議会で1票差否決の請願本文がHPに不掲載という「不可解な事態」

上尾市議会において、議案や請願に対して賛否が分かれることはあり得ます。
とりわけ私は、委員会では可決されたにもかかわらず、 本会議では否決となった市民からの請願の存在に関心を寄せています。
直近では、3月議会でそういった事態が起こりました。
しかも、この請願については、「請願の表題」こそ公表されているものの、本文は明らかにされていないのです。
今記事では、この「不可解な事態」についてお伝えします。

No.224

🔶どんな請願だったのか
この請願(第14号)の本文について、議会事務局に確認すると、「情報公開請求しなければ見せられない」ということでした。議会事務局は「もっと市民に議会への関心を持ってもらいたいと考えているはず」と私は考えていたのですが、どうやらそうでもなさそうです。
情報公開請求で入手した請願の中身は次のとおりです。

「日米地位協定の見直しを求める意見書」を国に提出することを求める請願
上尾市議会議長 渡辺綱一 様    日付/請願者氏名/(住所・電話は非公開)
【要旨】 新型コロナウィルス感染から国民の命を守り、主権国家として対策を強めるために、日本政府が米政府との間で日米地位協定見直しのための交渉を行うよう求める意見書を国に提出することを請願します。
【理由】 オミクロン株による新型コロナウィルス感染拡大は、多くの都道府県が過去最高の感染者数を更新するなど深刻な状況です。特に沖縄県や山口県岩国市など在日米軍基地を由来とするコロナ感染の急拡大は、感染法や免疫法など国内法が在日米軍には適用されないという地位協定の弊害を誰の眼にも明らかにしました。
 しかも、ドイツやイギリスなどの米軍基地では出国時や入国時にPCR検査を義務付けており、日本だけが例外的に免除されていること、基地内ではマスクの着用もされていなかったなどの実態が次々と明らかになりました。
 全国知事会は2020年11月5日に、「米軍基地負担の提言」を発表し、日米地位協定の抜本的見直し、米軍の新型コロナ情報提供等を求めました。これは米軍機の低空飛行に関して航空法や環境法令など国内法の適用や、事件・事故等の基地内への立ち入りの明記などを求めた2018年7月に次いで2番目の提言です。昨年までに全国でも9県議会221市町村議会(埼玉県内は川越市議会など7議会)で地位協定の見直しを求める意見書等を採択するなど国民の世論となっています。
 いま、新型コロナウィルス感染から国民の命を守り、主権国家として対策を強めるために、米政府との間で日米地位協定見直しのための交渉を行うことが、日本政府に強く求められます。
以上、上記意見書を国に提出することを地方自治法第124条規定により請願いたします。
                                     紹介(署名)議員

 この請願の【要旨】と【理由】については、特に付け加えることは無いでしょう。
重要なのは、日米地位協定で言う「地位」とは、「日本に駐留している米軍の地位」のことであり、様々な事件や事象からも、「米軍はあまりにフリーハンドではないのか」という思いは、現在も続いているという事実です。

🔶議員の誰が賛成し、誰が反対したのか。
この請願は、3月4日の市議会総務常任委員会で審査がされ、会議録が公開されています。また、総務常任委員会の様子は録画で視聴も可能です。
委員会でこの請願に賛成・反対した議員は次のとおりです。

総務常任委員会 8名(委員長は田中一崇議員)
請願に賛成した議員   池田達生  津田賢伯  荒川昌佑  浦和三郎
請願に反対した議員   小池佑弥  小川明仁  長沢 純   

会議録を読んでも、請願に反対した小池・小川両議員の発言の趣旨はよくわかりません。「地位協定のどの部分を見直すか不明」(小池議員)、あるいは「基地がある自治体等の理解を得られるよう、まずは求めていく」(小川議員)という主張は、私にはとても理解しがたいものです。
また、
本会議での採決結果についても市議会のHPで公開されています。これについても賛成・反対の議員を表にしてみます。

3月議会(本会議)
請願に賛成した議員
(14名)
樋口敦・荒川昌佑・矢口豊人・海老原直矢・鈴木茂・浦和三郎・井上茂・轟信一・新藤孝子・戸口佐一・池田達生・平田通子・津田賢伯・佐藤恵理子
請願に反対した議員
(14名)
小池佑弥・田島純・原田嘉明・尾花瑛仁・新道龍一・田中一崇・井上智則・戸野部直乃・前島るり・長沢純・道下文男・小川明仁・星野良行・大室尚
欠席した議員 秋山かほる

賛否同数のため、渡辺剛一議長が反対を表明し、この請願は否決となってしまいました。

🔶なぜ上尾市議会は請願本文をHPに掲載しないのか
私は、市民や市民団体から提出された請願や陳情は、内容も含めて市民に公開するべきだと思います。とりわけ、今記事で取り上げた請願のように、賛否が拮抗した場合は掲載すべきではないでしょうか。その理由を知りたいので、議会宛てに、次のような情報公開請求をしました。

*現在,上尾市議会に対して提出された請願・陳情については,その文言が公表されていません。市民による市議会への関心を高めるためにも,提出された請願や陳情については,委員会における採択の結果に関わらず市議会HP等で公表すべきであると請求人は考えます。そこで,上尾市議会に対して提出された請願・陳情について,その文言が公表されていない理由が判別できる文書・資料等。
*市議会に提出された請願や陳情についてはその文言を公表すべきであるとの考えも当然あると思われます。そのことを含め,議会内(事務局を含む)で現在公表の是非について検討されていることが判別できる文書・資料等。ただし,上記で開示される資料と同一の場合はその旨ご教示ください。

また、メディアでも報道され、市民ブログでも発信されていますが、「議会改革度調査」で上尾市議会がどのような回答をしたのかについても情報公開請求しました。

*早稲田大学マニフェスト研究所議会改革調査部会がおこなった「議会改革度調査」については,上尾市議会も回答しています。また,当該調査で上尾市議会が全国のランキングTOP300に入っているのは、分野別(情報共有・住民参画・議会機能強化)の「情報共有」で171位が唯一ということです。そこで,同調査(http://www.maniken.jp/gikai/2020setsumon.pdf )に対して上尾市議会として回答した内容が判別できる文書・資料等。
*請求人は,上記については市民的関心も高いことから,当該調査への回答をHP等で公表すべきであると考えますが,回答の公表について検討している(予定を含む)ことが判別できる文書・資料等。

今記事では、議会で1票差否決の請願本文が、議会のHPに掲載されないという、上尾市議会の「不可解な事態」について取り上げました。

上で述べた情報公開請求の結果(行政用語で、「処分」と言います)については、来週早々に分かると思いますので、結果が出ましたら、当ブログでお伝えします。