「水泳授業民間委託」って何なの ?! 「前のめり」の事務局 & 賛成する教育委員も
12月15日に開催された定例教育委員会を傍聴しました。
報告事項の件数は3件でしたが、その中に、「水泳授業民間委託の他市調査結果について」という資料がありました。
今記事では、この問題についてお伝えします。
No.197
🔷配布資料に堂々と「水泳授業民間委託」の文言が
当ブログの以前の記事(No.194)で、上尾市教育委員会11月定例会の席上、「先進都市の民間委託による水泳授業の現状及び視察」が今後のスケジュールとして示されたことをお伝えしました。
12月の教育委員会定例会では、さらに踏み込んで、教育総務課長から以下の資料に関して報告がされました(手書き部分はブログ筆者によるメモです)。※1・2頁とも最下部にズーム機能あり。
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このように、前回は口頭報告でしたが、今回は教育委員への配布資料に堂々と「水泳授業民間委託」の文言が明示されています。
では、果たして「水泳授業の民間委託化」などということが可能なのでしょうか。文科省のHP内で「水泳授業民間委託」を検索しても、次の画面のとおり(少し見づらいですが)検索結果は0件となります。
これは当然のことで、そもそも、授業を民間委託するなどということは、公立小中学校であり得ません。学校教育法で定められている「児童(生徒)の教育をつかさどる」ことは、民間の水泳指導インストラクターには出来ないのです。
また、埼玉県教委のHPで同様に検索すると、以前の記事で紹介した北本市のパワーポイント資料が示されるだけです。
🔷教育総務課長発言の問題点
教育委員会傍聴の際に配布された資料を見るだけでは、池田教育総務課長がどんな発言をしているかは分かりづらいのではないでしょうか。
池田課長の発言で「これはおかしい」と思われる点を見てみましょう。
*年間10時間とされる水泳授業を民間施設でおこなう場合、池田課長は「年間3~6回」と説明していることから、1回に2~3時間を充てるということになります。
*また、「移動時間はどのくらいかかるのか」という小池委員の質問に対して、「大石南小などは片道30分かかる」と説明しています。
これについては、以前の記事で紹介した、体育指導が専門の筑波大学附属小学校体育研究部の平川譲教諭が指摘している問題点と重なります。
【移動時間が授業に食い込む】※筑波大附属小 平川譲教諭 による指摘 |
体育専門の立場として心配するのは、移動時間が本来の授業時間に食い込むこと。民間のプールで水泳をして学校に戻ると、半日かかるという話も聞く。 また、移動時間がもったいないとなると、どうしても1回に2時間とか3時間とかたくさんやろうとする。でも、運動は40分とか45分の授業を何回もやる方が身に付き、技能が高まっていく。小分けにした方がいい。 |
さらに、次のような問題点もあります。
*民間施設によっては、小学校(または中学校)しか受け入れることができない施設もある。
*コストの比較。現行のプールが耐用年数60年とすると、民間委託のほうが少し安い。ただし、民間施設は永続的に使用できる保証は無い。
🔷なぜ教育総務課長が説明するのか
根本的に疑問なのは、「なぜ水泳授業を民間委託するなどということを、教育総務課長が説明するのか」ということです。
このことについては、先日、「学校の隠れ教育費」問題の情報公開請求に際して指導課の職員に面談した際、指導課はどうかかわっているのかについて質問しました。
それに対して、対応した指導課の指導主事は、「そのこと(プール指導の民間委託のこと)については、教育総務課が担当しているので…」と答えています。
水泳指導についての話ならば、現在の上尾市教委事務局の体制であれば、指導課がかかわるのが当然であると私は考えます。
さすがに教育総務課だけでは対応できないことから、12月に視察をおこなう際には、指導課職員も同行する(した)ようですが、その視察については、どんな内容であったのか、引き続き情報公開請求をしていく必要があると思います。
🔷民間委託化に賛成する教育委員の存在
