「市民との協働の図書館運営」をめざす牛久市立中央図書館を訪ねて

年の暮れも押し迫った12月20日、茨城県牛久市立中央図書館に足を運びました。

なぜ、牛久市立中央図書館なのか。

私は公立とりわけ市立図書館の運営面について関心を持っています。
上尾市図書館と同様に「一部の図書館奉仕(利用者サービスのこと)」を外部に委託している市立図書館は全国的に見ても多数あります。
そうした図書館の中で、一部奉仕をNPO(市民団体)に委ねている方式の牛久市立図書館を訪れてみたいと考えていました。

今記事では、上尾市と牛久市の図書館の違いを見ながら、利用者(市民)にとって望ましい市立図書館のあり方を考えていきます。

No.198

🔷月曜日でも開館している牛久市立中央図書館
私が訪れたのは月曜日でしたが、牛久市立中央図書館は開館していました(ちなみに、上尾市図書館は休館日です)。
車でのアクセスは、圏央道の桶川加納IC~つくば牛久IC経由で牛久市立中央図書館まで約1時間15分。白岡菖蒲から先の圏央道は初めて通りましたが、対面通行になるのでやや違和感があります。

 

 

 

牛久市立中央図書館は市役所のすぐ近くにあり、2階建ての落ち着いた雰囲気の建物です(外観写真:筆者撮影)。

 

 


両市立図書館の「差」を順番に見ていきましょう。

まずは、今年の年末から年明けにかけての「休館日」の違いです

年末年始時期の休館日の比較 12月25日~1月11日まで
牛久市立中央図書館 12月27日・31日(2日)
年末年始休館日 計6日 1月1日~3日・11日(4日)
上尾市図書館本館 12月27~31日(5日)
年末年始休館日 計9日 1月1日~4日(4日)

出典:両図書館のHPより 牛久市立図書館 & 上尾市立図書館

どこに「差」があるかは一目瞭然ですね。
牛久市立中央図書館は、年末の12月28日~30日に開館
上尾市図書館本館は年末年始9日連続休館となっています。
年末年始の休みで、ゆっくり読書や調べ物をしようと思っても、上尾市図書館はずっと休館となっているのです。

🔷図書館の運営方式
公立図書館の運営方式については、当ブログの前々記事(No.196)でお伝えしたように、おおむね次の5つの方式があります。
◎「一部奉仕外部委託方式」とは、分かりやすいように私が個人的に付けた方式名です。「奉仕」とは図書館法に基づく用語であり、利用者へのサービスのことです。また、下の表に掲げた方式以外には、PFI方式(例:三重県立桑名市立図書館)もあります。

運営方式の種別 方式の特徴
直営方式 市の職員のみで運営。ただし臨時的任用者(会計年度職員を含む)も多数いる。
指定管理者方式  運営は指定管理者が担う(管理者は図書館関連企業が多い)。
一部奉仕外部委託方式
※上尾市・牛久市はこの方式です
カウンター業務等奉仕を外部(企業・公社・NPOなど)に委託
直営方式+指定管理者方式 本館直営、分館・分室が指定管理
直営方式+一部奉仕外部委託方式 本館直営、分館・分室の一部奉仕を外部(企業・公社・NPOなど)に委託

図書館の利用者から見れば、どのような運営方式なのかは見えにくいと思いますが、実際には以上のような方式で図書館は運営されています。
今記事で上尾市と牛久市を比較する理由は、両図書館とも、運営方式としてカウンター業務等の「一部の図書館奉仕(サービス)」を外部に委託しているという共通点があるからです。

🔷上尾市と牛久市の図書館サービスの「差」とは
上尾市・牛久市両図書館の大きな「差」は、①カウンター業務などの外部委託先の違い ②職名としての「司書」の配置の有無 

以上を挙げることができますが、牛久市立中央図書館を訪れた感想も含め、具体的に見ていきましょう。

🔷外部委託先の違い
何といっても、カウンター業務などの一部奉仕の外部委託先の違いが大きいと思われます。

上尾市は(株)ナカバヤシ と3年間の業務委託契約を結んでいます。2020年度の委託金額は、152,592,000円(上尾市図書館運営業務)。
民間企業ですから、ここから利益を出すことになります。
人件費が大きなウェイトを占めるのは当然ですが、ナカバヤシの図書館求人情報では、時給960円となっています。埼玉県の最低賃金の時給が956円ですから、最低賃金ギリギリであると言えます。

