これは ”美談” ではなく、教員の「献身的サービス残業」なのでは?
上尾市教育委員会はR6年度末までに「時間外在校等時間=月45時間以内を100%にする」を目標に掲げています。
R6年度末までにということは、残り7か月ですが、残念ながらこの目標は達成できそうにありません。その理由は幾つかありますが、当ブログでは①教員の時間外勤務についての校長の意識 ②中学校の平日の部活動顧問の勤務 以上に着目しています。
今記事では、「教員の時間外勤務についての校長の意識」について取り上げます。
No.334
🔸「美談仕立て」の『学校だより』
次に示すのは、公表されている市内のある小学校の『学校だより』の校長の投稿文から、今記事の該当部分を転記したものです(学校名は消してあります)。
この『学校だより』を目にしたとき、私(当ブログ館主)は、いかにも美談風に書いてあるこの文章、とりわけ、この学校の校長が「6時前に出勤したらすでに2名の教員が作業を始めていたこと」を「(スポーツday=運動会の)大成功を確信する出来事」として捉えていることに強い違和感を覚えました。
そこで、『学校だより』の記述についての事実関係を知るために情報公開請求しました。
以下、開示された情報に基づき、この校長の姿勢や意識などについての問題点を指摘していきます。
🔸職員は何時に出勤するよう伝えられていたのか?
この疑問は、開示された運動会前の『学校日誌』が参考になります。
(前日の『学校日誌』該当部分)
このとおり、職員は運動会当日、3パターンの出勤時刻が校長から指示されていました。
① 6:30出勤/15:00退勤 ② 7:00出勤/15:30退勤 ③ 7:30出勤/16:00退勤
つまり、「午前6:00前に出勤すること」は、校長の「職務命令」を明らかに逸脱していることになります。
🔸「出退勤時刻等記録表」を確認する
「午前6時前に出勤した職員」の勤務は、どのように記録されているのでしょうか?
開示されたのは「出退勤時刻等記録表」です。ここでは、当該職員の内1名の勤務の状況を見てみましょう。
この職員は、運動会当日は、5:45に出勤し、15:04に退勤しています。
本来は6:30に出勤し、15:00に退勤するというパターンですから、明らかに「時間外勤務」をしていることがわかります。また、この職員は朝8時前に出勤し、遅くまで時間外勤務していることが常態化していることも見て取れます(時間外勤務の合計時間数は57時間50分となり、市教委の目標値45時間を超えています)。
🔸公務(通勤)災害への配慮は?
以上の事実関係の他、私が気になっているのは、校長から指示されている出勤時刻を逸脱しての「出勤途上での公務(通勤)災害」についてです。そこで、次の内容についても情報公開請求しました。
「公務(通勤)災害」に関して、校長として所属職員(県費教職員)に伝達していることが判別できる文書・資料等(上記6月1日に限定するものではなく、「公務(通勤)」災害にかかる伝達事項として)。 |
結果は、「上記のことが判別できる文書・資料等は保有されていないので公開できない」でした。つまり、結果的には6時前に出勤した職員が、学校に来る間に交通事故等のトラブルに遭遇するなどの事故が無かったから良いものの、この校長は「職員の公務(通勤)災害については日常的に何も考えていない」と言えます。
「早いね」「まあ、家が近いので…」「あまり眠れなかったので…」との会話は、実は決して「美談」で済まされるような話ではないのです。
🔸『学校経営方針』との整合性は?
『学校だより』に書かれている「美談」は、この学校の『学校経営方針』と矛盾しないのでしょうか?
HPで公表されているこの学校の『学校経営方針』には、次の記述があります。
私は、このことに関しても、次の内容で情報公開請求をしました。
この『学校経営方針』において校長が示していること(上記 オ の教職員の時間外在校時間の縮減と学校における働き方改革の推進)と、「6時前から作業を始めた教員」の勤務実態とが矛盾するものではないことが判別できる文書・資料。 |
結果は「文書不存在による非公開」であり、通知文の「備考欄」にも何らの説明もありませんでした。
つまり、この学校の校長は、『学校経営方針』においては「教職員の時間外在校時間の縮減と学校における働き方改革の推進」などと言いながら、いざ実際の場になると、冒頭の『学校だより』に美談風に書いたこと(職員が校長の指示によらず6時前から出勤していることをもって「運動会は大成功」と確信した、としていること)からも分かるように、教員の時間外勤務について本気で縮減する気があるとは思えません。
教員の「献身的サービス残業」を美談風に語るのではなく、本気になって取り組んでほしいものです。公務災害の問題も含め、まずは校長の時間外勤務に対する意識を変えていかなければ、「時間外勤務の縮減」は「絵に描いた餅」になってしまうでしょう。
🔸中学校「平日の部活動顧問の勤務」の問題も深刻です
上尾市教育委員会は「R6年度末までに時間外在校等時間=月45時間以内を100%にする」を目標に掲げていますが、本当に実現できるのでしょうか?
今記事の冒頭で述べた、「②中学校の平日の部活動顧問の勤務の問題」も深刻です。
次回以降の記事では、情報公開請求を通じて入手した資料等に基づいて、この問題についてもお伝えしていく予定です。