教育委員会定例会を傍聴していて、気になるのは、大塚教育委員の発言です。今回の問題については、同委員は「費用の面でメリットがあるので、民間委託をすすめるべき」と 発言しているのです(この発言を含めた会議録の公開は1月の定例会終了後=1月末頃となります)。
大塚委員については、教育委員会定例会の席上、事務局が提案する資料の文言的な部分の訂正を求めることが多いのが特徴です(例:配布資料の何ページと何ページの数字が違うなどという指摘)。しかしながら、そうした指摘は前もって事務局に連絡すればよい話であるにもかかわらず、わざわざ教育委員会の席上で発言するのが目立ちます(いかにも「自分は隅から隅まで資料を読んでいます」的な発言だと思います)。
「学校施設更新計画=学校統廃合計画」の関連でも、大塚委員は次のような発言をしています(公開された11月教育委員会会議録より)。
※色替えはブログ筆者によります。
(大塚崇行 委員) …学校施設更新計画について、 今後の方針の中で他自治体への視察が予定されて おり、 今後そのようなスケジュールが組まれていくと思いますが、 プール の整備方針については直近に迫っています 。 先ほど12月の視察の話がありましたが、すでに11月末であり、 この方針を決めていくに当たり、視察を行う前にその視察先がどのような運営を行っているのかなど様々な情報を事前にいただきたいという要望があります。 情報を確認してから 視察を行わなければ、分からない部分があります ので、 今後12月から1月に協議事項となっていきますが、書類だけではわからないところもありますので、視察や説明会なども開催していただきながら、そのような細かい部分について理解を深めたうえでさらに協議などを行っていきたいと考えていますので、そのようにお願いします。 また、上尾の教育の124ページに、令和8年度まで の学校別在籍児童生徒数・学級数推計があります 。 これは学年進行に よる 推計なので、 実際今居住している方が5年後まで学年進行していく推計で、転出・転入があったとしても、この数字に近い人数等になっていくであろうと理解しました。5年後には、 小学生で 約93% 、 中学生で約90%になり、 全体で 約1割弱の人数が減っていきます。学校別に見ても、 上尾小、中央小は増加傾向にありますが、 2割以上の人数が 減る学校も7校あります。 今後地域格差 がますます進んで、地域ごとに見ていけば激減する学校が出てきますので、この問題に時間をかけられないのではないかと思います。この計画は市議会の理解や 市民 の理解をいただく必要がありますが、この計画をしっかりと進めていっていただきたいと思います。 |
最後の発言「この計画をしっかりと進めていっていただきたい」は、文脈から、「統廃合計画(再編計画)は、規模の小さい学校は統廃合していく」という意味であると考えられます。
プール指導の民間委託について「費用の面でメリットがあるので、民間委託をすすめるべき」と 発言していることと合わせて、学校の統廃合計画についてもすすめていくという考えを披瀝する教育委員の存在については、今後も注意深く見ていく必要があるでしょう。
また、「視察を行う前にその視察先がどのような運営を行っているのかなど様々な情報を事前にいただきたい」というのであれば、大塚委員自身が、本当に「水泳授業の民間委託化」が出来るものなのかを判断し、何よりも教育委員同士での議論をするべきであると私は考えます。
水泳の授業をスイミングスクールに丸投げすることに、教育委員の大塚さんは積極的ですね。
コメント、ありがとうございます。
大塚委員は、民間委託(丸投げ)には積極的ですね。
市議会の「調査特別委員会」で、自らの発言を市議から「中一ギャップという概念は文科省でも使わない」と指摘されると、ムキになって反論していたのが印象的です。
何かというと、「自分は(企業の)経営者ですから」と前置きして、「コスト・利益重視」の発言が多いのが特徴と言えます。
上尾市のHPの最下段に大塚委員が社長になっている会社のバナー広告があります。
それをたどっていくと、「(多額の寄附をしたので)畠山市長から感謝状をいただいた」ということが出ています。
https://www.otsukastone.co.jp/company/appreciation.html