一方、牛久市立図書館は、NPO法人「リーブルの会」にカウンター業務などを委託していますので、見ていきましょう。

🔷「リーブルの会」への業務委託
(館内撮影禁止のため、以下の写真等は牛久市図書館HPによります)

牛久市図書館HPのメニューには「リーブルの会」が掲載されており、その中で、リーブルの会の理事長は次のよう述べています。

こんにちは!
私達リーブルの会は市民の手で図書館運営を支援するために平成15年(2003年)に設立されました。
それ以来、皆様から暖かい励ましのお言葉を沢山掛けていただきながらカウンター業務全般を任されるまでに成長し、新しい令和の時代を迎えることができました。
これからも皆様が更に利用し易い図書館となるよう市民目線で仕事に取り組んでいきたいと思います。
現在、新型コロナウイルスの影響でご不便をお掛けしておりますが、私達は常に皆様のそばで日々の業務に励んでおりますので何なりとお声掛けいただければ幸いです。
皆様の益々のご利用をお待ち申し上げます。
令和3年6月   NPO法人リーブルの会 理事長 西館 恒夫

この「リーブルの会」の活動内容は、次のように紹介されています。
◎図書館運営支援業務
◎本の修理・配送
◎市内教育施設支援業務(音楽隊・紙芝居隊)
◎自主事業(委員会活動)
※高齢者等支援委員会・イベント委員会・ナイトシアター委員会

このような活動に、理事長が述べている「市民目線で仕事に取り組む」
という姿勢が見て取れます。

🔷職名としての司書の役割
牛久市図書館には、職名としての司書が配置されています。
私が訪れたときも、「司書相談カウンター」には司書の方がおり、いつでも利用者はレファレンス(資料等検索や調査の相談)を受けることができます。

このことに関して、YouTubeで、牛久市図書館が分かりやすく紹介されています(ラーシクは、牛久市のマスコットキャラクターです)。
PC画面で見ていただくことを推奨いたします

全編で7分ほどの動画で、コンパクトにまとめられており、「司書」と「リーブルの会」の紹介もされています(4:20頃~)。

「司書」は、主に資料の管理や調べもののお手伝い
「リーブルの会」は、本の貸出・返却や、分館への本の配送など

残念ながら、上尾市ではこのように図書館の中を紹介するような動画は作成されていません。

🔷教育機関としての図書館を発展させるには
今記事では、ごく簡単ですが、上尾市と牛久市の図書館運営の「差」を取り上げています。

前々記事でもお伝えしたように、私は、図書館の一部奉仕(利用者サービス)を外部の業者等に委託することについては懐疑的です。
しかしながら、上尾市と牛久市の「差」は「市民との協働」という点で違いがあることがお分かりいただけたのではないかと思います。

上尾市図書館については、周知のとおり、上平新図書館問題もあり、市民の中でも「(施設や場所について)図書館をどうするのか」という議論がされてきたのではないかと思います。

このブログでも指摘しているように、現在、上尾市図書館は利用者サービスに関しても、様々な問題を抱えています。たとえば、

🔶本館のカウンター横にある「レファレンスサービス」らしきコーナーには、担当者は「いつも不在」です。
⇒ 牛久市の「司書相談カウンター」がうらやましいです。

🔶今記事でも指摘した、年末年始の9日連続休館。利用者のことは考えていないように見えます。
⇒ 年末の28日~30日開館の牛久市とは大違いですね。

🔶電子図書館の「選書」の問題。電子図書館はメディアドゥという会社に委託していますが、中身(資料の選び方)に?が付きます。

🔶図書館協議会の人選と開催日数の問題。公募で市民を入れる必要があります。日数も少なくとも年3~4回は開催すべきです。

🔶市民の「情報リテラシー」獲得のための連続講座の開催。
etc.

ほかにもありますが、すべて「利用者目線」や「市民との協働」が必要です。今後は、「教育機関としての図書館をどう発展させるのか」を考えていく必要があると私は考えます。
それはすなわち、「市民として図書館にどうかかわっていくのか」ということでもあると思います。