》の詳細検索で検索する。
山本由美『学校統廃合の今日的状況』=『季刊人間と教育 2016年冬号』旬報社,2016
平岡和久「安倍政権の「地方創生」と学校統廃合政策」=『季刊人間と教育 2016年冬号』旬報社,2016
尾原浩子「学校を守り、地域の未来をひらく:”地方創生”に逆行する学校統廃合」=『世界 2015年5月』岩波書店,2015
(2)《CiNii Articles》(国立情報学研究所)で「論文検索」を選択し、以下の条件で検索すると、該当の記事一覧が表示される。オープンアクセス論文はそのまま閲覧できる。オープンアクセスでないものは《埼玉県立図書館ウェブサイト》の詳細検索で検索する。
〈フリーワード:学校統廃合 & 出版年 2011~2021〉501件ヒット
J-Stage》(科学技術振興機構)
金子泰之「中学校の学校統廃合における生徒指導:統廃合前、統廃合後6ヶ月、統廃合後1年の3つの時期ごとの分析」(『第53回総会発表論文集』日本教育心理学会 2011)
〈フリーワード:学校 & 再編 & 出版年 2011~2021〉512件ヒット
J-Stage》(科学技術振興機構)
三橋浩志「大都市郊外における学校再編と都市政策の関係ー多摩ニュータウンを事例としてー」(『日本地域政策研究 23』日本地域政策学会 2019)
(3)《J-GLOBAL》(科学技術振興機構)の「文献検索」を以下の条件で検索すると、該当の記事一覧が表示される。
〈学校 & 統廃合 & 出版年 2011~〉173件ヒット
人見吉晴「小・中学校統廃合とまちづくり 京都市元町小学校の学校統廃合問題」(『建築とまちづくり 461号』新建築家技術者集団,2017)

 🔶<オンラインデータベース>について
基本的に有料のデータベースとなりますので、利用方法をご確認ください

以下それぞれのデータベースを〈学校 & 統廃合〉で検索する。
(1)《毎索》※有料データベース(毎日新聞社)検索結果 1317件
毎索の使い方=国立国会図書館リサーチナビに飛びます
「学校選択制のいま:23区の現場から/下 教師ら疑問の声根強く 大規模校に人気集中、環境に格差」『毎日新聞 2021.12.20 地方版/東京面』
「京丹後市立宇川小統合問題:住民7割「宇川小存続を」京丹後市長に署名提出」『毎日新聞 2021.11.13 地方版/京都面』
「余録:小学校や中学校が統廃合で減り続けている…」『毎日新聞 2018.11.4 東京朝刊 政治面』
(2)《ヨミダス歴史館※有料データベース(読売新聞社)検索結果 1763件
「小中学校「規模に課題」8割超 区市町村教委 統廃合へ意見集約難航も」『読売新聞 2014.5.28 東京朝刊 4面』
「[教育ルネサンス]どうする統廃合(1)学習環境考え 迫られる決断(連載)」『読売新聞 2016.5.5 東京朝刊 10面』※第6回まで連載あり。
「小中学校 統廃合促進へ 文科省 58年ぶり指針見直し」『読売新聞 2014.5.28 東京朝刊 4面』
(3)《Web OYA-bunko※教育機関・図書館のみ利用可(大宅壮一文庫)検索結果 10件
大宅壮一文庫web版を個人で利用する場合は賛助会員になることが必要です。
根本祐二「人口減少 小中学校統廃合で3分の1に」(毎日新聞社『週間エコノミスト 2018.5.8』)
山下祐介他「どう考える? 小学校の統廃合」(家の光協会『地上 2015年8月号』)
(4)《MAGAZINEPLUS※個人利用は有料です。検索結果:347件
山本由美「公共施設再編が推し進める学校統廃合」(大月書店『クレスコ 2021年11月号』)

秦 瑞希他「地方都市における公立小中学校の統廃合の実態に関する研究」(『日本建築学会東海支部研究報告集 57』2019年2月
今西清「特集 学校統廃合(2)公共施設等総合管理計画で急増する学校統廃合 自治体の学校統廃合計画を超えて:兵庫県加西市・丹波市での学校を守る住民運動と地域づくり」(自治体研究所『住民と自治 2018年9月号』)
(5)《BOOKPLUS※個人ライセンス取得は有料となります。検索結果10件
小島卓弥編『ここまでできる実践公共ファシリティマネジメントー公共施設白書の活用から、施設の当配当、庁舎新設、複合施設化、廃校・遊休施設の活用まで』学陽書房,2014

ここまでのレファレンスサービスの中身を見る限り、以前の「記事No.181 市民の「知る権利」への対応に歴然の差」の時とは、レファレンスの丁寧さという点で雲泥の差があります。その点で上尾市図書館の努力に敬意を表します。
ですが、「選書」に関しては次のような問題があります。

🔶「資料収集方針」どおりの選書となっているか
上尾市図書館では、「学校統廃合」や再編に関して問題を投げかけている(批判的とも言える)文献の蔵書(月刊『住民と自治』や山本由美氏の著作)がほとんどありません。
その一方で、学校統廃合や再編推進の立場からの著作については蔵書があるという、言わばアンバランスの状態が見られます。
これは、はたして、次に掲げる「上尾市図書館資料収集方針」との整合性が取れているでしょうか。

上尾市図書館資料収集方針(一部引用) ※強調のため色替えあり
1.目 的
上尾市図書館は市民の「知る自由」を保障する機関の一つとして,図書館法に基づき,市民の知的関心や興味,好奇心を満たす資料を幅広く収集する。 資料の収集にあたり,基本的な方針を示し,本館と分館8館からなる上尾市図書館ネットワークとしてより充実した蔵書を構築することを目的として必要な事項を定めるものとする。
2.基本方針
上尾市図書館は,図書館が本と人とが出会う魅力的な空間,知識の宝庫,地域における情報の拠点となるよう,社会の動向や潜在的要求,将来予測されるものも含めた市民の要望を反映させた資料を収集する。資料選択に際し,「図書館の自由に関する宣言」の趣旨を尊重し,以下の点に留意する。
(1)多様な,対立する意見のある問題については,それぞれの観点に立つ資料を幅広く収集
(2)著者の思想的,宗教的,党派的立場にとらわれて,その著作を排除することはしない。
(3)図書館職員の個人的な関心や好みによって選択をしない。

(4)個人・組織・団体からの圧力や干渉によって収集の自由を放棄したり,紛糾をおそれて自己規制したりはしない。
(5)寄贈資料の受入にあたっても同様とする。

この「上尾市図書館資料収集方針」に謳われているとおり、「多様な,対立する意見のある問題については,それぞれの観点に立つ資料を幅広く収集」していただくよう、上尾市図書館に望むものです。