「家庭教育支援員は退職校長用に市教委が置いた職」説を検証(前編)
今記事と次回の記事で、「家庭教育支援員は退職校長用に上尾市教委が置いた職である」という仮説の検証をおこないます。
検証のアプローチとしては
①家庭教育支援員設置の経緯(上尾市が設置した家庭教育支援員とは)
②市P連との関係(家庭教育支援員とは? 市P連とは?)
以上を「前編=今記事」で検証します。
③募集の経緯(家庭教育支援員の募集方法は?)
④本来の家庭教育支援員とは何か(文科省の方針との整合性)
⑤ 結論
以上を「後編=次回記事」で検証します。
これらの視点から、情報公開請求に基づいた事実関係の資料等を確認し、この仮説が正しいか検証していきます。
No.269
①「家庭教育支援員」設置の経緯 ー上尾市が設置した家庭教育支援員とは
上尾市で任用される「家庭教育支援員」とは「会計年度任用職員」です。
「会計年度任用職員」とは、一会計年度(4月~3月)において上尾市に採用(任用)される非常勤の職員のことであり、もともとは国が主導した制度です。
上尾市では、[上尾市会計年度任用職員の種類及び職名に関する規則]により、次の職が設置されています。
情報公開請求で入手した資料に基づき、時系列で整理してみましょう。
2020.04 上尾市で会計年度任用職員制度開始
2020.04 退職校長M氏を会計年度任用職員(社会教育指導員)として任用
2021.02 教育委員会定例会にて「家庭教育支援員」の職の設置を決定
2021.04 M氏を会計年度任用職員(家庭教育支援員)として任用(職名変更)
2022.04 退職校長O氏を会計年度任用職員(家庭教育支援員)として任用
会計年度任用職員制度が開始されて以降、「社会教育指導員」に加えて「家庭教育支援員」の職を設置していることがわかります。なお、M氏・O氏ともに退職校長です。
次に、どのような理由で「家庭教育支援員」設置を決めたのかについて、2021年2月の教育委員会定例会会議録(P.6)で確認します。
以上のとおり、池田教育総務課長は「PTAに関する事務を行っている方」がいること、また、「PTAの関係に携わっている方」については、職名を「社会教育指導員」から「家庭教育支援員」に変更すると述べています。
ここで注目すべきは、上尾市の「家庭教育指導員」は、文科省が推進する「家庭教育支援」のために設置する職ではないということです(文科省との関係は後編で述べます)。
②「市P連との関係」ー家庭教育支援員とは? 市P連とは?
次に、教育総務課長の発言「PTAに関する事務を行う」の実態を見ていきます。
現在、市P連事務局は上尾市庁舎第3別館(通りを挟んで本庁舎の南側のビル)の1階にあります(『あげおくらしのガイド』には「PTA連合会」と表示)。
PTA連合会は「上尾市PTA連合会」のことです(以下、「市P連」と略記)。
「市P連」は、上尾市内各小中学校のPTA(これを「単P」といいます)の集合体の組織であり、[上尾市PTA連合会]HP(クリックで飛びます)があります。
このHPの「よくある質問」には、次のように説明されています。
Q.(市P連の)事務局はどこにありますか? |
A.市P事務局は上尾市役所第3庁舎1階にあります。(当ブログ注) 住所:〒362-8501 埼玉県上尾市本町3丁目1番地1号 上尾市教育委員会 生涯学習課 内 (当ブログ注)第3別館の住所は、正確に言うと上尾市本町1-1-2です。 |
Q.事務局開局時間はいつですか? |
A.基本的に月・水・金の 9:30~16:30 です。 状況により変更されることもありますのでHPのお知らせを確認してください。 |
このQ&Aから、市P連事務局は第3別館にあり、生涯学習課の内部に置かれていることが分かります(生涯学習課は市役所7階と第3別館に分かれている?)。また、市P連事務局職員の勤務は週3日であることも明示されています。
〖池田課長発言と市P連規約との整合性は?〗
上述のとおり、池田教育総務課長は「社会教育指導員の内、PTAに関する事務を行っている方の職名を家庭教育支援員に変更する」と教育委員会定例会で発言しています。
ここで、市P連の規約を確認します(市P連の規約は11条までありますが、第8条までを掲載しました。この規約は、市P連が上尾市から補助金を給付されている関係から、直近のものを情報公開請求で入手したものです)。
このとおり、市P連規約の第7条の8では、「事務局員は上尾市教育委員会生涯学習課内の社会教育指導員がこれにあたり」と明記されています。
しかしながら、上述の池田課長の発言によれば、この社会教育指導員は家庭教育支援員に変更されているはずです。したがって、市P連の規約も変更されなければならず、明らかに整合性が無いことになります。
上尾市教委事務局および市P連はこのことをどう説明するのでしょうか。
〖市P連の予算・決算額と市からの補助金への疑念〗
当ブログ記事No.203(なぜ上尾は「PTAの入退会は自由」の文書が非公開なのですか?)でもお伝えしたとおり、各学校のPTAはあくまでも任意団体です。
よって、保護者や教職員には、PTAへの入退会の自由が保障されなければなりません。
では、任意団体の集合体である市P連という組織の収入はどうなっているのでしょうか。
以下は、令和4年度 上尾市PTA連合会の会費一覧表です。
IMG_20230414_0004
これによれば、各学校から市P連への「上納金」は会員数×50円+2000円であり、市内合計は 758,480円となっています。また、市P連の上部に北部P連と県P連があり、県P連の「取り分」は市P連よりも多く、807,850円 であることがわかります。
この上には関東や全国PTAがあるのでしょうが、こうした「上納制度」を、実際にお金を納めている各学校の保護者はご存じなのでしょうか。
市P連に対し、上尾市は、PTAに関する事務をおこなう「家庭教育支援員」という職員を提供するばかりか、補助金を交付しています。
昨年度(令和4年度)の補助金等交付申請書の写しは以下のとおりです。
IMG_20230414_0003
「担当課処理欄」に、小さな字で「審査の結果適正と認める」とありますが、交付申請額の 365,000円という額は、本当に適正なのでしょうか?
情報公開請求時点では令和4年度の「事業報告」は提出されていないため、「令和4年度 上尾市PTA連合会予算書」を確認してみましょう。
IMG_20230414_0005
これを見れば明らかですが、「市からの補助金365,000円」と「繰越金351,810円」の額がほぼ一緒です。つまり、会費を多額に集め、繰越もあることから、補助金は不要ということになると考えられます。
🔶今記事のまとめ
今記事では、「家庭教育支援員は退職校長用に上尾市教委が置いた職である」という仮説の検証の〖前編〗ということで、次の点についてお伝えしました。
*市教委が2020年4月から配置した家庭教育支援員は、会計年度任用職員であること。
*家庭教育支援員は、現在までで2名の退職校長が任用されていること。
*家庭教育支援員は、PTAの事務に携わる方として配置されていること。
*一方、市P連の規約は「事務局員は社会教育指導員」とあり、整合性が無いこと。
*上尾市の家庭教育指導員は、文科省が推進する家庭教育支援のための職ではないこと。
*市P連は多額の会費を集めており、市の補助金交付は不要であると考えられること。
次記事〖後編〗では、このように配置された家庭教育支援員は、実は退職校長用として上尾市教委が置いた職ではないか?という仮説を、さらに別の角度から検証していきます。